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母から学んだ武士の情け
山中鹿之介は、戦国時代も終わりに近づいた頃、中国地方で毛利元就と死闘を繰り返していた尼子家の家臣です。
結局、尼子家は毛利元就に滅ぼされてしまうのですが、その滅ぼされた尼子家の再興に奔走、苦闘したのが山中鹿之介です。
その山中鹿之介が、まだ少年だった頃のお話です。
鹿之介の母は、幼い息子の鹿之介が仲間たちと戦ごっこをしている様子を見て激しく怒りました。
「戦ごっこをするのはよろしい。でも、仲間たちを尼子方と敵方に分けたのは、何故ですか!」
「・・・・・・」
「お前は、尼子方で良い気持ちかもしれぬが、敵の毛利方となった人たちは、どんな思いでいると思います?」
母は、鹿之介をそう叱るだけでなく布子(木綿の綿入れ)をせっせと作って、鹿之介の仲間たちのうち、みすぼらしい成りをしている子を見つけると、新しい布子に着替えさせました。
お腹がすいているようだと、食事を振舞いました。
尼子氏は毛利元就に圧迫されていたので生活は楽ではありません。
それでも必死になって鹿之介の仲間の面倒を見ました。
そして幾星霜・・・・・・
この間、尼子家は戦略・戦術に長けた毛利元就を総大将とする毛利方に敗れ、家臣たちは散り散りとなりました。
これを見て山中鹿之介が、尼子家再興を期して起ち上がりました。
そんな時、山の向こう、林の奥、木の陰から次々と布子を着た昔の仲間が集まってきました。
髭面、短躯、長身・・・・・・
あれは・・・ 秋宅庵助、今川鮎助、横道兵庫助、それに植田早苗助ではないか。
戦ごっこをした幼馴染のあの顔この顔。
鹿之介は空を仰ぎ、母を思い浮かべていました。
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