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虹ぶき

とある午後。チビコと庭の丸太のところで遊んでいたが、
「ねえ、チビちゃーん。やっぱりここはまだ暑いよー。ツリーに登って風を浴びよー。」
と言ったら、チビコも
「そうしよっかー。」
と言って丸太からぴょんと降りた。

……お?
スムーズに私の行きたい場所に行けますのん?
これだけの事が結構〜うれしい、夏休みである(笑)

『ツリー』というのは、風の通り道の日陰にある、お馴染の庭木の事だ。大きさも木肌のすべすべ具合も枝ぶりも、なんだかちょうど良くて、登りやすいし怪我が全然ないんだ。
チビコも一人で登れるように短いはしごをつけてあるし、小さなロープのブランコを吊って遊んだりもしてるけど、ゆくゆくはツリーハウスを夢見てカスタマイズ!とかじゃあ全然じゃない。私達はただ、この優しいツリーと一緒にいるのが好きなだけだ。

ツリーに登り、輝く葉っぱの内側の木陰の世界で、太い枝に座る。ひんやりしたそよ風が葉を揺らす。

「あ。ここで世界一冷たい水でも飲みたいもんだねえ」
とチビコが思い付いちゃって、しゅるりと木から降りて家に水筒を取りに行った。
「いってらっしゃ〜い」
と言いながらひとり、木陰の上から手を振る。眩しく暑そうな庭を走っていくチビを目で追って、そしてちょっと目を瞑る。

パンパンの氷水の水筒をシャンシャンと鳴らし、誇らしげに持ち帰って木に登って来たオチビが、
「ふう。やっぱり木の上はいいよ。」
としみじみ言ったから、頑張って人間に化けて街に行ってた猿の子みたいでおかしかった。

「ねえ、何して遊ぶ?」
とこざるが言うので
「じゃあ毒霧を教えてあげる。見よっ」
って言って、水筒の水を口に含みブーッ!!!って霧状に噴射する技を、我ながらなぜかだかわからないが披露した(笑)チビコはもちろんものすごく喜び、その上1回目から障子屋さんの職人技かのように上手だった。ていうか、私は実は上手くできた事がないから感動した。

「ねえ、ままちゃん。下、見て。ままちゃんのどくぎりはボタボタ垂れちゃってるから、蝶々が集まってきてるよ。」
「ワ!ほんとだ〜〜〜」
見ると、クロアゲハのメスとアオスジアゲハが私の失敗した毒霧の水で凉んでいた(笑)
「そして、チビちゃんのどくぎりは虹が出るよ。ほら。ブーッ!!」
「ほんとだ〜〜〜」
「ねえ、なんで毒なの?チビちゃんのは『虹ぶき』がいいよ。」
「めっちゃいい〜〜!」


そろそろ帰ろうか。と木から降りたら、じいじ達が外に出て来たので、チビコは走って行って虹ぶきを披露した。
みんなに大ウケした我々はクローバーの上を歩いて帰る。

「ところでチビちゃん。こういう、人がよく踏む場所には四つ葉のクローバーが出やすいらしいよ。」
と言ったらチビコがふ~ん。ってしゃがんで

「あ、これ?」

と、四つ葉のクローバーを1秒で見つけた!それだよっ!!

うちの植物達はつくづく、チビコに激甘である(笑)

愛するツリー🩵



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