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「夜もすがら契りしことを忘れずは恋ひむ涙の色ぞゆかしき」(中宮定子が一条天皇に贈った「辞世の歌」)

「夜もすがら契りしことを忘れずは恋ひむ涙の色ぞゆかしき」

この歌は、平安時代の女性歌人である中宮定子が、一条天皇に贈った辞世の歌です。以下に、この歌の背景と解釈を詳しく説明します。

背景

中宮定子は、藤原道長の兄である藤原道隆の娘であり、一条天皇の最初の皇后(中宮)でした。しかし、彼女の一族が権力闘争で敗れ、苦難の人生を送りました。定子自身も病気で若くして亡くなります。辞世の歌は、彼女が死を前にして詠んだもので、一条天皇との愛を振り返りながら、自らの死後も天皇が自分を忘れないことを願った歌です。

歌の解釈

「夜もすがら契りしことを忘れずは」という部分は、「一晩中お約束したことを忘れないなら」という意味です。これは、定子が一条天皇との間で交わした約束や愛の言葉を指しており、天皇がそれを忘れずに覚えていてくれることを望んでいます。

「恋ひむ涙の色ぞゆかしき」という部分は、「私のためにきっと泣いてくれるでしょう。その涙の色が見たいものです」という意味です。定子は、自分の死後に天皇が自分を思って涙を流すことを予見し、その涙の色を見たいと切望しています。

全体の解釈

この歌は、定子の一条天皇への深い愛情と、自分の死後もその愛が続くことを願う気持ちが込められています。彼女は天皇が自分を忘れずに涙を流すことを望み、その涙の色を想像しながら、天皇への愛と別れの思いを詠んでいます。定子の切ない心情と、死を前にした儚い願いが表現されています。

この歌を通じて、平安時代の貴族社会における女性の地位や、権力闘争の中での苦しみ、そしてその中でも変わらぬ愛の重要性が浮かび上がります。

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