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須田景凪 HALL TOUR 2021 "Billow" 感想

観覧にいたるまで

3月、今まで抑えていたライブに対する欲求が爆発し、
まるで何かに操られるようにeplusのライブ予定を舐めまわして見ていた。

すると須田景凪の追加公演の一般販売チケットがなんとまだ売っているのを見つけた。

今年の2月に発売されたばかりの1st FULL ALBUM「Billow」を引っ提げてのツアー。アルバム自体はすでに聞いていてとてもよかった覚えがあったので即座に友人を誘ってチケットを購入する。

友人は須田景凪さんがボーカロイドP「バルーン」として活動していたときに結構曲を聞いていて(というかボーカロイド色々聞いていて知識もすごければ歌も上手い長身のイケメンなのだ ※最重要)急なお誘いにもかかわらず行きましょう!と快諾してくれた。

さらっと書いたが米津玄師、YOASOBI、ヨルシカ、Ado、ヒトリエ、サイダーガール、ネクライトーキー、Mr.FanTastiC、イトヲカシ、オメでたい頭でなにより

など今の音楽業界ではネットから飛び出してはたちまち世間様に猛威を奮っているアーティストが数多く輩出されている。

須田景凪さんもその一人だ(とボクは考えている)

なのでどうしても気にならずにはいられなかったのだ。
流行の先端を覗いてみよう。というわけではないが、
ライブに足を運んでみたくなったし、純粋にBillowすげぇよかったので。

当日は久しぶりに友人と会えたのが嬉しすぎてはしゃいでいたらボクが開演時間を間違えて把握していて遅刻してしまったのはここだけの話。

係員の方がすごく親切かつ丁寧に座席の方へ案内してくれて本当に助かりました。本当にありがとうございます。

ライブ本編

僕たちが席に着いたとき、演奏されていたのは「veil」

扉を開くとたちまち音の波が堰を切ったように肌に襲いかかってくる感覚。
会場では演奏中の曲を流してくれていたのだが、
重い扉を開いた時に音源から生の音に変わる瞬間。

この感覚は今まで経験したことがないもので、高揚感が抑えきれなかった。

ライブ会場はLINE CUBE SHIBUYA。
実はこの日に初めて足を運んだ場所だったので音響やらなんやらどんな感じか全く把握できていなかったのだが、2階にいてもドラムの音が胸を打つ感覚があってとても音を近くに感じることができた。

スタンスとしてはMCはあるものの、あまり多くは話さない。
(もちろん、話すことは話していた。アルバムの話とか。)

ステージセットで置いてあったソファに座って歌うとか、
曲間の繋ぎのセッションを弾いてからギターを置いてボーカルに徹する場面も見ててちょっと面白かった。

Billowというアルバムは多彩なジャンルでありながらどの曲にもらしさが詰められている気がして、それを巧みにセッションで繋ぎながら、あるいは綺麗に切り替えて演奏していく様は見ていて圧倒された。

ライブ中盤、「懐かしい曲を」と告げ、須田さんソロでゆっくりと情緒を込めて1フレーズずつ歌い始めた。

さよならはあなたからいった
それなのに頬を濡らしてしまうの
そうやって昨日の事も消してしまうなら
もういいよ
笑って

綺麗に歌い上げた後に爆発するようにバンド全体での演奏が始まり、
これが「シャルル」か!

とよく知りよく聞いていたはずの楽曲の真の姿を何年か越しに初めて知ったような感覚。

のちのMCで本来であればこのツアーは東京公演でラストだったことを告げる
しかし、コロナの影響で福岡・愛知公演が5月に延期になったこと。

その頃には世界も私たちも今日とはすっかりまた状況が変わっているであろうことということを話してくれた。

4月を挟むわけだからそのうちに新たな環境に変わる方も多い時期だからこそかもしれないが、なんというかアーティストの時間感覚という物に触れた瞬間にも感じた。

いっても2ヶ月だからあっという間とふと思ってしまったのだが、
シャルルの演奏開始前に「懐かしい曲」といっていたのを思い出してはっとした。

シャルルは2016年の楽曲なのだが、今でもずっと聞き続けているようなボクのの中ではずっと息づいている曲だ。
シャルルを聞いてもきっと懐かしいなぁとはまだまだ思わない。

