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教育産業の未来を読み解く/FUNDINNO未来産業レポート
今、教育産業に注目が集まっています。教育産業は少子化の進む日本だけでなく、インドやアメリカなど世界中でベンチャー企業が資金調達を成功させている業界です。このレポートでは、教育産業と注目の企業などについて詳しく解説します。
ベンチャー企業が創り出す新市場や産業の未来を考えるヒントをお伝えする「FUNDINNO未来産業レポート」の第11弾です。
今回は「教育産業」をテーマにお伝えしていきます。
最新のベンチャー企業トレンドを理解するのに、ぜひご活用ください!
1. 教育産業とは
具体的なベンチャー企業をチェックする前に、教育産業について確認しておきましょう。
教育産業とは、教育関連ビジネスに関わる業界をいいます。
「学習塾・予備校」「家庭教師派遣」「通信教育」などの学生向けサービスをイメージする方も多いものの、ほかに以下のサービスも該当します。
教育産業の主な分野
幼児向け英会話教材
資格取得学校
資格・検定試験
e-ラーニング・映像教育などの社会人向け通信教育
学習参考書・問題集
企業向け研修サービス
「生涯学習」ということばもあるように、子どもからシニアまで広く関係のある業界だといえます。
2. 教育産業のトレンド
教育産業のトレンドをつかむため、市場規模の推移をチェックしてみましょう。
株式会社矢野経済研究所の調査では、2021年における教育産業の市場規模が、2兆8,333億8,000万円になると予測されました。
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国内の教育産業はもともと、少子化によって教育需要が減少し、厳しい状況にありました。
そこへ2020年に新型コロナウイルス感染症の影響が重なり、市場規模はマイナス成長になっています。
しかし2021年には、オンラインサービスの提供体制の確立・在宅学習需要の高まりなどを受け、プラスに転じました。
この伸び幅は大きく、2017年度以降最大の市場規模となることが予想されています。
教育産業は「サービスのオンラインシフト」「在宅学習・オンライン学習需要」などにより、今後いっそうの回復と再成長が見込まれている業界です。
そのなかで、近年とくに注目を集めているトレンドとして「EdTech(以下エドテック)」「リカレント教育」「語学ビジネス」「分野の枠に捕らわれない人材教育」があります。
1.エドテック
エドテックとは、教育を意味する「Education」と科学技術を意味する「Technology」を合わせた造語です。
インターネットやAIなどのテクノロジーを活用して、各個人の学習を推進します。
学ぶ場所や時間が限られないため、就学前の児童から社会人・シニアの方まで、幅広い世代を対象にサービス提供が可能です。
エドテックは、すでに世界各国で活用が進んでいます。
たとえば、アメリカではすでに「前世代の傾向を分析しカリキュラムを組む」「個人の学習データを分析して最適な学習素材を提供する」などを可能にしたプラットフォームの提供がはじまりました。
日本でも、学校でタブレットを配布してICT化を促進したり、学習データを蓄積・解析し教育改善に取り組んだりしています。
2.リカレント教育
リカレント教育とは、すでに社会へ出た大人やシニア層を対象とした教育サービスを指すことばです。
スキルアップ・キャリアアップ・自己啓発の点で注目を集めており、先ほどご紹介した「エドテック」を活用したものも多く見られます。
たとえば、e-ラーニングをはじめとしたオンライン学習市場が好調です。
独立や再就職・転職のため自発的に学ぶ人も増えており、今後企業のグローバル化・働き方の多様化が進むなかで、注目しておきたいトレンドのひとつといえるでしょう。
3.語学ビジネス
日本企業のグローバル化・英語教育の低年齢化などに伴い、語学ビジネスにも注目しておく必要があります。
語学分野は、幼少期から語学力を身につけさせたい親御さまから転職・スキルアップを狙う社会人まで、需要の広い分野です。
しかし、新型コロナウイルス感染症の影響によって海外渡航が制限され、近年大きなダメージを受けています。
その一方で、現在海外との交流・旅行が再開されはじめていることを考慮すれば、回復が見込める分野といえるでしょう。
4.分野の枠に捕らわれない人材教育
STEM教育、またはSTEAM教育、ということばを耳にしたことがあるでしょうか。
STEM教育は「科学(Science)」「技術(Technology)」「工学(Engineering)」「数学(Mathematics)」の頭文字を取ったことばです。
そこにデザインやアートを意味する「Arts」を加えたものが、STEAM教育となります。
STEAM教育は「AIやIoTなどにより変化の激しい今日で、枠に捕らわれず創造していける人材」の輩出を目標に、文部科学省が推進しています。
ここまでご紹介してきた教育産業のトレンドから、より多彩で広い知識をもった人材を、幅広い年代で教育しようとする流れが読み取れるはずです。
