欧文書体解体新書―英語フォントの各エレメントとその名称
欧文書体(ラテンアルファベット・英語フォント)の各部エレメントには細かく名前が付いています。以下手元の資料を元に解説してみます。
高さ・大きさ
基準となるライン
ascent line(アッセントライン)
大文字の上に付くアクセント記号の上限ライン
ascender line(アセンダーライン)
小文字のミーンラインより上に突き出た b, d, f, h, k, l の上限ライン
cap line(キャップライン)
大文字の一番上のライン。通常アセンダーラインよりわずかに低い
mean line(ミーンライン)
小文字のベースとなる高さのライン
baseline(ベースライン)
各字を置く起点となるライン
descender line(ディセンダーライン)
小文字のベースラインより下に突き出た g, j, p, q, y の下限ライン
大きさ
x-height(エックスハイト)
小文字の中心部分の高さ。小文字の x が基準となる
cap height(キャップハイト)
大文字の高さ
type size(タイプサイズ)
文字の大きさ。アセンダーラインとディセンダーラインの間の大きさ。指定する文字サイズが大体これになる。たとえば文字サイズを12ptとした時、「12pt」とはこの部分の大きさを指す。なので、同じサイズでも書体によりエックスハイトなど各部の高さが違うので、見た目の大きさが異なる。
字種
uppercase(アッパーケース)
大文字。活版印刷時代、大文字は活字ケースの上側に収められていたことに由来する。capital(キャピタル)、caps(キャップス)とも呼ぶ
upright(アップライト)
直立した字形 ↔ italic
lowercase(ローワーケース)
小文字。活字ケースの下側に収められていたことに由来する
small caps(スモールキャップス)
小文字サイズの大文字(?)。正式には small capitals(スモールキャピタルス)だが、キャップスと略す方が多い
italic(イタリック)
やや右に傾いた字形。アップライトをただ傾けただけではなく、一部はグリフそのものが違う ↔ upright
lining figures(ライニング数字)
上下の高さが揃ったタイプの数字。主に理数系や会計など数字が多用される文書で使用する
old style figures(オールドスタイル数字)
小文字のようにアセンダーやディセンダーを持つタイプの数字。OsF と略す。主に文系の文章中で使用するが、2桁ぐらいまではスペルアウトするのが普通
例:22 → twenty-two
two story / one story(2階建て/1階建て)
a のフックの有無、g のループの有無でこのように呼び分ける
各部名称
apex(エイペクス)
2本のストロークが合わさる天頂部
bar / crossbar(バーまたはクロスバー)
文字中の水平なストローク
bracket(ブラケット)
ストロークとセリフの間にある小さなカーブ。L字型の取付金具のこと
serif(セリフ)
主となるストロークの先端につく小さな飾り
bilateral serifs(バイラテラルセリフス)
ストロークの両側に付くセリフ
shoulder(ショルダー)
下方のステムへ向かうカーブしたストローク
aperture(アパーチャー)
やや丸みを帯びた文字中のスペース
ear(イヤー)
g の右肩に付くちょこんとした飾り
link(リンク)
2階建て g の上下をつなぐカーブ
loop(ループ)
2階建て g のベースライン下の輪。閉じてないこともある
stem(ステム)
垂直の長いストローク。木の「幹」の意
bowl(ボウル)
カーブして閉じたストローク
counter(カウンター)
円やカーブで閉じた部分のスペース
eye(アイ)
e の小さなカウンターだけこう呼ぶ
finial(フィニアル)
カーブストロークの先細りになった先端
dot / tittle(ドットまたはティトゥル)
i と j の上の点
descender(ディセンダー)
小文字のベースラインより下の部分
ascender(アセンダー)
小文字のミーンラインより上の部分
leg(レッグ)
斜め下に降りる短いストローク
beak(ビーク)
文字の上部に見られる鋭いトゲ状の飾り。「嘴」の意
spine(スパイン)
S, s に見られる中央部のカーブ。「脊椎」の意
arm(アーム)
水平または上向きの、一方がどこにも繋がっていないストローク
crotch(クロッチ)
2本のストロークの繋がる部分の間。「股」の意
vertex(バーテックス)
2本のストロークが繋がる上部または下部の頂点
stroke(ストローク)
水平または垂直以外の直線または曲線
diagonal stroke(ダイアゴナルストローク)
斜めの長いストローク
axis(アクシス)
ストロークの最細部を繋ぐ仮想上の線。「軸」の意
tail(テール)
下方へ延びる斜めのストローク
cross stroke(クロスストローク)
t や f のステムに交差する水平なストローク
terminal(ターミナル)
セリフを持たないストロークの終端
open counter(オープンカウンター)
一方だけ開いているカウンター
spur(スパー)
主たるストロークから出てる小さな突起
hook(フック)
終端へ向かって曲がるストローク
ball terminal(ボールターミナル)
球状の終端
hairline(ヘアライン)
ストロークの内、他に比べて特に細いもの
ligature(リガチャー)
2つ以上の文字を繋げてひとつのグリフにまとめる処理
quaint(クウェイント)
中世タイポグラフィを再現した古風な飾り
teardrop terminal(ティアドロップターミナル)
滴状の終端。ボールターミナルとの違いはよく判らない(笑)
swash(スワッシュ)
セリフやターミナルに置き換わる飾り線
flag(フラッグ)
5 の上部の水平なストローク
diacritic(ダイアクリティック)
いわゆるアクセント記号全般
参考資料
Typography Deconstructed
ここで紹介したような解説を1枚のポスターにして販売しています。PDF、オンデマンド印刷、凸版印刷の3種。
Type Anatomy Letterpress Print
こちらも解体図を1枚のポスターにして販売しています。作者は The Typographic Desk Reference の著者でもあり、こちらも参考にしました。
‘A Guide to Typography’ Playing Cards
1枚1枚に解体図が描かれたトランプです。説明文が Typography Deconstructed に似てるので、作者は一緒なのかも?