懲役ダイアリー 2017年2月16日木曜日 『怒りに侵されて』
【閲覧注意】
センシティブな表現を含みます。
【閲覧注意】
バカ共、クズ共の話は気にするな。自分がストレスを抱えるだけだ。相手にするな。挑発に乗るんじゃない。気にするな。怒るな。
自分に言い聞かせる。こうでも自分に言わないと、この怒りをどう沈めていいのかわからない。収まりがつかないからだ。
私は年下だろうが、年上だろうが、刑務所内では敬語を使って自分を出さず低姿勢に生きていた。だがそれは、更生しようとしていない受刑者にとっては恰好の餌食となった。
年下の受刑者が作業を教えてくれていた。熱心に丁寧に教えてくれて、とてもいいやつだと思っていた。だから私も低姿勢で敬語を使いながら、感謝の気持ちを込めて彼と話をしていたが・・・そこで事態は急変する。
以前の日記にも綴ったが、私は生まれつき「手汗」が酷く、紙をぐしゃぐしゃにしてしまう程の汗をかいてしまう。この手汗のせいで様々な屈辱を味わってきたが、今回もやはりそうなった。
紙テープを製品に貼る作業。手汗が邪魔してうまくくっつかない。
それを見た、年下の受刑者の態度が急変した。
「え、なんでテープ貼れないんですか?え、なんで手濡れてんっすか?」
「昔から手汗やばくて、こういう作業苦手なんですよ」
軽く嘲笑うかのような表情を私に向けるも・・・
「そうなんっすね、オヤジに言って作業変えてもらった方がいいんじゃないっすか?仕事んなんないっすよ。製品できてなかったら俺も怒られるし。」
と私に言ってきた。まぁ、的確な答えだったし、私はその場で右手を真っ直ぐにあげ
「はい!!」
と叫んだ。
「用件!!」
オヤジの声が工場に轟く。
「担当台前までの離席の許可をお願いします!
「よし!」
「離席します!」
担当台前まで行き、オヤジに称呼番号をと名前を伝える。そして、手汗の話をするとオヤジは苦笑いしながら、わかったと言ってくれ作業を変えてくれた。ここまではまだよかった・・・。
作業終了後・・・
教えてくれた若い受刑者とその取り巻きたちが、こんな話をしているのをたまたま耳にした。
「え、funaimってさ、なんでいきなり作業変わったの??」
「あ、なんか俺に言ってきたけど、手汗やばいんだって、ウケるよな!気持ちわりいし。汚ねえし!ははははは!!んでさ、なんか俺にひたすらありがとうとか言ってくんの。なんかマジウケるよな。年下なのにさ!あいつマジやべえわ!!」
「それ!ウケんだけど!!めっちゃやばいな!ははははははははは!!」
クソガキども。ふざけんな。人の欠点馬鹿にしてそんなに楽しいか。低姿勢で生きること何が悪い。感謝の気持ちを伝えて何が悪い。アァァァァァ!!
マジでむかつく。こいつら頭わいてる。文句言ってやりたいと心から思ったが、ここは刑務所。言ったところで得はない。自分が損をするだけだ。こんなクソガキども相手にしても仕方ない。俺には背負っている家族がある。こんなところでトラブルを起こしても自分の未来に響くだけだ。怒るのはやめよう。そう自分に言い聞かせた。
もっとフランクな感じでいい。低姿勢というよりも普段の自分を出しながら人に対して謙虚になればいいだけなんだ。謙虚になることはとても大切だけど、低姿勢だけでは舐められるし、生きていけないということを学べたからまぁよしとしよう。
でも決めた。
出所したら手汗が止まる手術絶対受けてやる!!
正直・・・刑務所生活。精神的にきつい。嫌な思いをしている。怒り狂いそうになるくらい。怒りに侵されている。静まらない。
そんな中、妻から手紙。
手紙から悲鳴が上がっていた。
怒りに満ちた現状。それは自分本位だと気がついた。
待っている妻からは、なんだか疲れているような内容の手紙だった。義理の妹の結婚の件で親とも喧嘩をしたとか、子供の面倒を見るのがきつい、仕事と家事の両立が辛い。休まる時間がなく手紙もろくに書けない。ごめんね。
なんで謝るのか・・・わからない。
辛さ、怒り、憤りを感じているのは誰よりも妻の方だということに気がついた。
俺が刑務所に来たのではない。
俺が妻を刑務所に入れてしまった。
俺なんかよりも1万倍大変な思いをしている。妻は何も悪くないのに、俺よりも辛い思いをするなんて・・・辛すぎる。本当にごめん。何もできない自分が腹立たしかった。
出所後に向けて、目標をどんどん立ててこなさなければならない。私は再度奮起した。
出所後に英語ができるようになっていたい、子供に教えられるくらいの英語力、海外に行った時に困らないくらいのは覚えたい。英語のリスニングを始めるためにCDプレーヤーの使用許可願いを出した。
また、刑務所で行われている職業訓練に参加することも決め、この通りになるかどうかはわからないが予定を組んだ。
3級販売士(訓練期間6ヶ月)→建設機械科(訓練期間3ヶ月)→介護福祉科(訓練期間6ヶ月)→医療事務科(訓練期間4ヶ月)この予定で職業訓練の受講願いを出していこうと考えた。資格も取りながら、高卒認定と英語、韓国語の勉強をする。たくさんの本を読んで、自分に足りない部分を補っていく。特に私には計算力が足りない。昔から算数は苦手だったからだ。それなのによく詐欺師ができたなと自分でも思う。
その間に娯楽として刑務所川柳やあるあるもノートに書いていく。
ここで刑務所川柳
「お菓子見て 幼きワクワク 思い出す」
「会いたいと 思う気持ちが 虚しさに」
やることを自分で決めてやり通すってワクワクするな。
まだ見ぬ世界を見て、知識を得ていく。行こう!プラスに満ちた世界へ!
全ては順調に進んでいる。人生の成功に向けて。
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