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切り株の森

その一帯は切り株の森と呼ばれる。

人はいつ何時も、人にとっての便利さや豊かさ、自己満足を求め、木という木を根こそぎ引き抜いていった。

やがて大地はアスファルトで塗り固められ、ビルが林立していった。

でも、その一帯の木々だけは不思議と引き抜くことができなかった。

太い幹を根元で切り倒すのが精いっぱい。気がつけば一面に切り株が広がっていた。

切り株たちは、なぜかしゃべる。

年輪とともに刻まれた記憶を、訪れた人たちに語って聞かせる。

まげを結った男たちが刀で無駄に斬り合った時代。空から爆弾が降ってきて、多くの命がキノコ雲に奪われた時代。自制より快楽を優先させて難病を流行らせてしまった時代……。

そのたびに人は反省し、同じ過ちは繰り返すまいと誓い、結局、似たような過ちを重ねてきた。

「私たちにできるのは、そんな歴史を伝えるまで。これからは、あなたたち次第」

語りは、決まってそう締めくくられる。

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