過去
幸せが続くわけなかった。
根っからのネガティブとビビりだ。
いつからだろうか。
幸せなことがあると不安になった。
不幸がくるぞくるぞと常に警戒した。
幸せより不幸の数を数えた。
中学の下校中、
真冬の夜の公園を歩きながら
"寒い"
そう思ったけれど、
"あ、でも心の寒さより全然ましじゃん"
そう思ったらなんだか温かく感じたのを
鮮明に覚えている。
夜はよく泣いた。
呼吸が詰まって苦しくて目覚めるような
怖い夢ばかりみた。
いっそのことぜんぶおわらせてしまおうか。
そんなことを考えて、それができない自分に
また泣いた。
愛されるわけがなかった。
小さな初恋や、ちゃんと好きを知った恋の相手は
ことごとく私の大切な友達と繋がっていった。
別に悲しくなかった。
そりゃそうだよなと思った。
私の周りにいる友達はみんな
どこかしら愛らしくて、私なんか同じ土俵に立てないような素敵なところがあって
きらきら眩しかった。
だから当たり前だと思った。
私なんかが好きな人と両思いになるなんて
天地がひっくり返ってもありえなかった。
そんな私にも、思い出すと非常に胸糞悪いが
付き合おうと言ってきた人がいた。
長距離恋愛だった。
こんなにも自信がない私だ。
案の定依存した。
その人とのSNSのコミュニケーションが
全ての心の拠り所になった。
一生続く関係だと信じ込み錯覚した。
その拠り所はいつの間にか架空だった。
それに気がついた時にはもう遅かった。
"私なんかが愛されるわけない"
に、確たる証拠が加わり、拍車がかかった。
そこからは酷かった。
全くモテない訳ではなかったことが悪因になり
泥沼だった。
墜ちていくとはまさにあの感覚だった。
そんな時、彼に出会った。
同じ学校で塾も同じらしかった。
そんな彼は手を振るわせながら私に映画のチケットを渡した。
令和最初の日。コナンの映画チケットだった。
帰り道、練習したのかな、と思うような不器用でベタな告白のセリフをプレゼントしてくれた。
沼の中にいた私は自分の気持ちなんてもうどうでも良かった。
どうでも良かった?
いや違う。
自分の気持ちの探し方をしらなかった。
つまんなくなければ相手は誰でもよかった。
でも、
そこからが私の幸せの始まりだった。
女の子が得意ではなかったらしい彼が、
これでもかというくらい溺愛してくれた。
笑顔が苦手だった彼が、愛おしい笑顔で見つめてくれた。
私のお願いはなんでも聞いてくれた。
私が愛されるなんて、
信じられなかった。
大切にしてもらっていること、
頭では分かっていた。
でも心の奥底が、
そんな訳ない、そんな訳あるはずない、と
鳴り止まなかった。
信じられなくて、
試すようなことを何度も何度もした。
その度彼は真剣に向き合ってくれて、
自分の愚かさにハッとする。
そしてまた泣いた。
彼が温かく運んで手渡してくれた好意を
私は何度も振り払って地面に叩きつけた。
たくさん傷つけた。
それでも隣にいてくれた。
これでもかというくらい褒めてくれた。
甘やかしてくれた。
普段から感情表現が苦手だった
彼の涙を初めて見たのは、
私が彼以外の付き合っていた人の話をした時だった。
私が他の人との時間が在った事実が辛いと
彼は泣き喘いだ。
本当に苦しそうに泣く彼の呻き声を聞きながら
私は心底愛を知った。
この人は絶対に傷つけてはいけない人だ。
絶対に信じなきゃだめだ。
そう悟った。
私はこんなに愛されていたんだ。
その時やっと私の心の奥底が愛を知った。
彼の愛が私の価値を保証してくれた。
そうして少しずつ私を信じられるようになった私は、
私の気持ちに目を向けられるようになった。
それが、私が私を見つめられるようになった
きっかけだった。
あれから約4年ほど経った。
あの頃の苦しさは
思い出そうとしないと思い出せないほど
私の心の中身は変化した。
苦し涙はほぼなくなった。
最近では感動の涙ばかり流しているし、
友達とわいわい楽しい夢ばかり見る。
悪夢を見るのは体調が悪い時くらいだ。
周りの気持ちばかり想像して優先してしまう癖は多少抜けないが、
同時に自分の気持ちを考えられるようになった。
人に甘えられるようになった。
以前の私は、人に甘えるってのがどんなことなのかまるで知らなかったように思う。
今は彼にわがまま放題甘え放題で
ある意味迷惑をかけている。
自分に少しずつ自信を持てるようになった。
多少どっかですっ転んでも
私が胸を張れることなら彼が味方でいてくれる。
間違っても大丈夫。
そんな積み重ねが私を強くしてくれた。
そのすっ転びが経験になり、経験が学びになり
学びが私に自信をくれた。
そんな幸せが当たり前になった。
だからこそ
この幸せが当たり前じゃなかったことを忘れたくないと、
メモアプリの片隅に残していた過去の記録を
今ここに記した。
メモアプリの方の記録はもう、削除しよう。
P.S.
今でもたまに悪い癖がでる。
本当はもう愛されてないんじゃないか
本当に時々、こんな幸せなことに怖くなって
試すようなことを言って彼を傷つける。
弱くてごめんね。
まだあとほんの少しだけ
少しだと思うから。
こんな私を
いつもありがとう。