けれどもきっと須田景凪さんは日々の移ろいや感情の移ろいという物をきっと敏感に感じ取り、読み取ってそれを楽曲という形の芸術に落とし込んでいるのだろうなと思った。
Billowというアルバムはもしかするとその感情の結晶体なのかもしれない

めちゃくちゃな深読みをしてしまうのだが、その楽曲一曲の感じ方の違いで須田さんの感覚の美しさみたいなものを勝手に感じてしまった。

「刹那の渦」ではMVをバックに演奏を。
どこか悶々と渦巻いた感情の靄に光を照らすような演出と一緒に温かく響く
「ゆるる」

本編がゆるるで閉じられるのだが、アンコールに応えて戻ってきてくれた。

アンコールでも「色に出ず」、「パレイドリア」といった2曲を挟んで一度落ち着いた会場を一気に幸せな雰囲気へと昇華させてくれる。

その後のMCのときに一度彼が俯いたまま止まってしまって
どうかしたのかと思ったのだが、「何喋ろうとしたのか忘れてしまった」と
会場を笑いに包んでくれるお茶目なシーンもありつつ、

「ちゃんと1階席から2階席の奥まで見えています」
「今日、本当はこの場に来たかったけれども大切な人を守るためにくるのをやめるという決断をした人もその判断は正しいと思う。この場に来てくださった人もみんなとてもマナーが良くてとても誇らしいです。」

と述べてくれたり、優しさが爆発しまくったMCを思い起こすと改めて楽曲の切なさ、儚さ、優しさみたいなものはこの人間性から滲み出ている美しさなのかなと思ってみたり。

「本日はありがとうございました。須田景凪でした。」

と告げて「はるどなり」が本公演ラストを飾ることになる

そのときには演出で紙吹雪が凄まじくステージに舞い散る中、
大事そうに歌い上げている姿は思わずじんときてしまった。
(春を舞う花弁の演出と思われる)


歌い終わった後で須田さんはマイクの前から動かず静かに
「外が大雨のようなので気をつけて帰ってください。今日はありがとうございました。」と優しく気遣いを見せながら感謝の気持ちを伝えてくれる。

と思ったら、
「紙がいっぱい髪に刺さって...あのいえ...そういうことで...」

と謎のメッセージを残して会場をもう一笑いさせてステージから去っていった。

ん?????最後それでいいの?????????
と思いつつ、公演が終わった後の幸福感はとてつもないものだった。

このご時世ゆえにライブ直後に友人と感想を語り合うことはあまりできなかったが後日ゆっくりと思い返しながら話せたら最高だよな。

あとがき(脳内整理)

ぼくが須田さんの公演を初めて見たあとで思ったことは
ぼくが自分で思っていた以上に須田景凪さんとバルーンさんで分離して見ていたのだなということ。

Billowを聞いたことで須田景凪というアーティストの凄さに触れて今回ライブに赴こうと決心するに至ったのだが、この判断を本当に褒めてあげたい。
よくぞeplusの公演予定表を舐めまわしたと褒めてあげたい。

須田景凪さんの楽曲に触れつつもバルーンさんという背景で見ている部分というのが拭いきれていなくて、別にそれが悪いとか良いとかいう話ではないのだけれどどこか別人格のレイヤーで見ていたので今回の公演で須田景凪もバルーンも一人の素晴らしいアーティストであるという点に帰結してすっきりした。

ハチと米津玄師は同じ人間だけど違う人格の気がするみたいな脳内議論なんだけどどちらもその活動を経て今を形成している素敵なアーティストですね

また須田景凪さんのライブに足を運ぼうと思った。
なんにせよ素敵な時間をありがとうございました。

セットリスト(1曲目と2曲目は不在のため予想)


須田景凪
2021/3/13
須田景凪 HALL TOUR 2021 "Billow"
LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

セットリスト
01. Vanilla
02. 飛花
03. veil
04. MUG
05. 迷鳥
06. 風の姿
07. メメント
08. welp
09. Carol
10. MOIL
11. Alba
12. シャルル(Aメロ須田景凪ソロアレンジから)
13. レド
14. 刹那の渦
15. ゆるる
——— encore ———
16. 色に出ず
17. パレイドリア
18. はるどなり


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