「ぼくのお日さま」を日比谷で観た
東京で「ぼくのお日さま」を観た。
直感的にこれは観なければと思っていた映画作品だったけど、上映しているのが近くて盛岡か仙台しかなかったので機会をうかがっていた。
先日ツドイの編集学校の最終回があったので、「それならば東京で観られる!」と思い日比谷に向かった。
先に言っておくと、かなり観てよかった。今の私に必要な映画だった。「PERFECTDAYS」の感想を語り合った人たちにはおすすめしたいと思った。感想を残しておこうと思う。
たまらん。このセリフの少なさ、風景や表情、色味や光から物語がこちらに届く。どこを切り取っても美しい絵になる。ロックでストイック。また観たい。
終わったら買いたくなっているだろうと予測して上映前にパンフレットを買った私グッジョブ。インタビュー記事がどれも良かった。いいものをつくる人たちの魂が一つ一つのページに滲む。装丁のお日さまがかわいい。写真は木村和平さん。
建物を包み込むくらいの雪景色が、それだけでとてつもなく美しい。
雪道の中、くすんだブルーのボルボ240エステートを運転しながら煙草を呑む池松壮亮、これだけで観る価値がある。あり方に引き込まれる。雪景色の中、冬の空気と一緒に吸うたばこってなんであんなに良いんだろうね。
それから、池松壮亮が演じるアラカワのパートナー役である若葉竜也もよかった。二人のシーンが好きだった。そして良いなと思うのが、同性のパートナーであることを主題にしていないこと。同性同士だからこその物語というわけでなく、同性での結婚が認められないことへの問題提起でもなくて、ひと組のカップルが、まだまだバイアスだらけのローカルに行きて、そこで人との関わりがあり、幸せも、傷つくことも、ただそこにあるものとして描いている。余計な説明がないからこそ、物語が立ち上がる。そうだ、私はこれが当たり前だと思っていたんだ。だから今まで違和感を感じる瞬間が多かったんだ。こういう風に一人ひとりの人間として描いてくれる作品が観たかったんだ、ということに気づいたことでもあった。
私は文章に携わることが多いけれど、やっぱり言葉は頼りないなと思う。そして武器のように鋭いこともある。怖い。だけど、言葉があるから伝えられる思いがある。受け取って返すことができる。それを改めて分解して味わった。
この映画全体を通して。人間の機微を最大限に丁寧に掬いとる表現を目の当たりにして、忙しない日々を生き抜くために蓋をしていたいろんなことを思い出したくなった。
演者も、ロケ地も、ハンバートハンバートの音楽も、監督も、すべて良かった。
人間として生まれてきたからこそ領受できる文化的な豊かさを、この作品で贅沢に味わった!
ちなみにスケートのコーチ役・池松壮亮のスケートさばきやコーチっぷりを見て「池松壮亮ってスケートもこんなにできちゃうんだなぁ」と思っていたら、超初心者で、最初は「クマのグミ」みたいなぎこちなさだったらしい。信じられない。これだから役づくりの話を追うのはやめられない。
この映画で脚本、監督、撮影、演出をひとりで担当した奥山大史さんは、「いいものをつくる」と魂に誓っているような気がした。これくらい、自分が納得するもので、心強い仲間と一緒に誰かの心を動かす作品がつくれたら、それは素晴らしいことだ。痺れるな〜
また観たい。これは間違いなくスクリーンで観る作品。そして冬に観てほしい!寒くなった今からが見頃。これも間違いない。
最近は映画を全然観なくなったし、ここからの人生で何本観られるかわからないなと思う。(今年は驚くべきことに6本しか観ていなかった!)でも観たいと強く思った時には、絶対観に行く自分であろうと思った。ナミビアの砂漠も観るぞ!
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