2022年8月 一箱本屋PLOW店主が読んだ7冊
たまには、一箱本屋の店主らしいnoteも書いてみようではないか、ということで、8月の振り返りも兼ねて、今日は読んだ本のご紹介を。
今月は、普段触れないジャンルの本を読み込んだ1ヶ月だった。
これってホントにエコなの?(ジョージーナ・ウィルソン=パウエル)
エコに関する選択に迷ったとき、答えをくれる1冊。
著者は海外の方なので、日本特有の事情についてはそこまで明るくないのかな?と感じる部分もあったけど、環境に優しい選択をしていきたい方にはぜひ手に取ってほしい。
特に、オーガニックについてのページは興味深かった。
科学肥料を使った作物栽培が土壌のバランスを崩し、生態系を脅かすのだそう。
普段、使い心地のよさから、オーガニック化粧品をメインに買っていたけど、オーガニックを選択する意義がガラッと変わった。
チーム・オベリベリ(乃南アサ)
北海道・十勝開拓のさきがけ「晩成社」の一員として、帯広の開墾にたずさわった「渡辺カネ」をご存じだろうか。
カネを中心として、その夫の勝、カネの兄銃太郎の、帯広開拓での苦闘の日々を描いた小説が「チーム・オベリベリ」。
以前訪れたとき、現在の帯広は、道路が広々としていて街も開けた印象だった。そんな帯広を開拓した女性、これは読んでみたい……。
乃南アサさんの本は全然読んだことがなかったけれど、この表紙とストーリーに惹かれ、気づいたらレジに持って行っていた。
政府の冷たい対応、バッタの集団、作物の不作、開拓民の不和、次々に問題が噴出する中、武家の娘であったカネがだんだんたくましくなる姿に、自分も背筋が伸びる。
9月は下巻を読み進める予定。
1冊のノートが「あなたの言葉」を育てる(川上徹也)
自分の語彙を増やしたいな〜とモヤモヤしているタイミングで、湘南天狼院書店で発見し、思わず手に取った。
帯の「伝え方を覚えても響かない。それは、自分のことばがないからだ。」にグサッと刺された。いや本当にそれ。
表現を調べて使ってみるも、自分のものになった感じがない……。
語彙少ない・使えない問題の解決の糸口になりそうな1冊だ。
言葉を知るだけではなく、考え、自分のものにしていくプロセスが、わかりやすく実践しやすい形で紹介されている。
作者も自らつっこんでいるけど、1冊のノートといいつつ実際は3冊を使っているらしい。
もちろん1冊にまとめてもOK。わたしもさっそくノートを用意してはじめたところ。
PERFECT PHOTO RECIPES BOOK(野寺 治孝)
「写真の撮り方」みたいな本ってあまり好きではなくて、ほとんど買わない。
しかし「PERFECT PHOTO RECIPES BOOK」は店頭でひとめぼれ。
野寺さんの撮る空気感が、わたし自身の「撮ってみたい」とぴったりフィットして、捨てページがない!
マクロレンズの使い所、撮影の心構え、視点、とにかく勉強になることだらけ。押し付けがましくない文章の感じも、カジュアルに何回も読み返したいと思わせてくれる1冊だった。
余談だけど、カメラ雑誌ってなぜか高圧的に感じる文章が多いんだよな……。カメラをやっている方の印象を聞いてみたい。
ポンコツなわたしで、生きていく。(いしかわゆき)
みんな大好き(?)ゆぴさんの2冊目の本!
筆者のゆぴさん(いしかわゆきさん。わたしはこっちのほうが馴染みがあるのでこちらで呼ばせていただく)は、ご本人曰くポンコツらしく、ポンコツな筆者の生存戦略を紹介した本。
読みやすく、なんかしんどいな、ってときに読むと、肩の荷がすっと軽くなる。
『「お金」にも「仕事」にもならなくていい』って、言われてみればその通りなんだけど、いつのまに好きなことを「仕事にしなきゃいけないんじゃないの?」と思っていた自分がいた。
「好きなら続ければいいし、やめなければいつかなんとかなる。」といったことを書いていて、たしかに……。
さらに、ゆぴさんは、「嫌われてもいい」「自分を偽らない」方が結果的に自分が生きやすくなると。わたしはどちらかというと、八方美人タイプ(意見を言うのが苦手、とも言う)。
求められるキャラを作ってしまいがち。でもそれが辛いときもあるのよな。
素の自分(ってどれなんだ?って気もするが)をもっと出したい。頭をバッチコーンと割られた感じだった。
緑の歌 -収集群風-(高 妍)
夏は、漫画が読みたくなる。
暑くて頭が働かないから、絵があると手に取りたくなるけど、結局深読みし始めるので、頭をうんうんうならせながら読んでいた。
台北で暮らす主人公の緑は、はっぴいえんどの「風をあつめて」を聞いたのをきっかけに、日本の音楽や文化に興味をもつ。
大学に進学し、バンドマンの南竣に出会って、細野晴臣や村上春樹を知り、彼女の世界が広がっていく様子を描いている。
わたし、実は大学時代、バンドをやっていたので、なんだかものすごくハートが痒くなった。ああ、この距離感、知ってる……。なんか恥ずかしい。
絵の美しさに息を呑むぜ、ふうう。
どこかで見たことがあるな、と思ったら、作者の高 妍さんは、村上春樹「猫を棄てる 父親について語るとき」の表紙・挿絵を担当していた方だった。
実在の楽曲がたくさん出てくるので、プレイリストもご用意しました。
ぜひ読書のお供に……。
ラフ(あだち充)
わたしがあだち充先生推しなのは、知っている方は知っているかと思われるのだが、「ラフ」を読み返して、あだち充先生はやはり天才かと。
終わり方がきれいすぎるんだよお……。
主人公の圭介は水泳の選手で、ヒロイン亜美は同じ高校の飛び込み選手。2人の家は和菓子屋で、ライバル関係。
しょっぱなから圭介のことを「人殺し!」なんて言っていた亜美だけど、お互い本当の姿を知って惹かれていく。まるで、現代版ロミオとジュリエット(作中でもそんなネタがある)のよう。
個人的には、亜美ちゃんが、さわやかにモテてるのがいいなあ、と。
あだちヒロインは、タッチの南ちゃんみたいに自分でかわいいのわかっててやってるよね?ってタイプの子が割といる。
亜美ちゃんもたぶんそうなんだけど、それをサラっと流している感じがいい(そんなことないかな?)
9月は積み本を消化しよう
まあまあ本を読んでいたはずなのに、消費と需要のバランスが悪いので積み本が増え続けている。9月は積み本を消化する。
と言いながら、今日も1日「あやかしトライアングル(矢吹健太朗)」を一気読みしてしまった。だって、お色気ラブコメ好きなんだもん(これでも30代女性)。
普通にバトルシーンにキレがあるし、ギャグとシリアスのバランスが抜群なんですよね。表情の繊細さとか、お色気抜きで見入ってしまうわ。さすが矢吹神……。
こうやって、積み本は増えていく……。本の感想もお待ちしています!