備忘録:「水戸ジュニアオーケストラ第47回定期演奏会」
実際に当日演奏された曲目(演奏順)
フンパーディンク:歌劇「ヘンゼルとグレーテル」序曲
アンゲラー:おもちゃの交響曲
ベイリー::ロング・ロング・アゴー
アイルランド民謡:ロンドンデリーの歌
休憩
ベートーヴェン:交響曲第6番ヘ長調作品68「田園」
コンサートマスター挨拶(高校2年生)
楽団員募集の告知
(アンコール)エルガー:「威風堂々」第1番
なお、指揮の照沼夢輝氏は1994年生まれで、水戸ジュニアオーケストラのOB.。現在は、日本フィルハーモニー交響楽団でクラリネット奏者を務めています。
今回の水戸ジュニアオーケストラ定期演奏会では、この写真を見てもわかるように、トランペット奏者とティンパニ奏者が左斜め後方に位置し、トロンボーン奏者が右斜め後方に位置するという対向配置になっていました。
一方で弦楽器は1stバイオリン奏者の対向位置にはチェロ奏者を据えていましたが、この弦楽器の配置はアメリカのオーケストラでよく見られる配置です。
ちなみに当オーケストラの「田園」での楽器編成ですが、フルート奏者は原曲通り3名でしたが、ピッコロ奏者は第4楽章の後半以外は、1番奏者のアシスタント(いわゆる1アシ)を務めていました。
クラリネット奏者も3名で、1番奏者にアシスタントがつく形になっていました。一方、ホルンは倍管の4名でボックス配置になっていました。
トロンボーンについては、「田園」では通常は2名ですが、今回は1番奏者にアシスタントがついて3名で演奏していました。
ちなみに、以上のアシスタント奏者ですが、トロンボーンは弱音の箇所でもほとんど重ねて吹いていました。クラリネットのアシスタント奏者は、第2楽章の1番奏者による主要なソロ箇所以外は、ほとんど重ねて吹いていました。フルートとホルンのアシスタント奏者は、原則として弱音の箇所(例えばメゾピアノ以下)は、ほとんど吹いていませんでした。
コントラバス奏者は「田園」に限らず全曲通して3名でしたが、人数の少なさを感じさせない重厚な響きを出していたように思いました。
「田園」の演奏は、第1楽章と第3楽章の提示部を反復する演奏であり、曲全体のテンポはゆっくりめで、第4・第5楽章をじっくりと謳い上げる演奏だったと思います。
アマチュアオーケストラやジュニアオーケストラの場合、若い演奏者が多くなるため、反復などはせずに速いテンポでぐいぐい進んでいくイメージを連想しがちですが、水戸ジュニアオーケストラの場合、2022年に演奏したモーツァルトの「交響曲第40番」の場合も、忠実に反復をおこなっていました。
アンコール曲については、何になるのかなと演奏前に私も想像していました。
「田園」の第4楽章に「嵐」のシーンがあるので、「嵐」つながりでロッシーニの「ウイリアムテル」序曲かヨハン・シュトラウスの「雷鳴と電光」の可能性も高いと思いました。
ベートーヴェンつながりで、しかもトロンボーンの入る曲ということになれば、「フィデリオ」序曲か序曲「レオノーレ」第3番も可能性はあるとは思っていましたが、今回はトランペット奏者が2人しかいないため、この時点で序曲「レオノーレ」第3番は脱落することになります(序曲「レオノーレ」第3番では、トランペット奏者が3名必要)。
このようなことを頭の中で思いめぐらしているうちに、カーテンコールの途中で打楽器奏者やチューバ奏者などが入ってきて、以外にもエルガーの「威風堂々」第1番が始まりました。まったく意表のつく選曲でした。
ちなみに「威風堂々」では、ティンパニ以外の打楽器奏者は右斜め後方(すなわち、トロンボーン奏者とチューバ奏者の後方)に位置し、トロンボーンは4名で演奏していました。そのため、ティンパニと他の打楽器も対向配置になっていたことになります。
今回の定期演奏会で特筆すべきなのは、前年までとは異なり、特に管楽器の各パートで中学生(特に2年生)が増えていたことであり、「田園」やアンコール曲の「威風堂々」ではフルートは中学生がトップ奏者に抜擢されていました。クラリネットやファゴット、ホルン、トロンボーンでは2番奏者をそれぞれ中学生が担当し、1~2年後の技術的な飛躍が非常に楽しみになってきました。
クラリネットの1番奏者は高校生が担当していましたが、「田園」の第2楽章中盤のソロの場面は、高温に移行する際の「息継ぎ」のタイミングにやや苦戦しているようにも見受けられました。
同じく「田園」ではティンパニ奏者も高校生が担当していましたが、第4楽章の「嵐」の場面では非常に的確な演奏で、持ち味を出していたように思います。
客数は前年度(2023年度)の定期演奏会よりもかなり増えていたように思います。ただし、客層を見てみると、男性に関しては60歳以上の人が非常に多く、逆に18歳~35歳程度の人たちは相変わらず少ないように思いました。
低料金のコンサートではありましたが、入場料の金額にかかわらず、若い客層が少ないのは、クラシック音楽コンサート全般にわたる大きな課題であると認識させられました。
ただ、男性に関しては高齢層の客が多かったとはいっても、話し方から判断すると、いわゆる「茨城訛り」で話す客は意外にも少なく、外見なども含め総合的に判断すると、首都圏近郊の地域から一定数の客が訪れていたことが推測されます。この点だけが、地元客の多い吹奏楽コンサートとの大きな違いになります。
一方、コンサートと当日の係員の対応は、前年までと比べてよかったと思います。開演30分前になると係員数名が「最後尾はここです」のプラカードを持って現れました。
ほかのアマチュア吹奏楽団やオーケストラの演奏会の場合、開演時間を迎えるまで「最後尾はここです」の案内をまったく行わないところがあるので、今回の係員たちの入場整理は気合が入っていると感じました。
主催者側の気合の入れ方は、コンサートプログラムにも現れていました。今回は、プログラムの曲目紹介は、指揮の照沼夢輝氏自らの渾身の執筆によるもので、「田園」を小林研一郎氏指揮のもと。日本フィルで演奏した際のエピソードも盛りk間れていました。
なお、今回の定期演奏会は、演奏者による演奏中のハプニングはありませんでした((1~2年前には1stバイオリンの小学生が演奏中に譜面台を倒しながらも1~2分間暗譜で弾き続けているということがありましたが)が、「おもちゃの交響曲」の第1楽章終了時に大きな拍手が起きてしまいました。
この曲は有名な曲ではありますが、ふだん生で演奏されることが少ないのと、前半の他の曲にはいわゆる「楽章」というのがなかったため、この曲の場合、第1楽章終了時に拍手が起きたものと思われます。
今回のコンサートマスター(高2)は、前半1曲目前のチューニングの際も、オーボエ奏者に的確に指示を出していて、演奏中もコンサートマスターとしての重責を果たしていたように思います。
ただ、今回は、同オーケストラで初めて演奏する中学生・高校生が多かったためか、カーテンコールの際に、指揮の照沼夢輝氏がクラリネット奏者3名を立たせようとしたときに、なかなか3人が立ち上がろうとしませんでした。
プロのオーケストラの際には当たり前のように行われているカーテンコールの光景ではありますが、アマチュアオーケストラの場合には、楽団員たちにとっては演奏以外の面でもまだまだ学ばなければならないことがあるのを実感させられるシーンでもありました。
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