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「聴きポジ」を楽しむ


前回は図書館で”ついでに”借りてきてすごく面白かった本について話した。

今回は“本命”で借りた本の話をする。

こちらである。

この本のことは、たまたま聞いた音声配信で知り興味を持った。

私はずっと聴き下手だった。というより、会話下手だった。前回話したが、変わり者で空気が読めないので、安心して人と会話ができなかったのである。会話しているときはとても楽しいのだけど、終わった後に大抵、何か変なことやらかしたんじゃないかと心配になってしまうのだった。

会話上手は聞き上手、とよく言われるけれど、やっぱり何か気の利いたことを言ってこその会話上手と思っていた。だから、人の話を聞きながらも、次に自分が何をうまく話そうかということばかり考えていたような気がする。

転機は、コロナ禍に学んだマインドフルネスだった。学ぶ過程で出会った人から傾聴という言葉を教えてもらった。今ここで話されていることを、自分の嗜好や判断を入れずにただ聞いて理解し受け止める技術ということだ。要するに、マインドフルに人の話を聴くことである。こうすることで、人と信頼関係を築くことができるとされている。

それ以来、聴くということを意識できるようにはなった。まあ、いまだに雑念なく100%集中して相手の話が聴けるという境地には全く達していないのだが。でも、少なくとも雑念が湧いて集中が途切れてくるとそれに気づけるようにはなった。

でも、聴くばかりで本当に良いのかという疑問はその後も残った。ライターなどが取材対象にインタビューしたり、カウンセラーがクライアントの話を聞くのならば、ひたすら聴くだけというのはあるかもしれない。しかし、普通の人との会話の場合、聞いて受け取るばかりでなく、自分も何かを意味あることを届けなくては対等でないような気がしてたのだ。

そこに登場したのがこの本の「聴きポジ」である。聴きポジとは著者の造語で「聴き手のポジション」を指す。話を受け取るばかりで与えることがないからといって、聴き手のポジションは貢献しない立場では決してない。むしろ話して与えるよりも貢献度が高くなる時が多々あるとのこと。なぜなら、人は話して理解されることに喜びを感じるからだ。

だから、相手の話をよく聞いて、それを深めたり広げたりできる人は、面白い話をして場を盛り上げる人と同じくらい貢献度が高い人なのだそうだ。

そう言われると、俄然実行したくなる。

本の中では、美容師さんとの一コマが例にあり、私もちょうど髪を切る予定があったので、やってみた。

もう10年以上お世話になってるベテラン美容師さんは、そもそも話し上手なので会話に不自由したことはないのだが、今回は敢えて聴きポジを意識して話していたら、いつも以上に面白い深い話を聞けた。自分はほぼ何も話してなくて申し訳ないなあと思ったのだが、話さないことで貢献できるのだから聴きポジとは良いものである。

そして、先日あった親戚の葬儀でも、聴きポジの楽しさを実感した。お清めの席で、20年くらい会ってなかった年上の従兄弟と相向かいの席に座ったのだが、聴きポジに徹して、相手の話を聞いては受けたり質問してたら、めちゃくちゃ面白い話が聞けたのだ。

またしても聴くばかりで自分は何も面白い話をしてないのだけど、従兄弟も楽しそうにしてたので互いに良い時間が過ごせたのではないかと思う。

聴きポジ、私のように場を盛り上げられない変わり者にはすごくありがたいポジションである。これからもっと「聴く」を磨けたら良いと思う。






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