少子化という向かい風はあるものの、教育サービスへの需要が高まっているため、今後に期待できる業界といえるでしょう。
3. 世界:教育産業の投資状況
教育産業における世界的なキーワードとして、「エドテック」が注目されています。
その背景には、技術とネットワークの発達により、子どもから大人まで学習教材の需要が高まっていることが挙げられます。
なかでもインドは、エドテックを中心とした教育産業への投資が活発です。
たとえば、エドテックを活用した教育プログラムを運営する「upGrad」は2022年に2.25億ドルの調達を成功させ、企業評価額の総額が22.5億ドルになりました。
インドでは、ほかにも以下の企業が資金調達を成功させています。
インド・ベンチャー企業の資金調達例
難関試験の合格サポートを担う「ALLEN Career Institute」が6億ドルの調達を成功
「すべての子どもに優れた教育を提供する」というビジョンをかかげた「LEAD」が、1億ドルの調達を成功
インドでは対面教育の再開や金利上昇などの逆風もあるものの、数々のスタートアップ企業が資金調達を成功させていることは、注目しておきたい点といえるでしょう。
さらに、アメリカの投資状況も見逃せません。
アメリカでもエドテックを活用するスタートアップ企業が注目されており、続々と資金調達に成功しています。
たとえば、以下の企業が代表的です。
アメリカ・ベンチャー企業の資金調達例
Age of Learning…学術的成功の基盤を作るためのオンライン教育を提供
Udemy…ビジネスパーソンをメインターゲットとしたオンライン教育サービス。65以上の言語・15万を超えるビデオコースで学習が可能
HotChalk…大学と提携し、オンラインで受講できる学位プログラムを提供
EVERF…学生・ビジネスパーソン向けにさまざまなオンライン教育を提供する。アメリカ国内にある7,000以上の教育機関と連携
インドやアメリカなどでエドテックを中心に、教育産業への注目度が高まっています。
4. 国内:教育産業の注目ベンチャー企業
日本国内でとくに注目しておきたい教育産業のベンチャー企業として、2社をご紹介します。
FUNDINNOでも資金調達をしている「株式会社ZERO EDUCATION&ARTS」と「株式会社イゲット千恵子」を取り上げますので、それぞれチェックしてみましょう。
1.株式会社ZERO EDUCATION&ARTS
株式会社ZERO EDUCATION&ARTSは、「ホリエモン」こと堀江貴文氏が主催する「ゼロ高等学院(以下ゼロ高)」を運営する教育系ベンチャー企業です。
FUNDINNOでは、目標金額1,000万円を大幅に超える4,000万円の資金調達を成功させています。
ゼロ高がほかの高等学校と異なるのは、起業家人材の輩出に注力している点。
「座学より体験」「自立する場所」などのマインドにあわせて最新の教育方法を取り入れ、主体的に学べる場を形成しています。
実際のプログラムを確認すると、何が今までの教育と異なるのかを理解することができます。
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2.株式会社イゲット千恵子
株式会社イゲット千恵子は、子どものうちから経営者思考を育むための「CEOキッズアカデミー」を手掛けるベンチャー企業です。
アメリカで実際に使われている教育内容を参考にして作成したプログラムを用い、起業家コースを提供しています。
起業家を目指すコースのレッスン例…魅力的ですね…
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全国に39教室を開校・受講生数約2,000人を抱える・海外展開済みなど、実績も豊富です。
FUNDINNOでは、1,950万円の資金調達も成功させています。
ベンチャー企業の挑戦が、子供たちの挑戦を支えている構造が生まれているのは素晴らしいですね!
5. まとめ
教育産業とは教育関連ビジネスの業界をいい、学習塾・予備校・家庭教師派遣・通信教育など、子どもから大人までを対象にしたさまざまなサービスが含まれます。
一時期は新型コロナウイルス感染症の影響でマイナス成長となりましたが、2021年にはオンラインサービス体制の確立・在宅学習需要の高まりなどを受け、市場がプラスに転じました。
近年では、エドテック・リカレント教育・語学ビジネス・分野の枠に捕らわれない人材教育などがトレンドとなっており、大人に向けた学習サービスも好調です。
とくにエドテックは世界的にも注目されており、インドのupGrad・アメリカのUdemy・日本のライフイズテック株式会社などが注目を集めています。
日本にはほかにも、注目のベンチャー企業として「株式会社ZERO EDUCATION&ARTS」や「株式会社イゲット千恵子」も登場しています。
今後どのようなサービスが出てくるのか、目が離せない業界といえるでしょう。
今回は、教育産業についてのレポートでした。
次回の未来産業レポートもお楽しみにお待ちください!
最後まで読んでくださりありがとうございました!