この閉塞に風穴を〜2020ヨコハマトリエンナーレ
ヨコハマトリエンナーレを初めて見た前回、3年前の2017年には、ヴェネツィア ・ビエンナーレとの、何もかもあまりの違いに戸惑うばかりで、純粋にアートを楽しむところまでいけなかった。それは、今から思えば、展覧会そのもの対する目線というよりも、自分自身がヴェネツィア でなくそこにいるという喪失感や戸惑いをそのまま反映していたのではないかと思う。
ウィルス感染拡大の影響を受け、ヴェネツィアは(今年は建築展だったけれども)一旦開始時期が延期されたあと結局、丸々来年に延期されることになって、その中で、横浜トリエンナーレの開催決定の告知は、何かそう、乾ききった砂漠に降る恵みの雨のような、いや、長いトンネルの向こうから差し込む明るい光のような、そんな風に思われた。
チケットを予約して、当日少し並んで、横浜美術館に入ってその目の前の展示を見た・・・いや、最初の展示に囲まれた時の胸の高まりは、うまく言葉では表現しきれない。今回のヨコハマトリエンナーレをみるにあたって、あえてあまりヴェネツィアのことは考えないようにしていたにもかかわらず、ヴェネツィア ・ビエンナーレみたいだ、といろいろな意味で、大きな喜びを感じながら見た。
それはおそらく、ラクス・メディア・コレクティヴというインド出身のアーチスト集団によるディレクションによる展覧会であったことも大きいのではないか。「AFTERGLOW」という、まるで今年の世界の現状を予見したかのようなテーマと、作品のセレクションや展示はもちろんのこと、閉塞感に押しつぶされそうであったこの半年ほどの生活の中で、とにもかくにも外からの風というのは気持ちがよかった。
・・・などと、なんとなくその時に感じたことなどを思い返しつつ、写真を引っ張りだしてみて、何もわかっていない、何も掴んでいない自分にまた愕然とした。
タダでさえ乏しい思考回路ですら全て溶け出すような猛暑の中、私が見に行った日は、その数日前に「小さなお子さまも(遊んで)楽しめて、しかも映える!」とSNSで話題になった直後だったとかで、家族づれ、それも小さなお子さんたちがたくさんいらしていた。作品の意味だの作家のメッセージだの細かいことはわからなくても、子供たちもたちも含めてアートに触れることで何か、「おもしろい」と思うことができれば、それはそれでいいのでは、などとその時は思っていたけれど、そんな自分も、全く同じだと気がついた。インスタレーションや体験型など、接触型の作品も多い現代美術展が、こうして無事開催されたことに感激して、それ以上前に進んでいないことに。
ヴェネツィア ・ビエンナーレで、定点観測をしてなんとなく追っていたつもりだった現代アートが、実はあいかわらず何もわかっていなかったことに。
現代アート、やっぱり難しいな・・・。今年のヨコハマトリエンナーレは、今日まで。
2020 ヨコハマトリエンナーレ
「Afterglowー光の破片をつかまえる」
https://www.yokohamatriennale.jp/2020/
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Fumie M. 10.11.2020