童心を忘れず
子供らと 手まりつきつつ この里に
あそぶ春日は 暮れずともよし
良寛は越後国(新潟県)三島郡出雲崎の名主の長男として生まれ、18歳で出家、33歳のとき備中国(岡山県)の補陀洛山・円通寺で厳しい禅の修行をして印可を受け、一人前の禅僧となりました。
その後、諸国を行脚して越後に戻り、国上山の五合庵に落ち着きました。
40歳の時でした。
良寛はこの五合庵でおよそ15年を過ごしています。
晴れた日には近在を托鉢して歩き、雨の日は詩や歌を作って過ごしました。
良寛の詠んだ短歌です。
良寛といえば、いつも子供たちと無心に遊んでいるイメージがついてまわります。
十字街頭食を乞い了り
八幡宮辺方に徘徊す
児童相見て共に相語る
去年の痴僧今又来る
托鉢を終えて八幡宮のあたりに来ると、子供たちがその姿を見つけて駆け寄って来ます。
「あっ、去年の可笑しな坊さんが今年もまた来ている!」
良寛は嬉しくなって、「さあ、おいでおいで」と手招きして一緒に遊びます。
そんな姿が浮かんできます。
ある時、かくれんぼをして藁の中に隠れているうち、何時の間にか日が暮れて、子供たちは帰ってしまいました。
そうとは知らず隠れ続けている良寛を、農夫が見つけて声を掛けました。
「何をして居なさる。もう日はとっくに暮れましたぞ」
咄嗟に良寛は、唇に指をあてて言いました。
「しっ、子供に見つかってしまうではないか」
天衣無縫、童心を失わず、子供と同じ気持ちで遊んでくれる良寛を、子供たちは敬愛して、いつまでも忘れることはありませんでした。
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戦時の手紙を追い、歴史に光を当て、新たな発見を。
過去と現在を繋ぎ、皆さんと共に学び成長できたら幸いです。
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