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「中学校教員の教育職以外での経験年数の国際比較」


今回は、世界各国の教員がどのような経歴を持ち、その影響が教育現場でどのように現れているのかについて、教育システムの背景や具体的な事例を交えて考えていきたいと思います。

1. 日本

日本では、「教育職以外の経験がない(0年)」教員の割合が非常に高いことが特徴的です。この背景には、日本独自の教員採用システムと文化があります。

背景

  • 教員採用試験:日本の公立学校の教員は、主に「教員採用試験」を通じて採用されます。この試験は大学卒業後すぐに受験するのが一般的で、合格すればすぐに教員として働き始めます。そのため、多くの教員が他の職業を経験せず、教育分野でのキャリアをスタートさせる傾向があります。

  • 安定した職業:教員という職業は、日本では「安定した職業」として広く認識されています。長期的な雇用や充実した福利厚生を求めて、若い人たちが教員を目指すケースが多いです。

教育への影響

  • 専門的な知識とスキル:教員になる過程で、教育理論や教授法に重点を置いた専門的な教育を受けるため、教員としての知識やスキルが早い段階で身につきます。これにより、学習指導要領やカリキュラムに基づいた効率的な授業を提供することができます。

  • 社会経験の不足:しかし、多くの教員が他の職業を経験していないため、社会で実際に必要なスキルや課題についての理解が乏しくなりがちです。特に、ビジネスや異業種の経験が欠けているため、現実社会における問題解決や実践的な知識を生徒に教える場面で限界がある可能性があります。

2. アメリカ

アメリカでは、日本と対照的に、教育職以外の経験を持つ教員の割合がかなり高いです。1~4年の職業経験を持つ教員が多く、さらに5~9年、10年以上の経験者も少なくありません。

背景

  • キャリアチェンジが一般的:アメリカでは、キャリアチェンジが一般的で、特に30代以降の人が教育分野に転職することが珍しくありません。異業種で経験を積んだ後、教員としての資格を取得し、教育現場に参入する人が多いです。

  • Teach for Americaなどのプログラム:このプログラムは、非教育分野出身の人々が短期間で教員資格を取得し、教育現場で働く機会を提供しています。多様なバックグラウンドを持つ教員が生まれる一因となっています。

教育への影響

  • 現実社会に基づいた教育:他の職業での経験を持つ教員は、ビジネスやテクノロジーなど、社会で直面する現実的な問題やスキルを授業に反映できます。例えば、マーケティング業界で働いていた教員が経済の授業で実務的な視点を加えることができるため、教育がより実践的になります。

  • 多様な教え方:多様な業界で培われたスキルを活かして、クリエイティブな授業や異なる教育アプローチを試みる教員が多いです。例えば、IT業界出身の教員がプログラミング教育を先駆けて導入するなど、教育内容のアップデートに寄与することがあります。

3. イギリス

イギリスでは、教育職以外の経験を持つ教員が一定数おり、特に1~4年の職業経験を持つ教員が多いです。また、5~9年、10年以上の経験を持つ教員も他国と比べて多いことが特徴です。

背景

  • PGCE(Postgraduate Certificate in Education)制度:イギリスでは、大学を卒業後に1年間のPGCEプログラムを経て教員資格を取得するルートが一般的です。このため、他の職業に就いていた人でも、比較的短期間で教員に転職することが可能です。

  • フレキシブルな教育キャリア:イギリスでは、教育以外の分野でキャリアを積んだ後に教員になることが奨励されており、教育と他業種とのキャリアパスが柔軟に行き来できる環境が整っています。

教育への影響

  • リアルな職業経験の共有:イギリスの教員は、他の職業で得た経験を活かして、生徒にリアルな職業知識やスキルを提供することができます。例えば、元エンジニアが物理や数学を教えることで、生徒に「この学問が実際の職業でどう役立つか」を具体的に伝えることができます。

  • 問題解決能力の向上:イギリスの教員は、職場で培った問題解決能力やチームワークのスキルを活かして、生徒に対してプロジェクトベースの学習(PBL)やディスカッションを中心とした授業を展開する傾向があります。これにより、生徒は学問を実際の問題に応用する力を身につけます。

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