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『SHOGUN 将軍』もいいけど『たそがれ清兵衛』もあらためて見直したい4つのポイント
ゴールデングローブ賞にもノミネートされ、今年のエミー賞を史上最大規模で独占した『SHOGUN 将軍』。
いまだ公開されている『侍タイムスリッパー』大ヒットもあり、ますます〝時代劇〟が盛り上がりそうだが、時代劇といえば、やはり『SHOGUN 将軍』と同じく、真田広之主演『たそがれ清兵衛』を語らずにはおれない。
当時書いたテキストを発掘したので、リライトしてお届けするのだ(再鑑賞して全面リライトします)。
山田洋次監督初の時代劇としても注目。
【速攻レビュー】たそがれ清兵衛 - 時代劇の歴史を変えた日本アカデミー賞受賞作の底力
日本アカデミー賞を受賞し、日本映画賞を総ナメにした『たそがれ清兵衛』をようやく鑑賞。
事前に、シナリオ雑誌『月刊シナリオ 2003年1月号』(2002年12月03日発売、シナリオ作家協会刊)掲載の脚本を読んで詳細まで知っていたけど、時代劇の見方が一変。
脚本を越える演出や演技のスゴさなども実感しました。
いくつかの感想通り、この映画はテレビだと寝ちゃうと感じるかもしれませんが、映画館でその空気感を味わう価値がある大傑作。
見ていないので較べようがないけど『阿弥陀堂だより』と、どっちがより退屈なんでしょうか。
まぁ、多くの感想にあるようにどちらも淡々とした時間が過ぎていくだけです。
【1】 これまでの時代劇とは確実に違う
まず『たそがれ清兵衛』は、これまでの派手な時代劇らしいドラマチックな展開を期待する人には少し違和感があるかもしれません。しかし、その魅力は微細に描かれた日常生活にあります。
例えば、従来の時代劇とは異なる当時の〝リアルな生活感〟を驚くほど描いており、日本人としての懐かしさを感じさせます(ネタバレなので後日)。
【2】 日本人ならではの美意識を感じる
映画全体を通じて感じたのは、日本の四季や生活文化、そして〝わびさび〟のような感覚でした。
これを現代風にいえば〝癒し〟でしょうか。
なんか不思議と安心感や心地よさが湧き上がりました。
【3】 観客の世代によって変わる感動
この映画は人生経験を積んだ大人にこそ響く物語でしょう。
実際に年配の方々が涙してましたけど、若いカップルは〝のほほん〟と観ていて。
このように観る人の人生経験に応じて異なる感動を与える点が、この作品の深さかもしんない。
なにげない生活にも、誰にも分からない〝その人だけの人生〟があって、
表面的には同じに見えても、やはり違う(当たり前だけど)。
誰もが、自分の人生の主人公だ……というのも安っぽい表現ですが、あの時代に生きた人々の生活がここにあります。
それが染み入るんですな。
ゆえに何度も見直せる。
【4】 幕末の背景を知るとより楽しめる
幕末の時代背景を知っていると、より深く物語を理解できるというのはありますが、
時代背景を詳しく知らなくても感動できる物語であり、普遍的なテーマがある感じ。
まとめ!『たそがれ清兵衛』は必見の日本映画
静かな日常のなかで、日本人らしい美意識と普遍的な感動を描いた時代劇の大傑作。
時代背景が分からなくても感動できる要素満載です。
DVDになったら、シナリオを片手にワンシーンワンシーンひとつひとつ噛みしめたい。
■ 映画タイトル:たそがれ清兵衛[THE TWILIGHT SAMURAI]
■ 公開日:2002年11月02日
■ 上映時間:129分
■ 製作:日本
■ 原作:藤沢周平(1988年)
■ 製作:大谷信義、萩原敏雄、岡素之、宮川智雄、菅徹夫、石川富康
■ 監督・脚本:山田洋次
■ 脚本:朝間義隆『幸福の黄色いハンカチ』『俺たちの交響楽』
■ 撮影:長沼六男『半落ち』『沈まぬ太陽』『武士の一分』『青春かけおち篇』
■ 編集:石井巌『東京家族』『家族はつらいよ』『母と暮せば』
■ 照明:中岡源権『竜馬を斬った男』『226』
■ 出演:真田広之、宮沢りえ、小林稔侍、大杉漣、吹越満、丹波哲郎/他
■ 配給:松竹
(C) 2002 松竹/日本テレビ/住友商事/博報堂/日販/衛星劇場
もとげん
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