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無限の彼方へ さあ行くぞ
特にバッキバキのサイクリストという訳でも、あのブランドの“サドルが”とか、“フレームが”とかいう細かい知識もこだわりもある訳ではない。
(ま、出来ればちょっと前傾姿勢で漕げるくらいのシティサイクル推奨といったところ)
チャリに乗るのが大好きだ。
チャリと共にかっ飛ばすのが大好きだ。
バスや電車に乗って人に揉まれたり、気を使ったりする必要も無いし、約束時間ギリギリに目的地の真ん前に滑り込む事だって出来るし、「あっ、終バスが」とか言う必要も無い。
免許を持たない身にとっては必須アイテムであるばかりか、漕いでいるその間、前から前から次々とやって来る新しい風をぐんぐん突き抜けていくようなあの絶対的な解放感がたまらないのだ。
向こうに見える赤信号のちょっと手前からゆっくりゆっくりブレーキをかけながら、前に居並ぶチャリ軍団の後方からそぉっと近づいて行って、青信号に変わったと同時に一気に外からまくるという荒業を成し遂げた時の爽快感。
まだまだ若気の至りだった頃は、裏の山に放置されて金網に引っかかっていた錆々のママチャリを引きずって持ち帰り、知り合いに“お空の色”に塗装してもらった。(素晴らしく澄んだ水色だった)
雨の日も風の日も雪の日も晴れの日も半径10kmぐらいの距離は平気で爆走。
雨の日には叩きつける雨粒に全身を洗われ、向かい風に歯を食いしばり、煽り風にはひゃっほーと滑り乗り、雪の日にはユニコーンの“雪が降る町”を大音量で歌いながら。
子供が生まれてからは、イカした子乗せチャリを探しまくり、わざわざ関東の方から高い送料を払ってネットで取り寄せた。
前カゴに娘を乗せて、公園の急勾配の半月橋を力を振り絞って登りきったら、ジェットコースターよろしく二人で髪を後ろになびかせながら一気に走り下りる。(彼女はいたく気に入ったらしく繰り返しこれをやらされる羽目になり、太ももがパンパンになる)
前カゴが用無しとなった15年前の秋、また愛車を購入した。名を「女神号」といった。
(店主がそう言ったのだから間違いない)
予期せず大病というものを抱え込んでしまっても、ずっとこいつは相棒でいてくれた。
ところが10年目の寛解という節目を迎えた去年の春、その1週間後にあろう事かまた別のものを抱え込んでしまう羽目になり、サドルにまたがることも、漕ぎ出すことも厳しくなり、お陰でわたしもあいつもすっかり心も体も錆びきってしまった。
結果、あいつは(色々詳細は割愛するが)丁度秋の気配が匂い出した頃、姿を消してしまった。
今
一進一退、色々と弊害はあるものの、治療の効果が少しずつ出てきたお陰で、年末頃からスーパー位までならサイクリングを楽しめるようになった。
そんな、気分が沸き立っている時に近くの自転車屋で新たな出会いが訪れた。
真っ白なミニチャリ。良い塩梅。
さあミニチャリよ。
これからやってくる艱難辛苦に
共に立ち向かおうぞ。いざ行かん!