「縮小都市の挑戦」 矢作弘
岩波新書 岩波書店
「縮小都市の挑戦」。同じ自動車産業で縮小都市化したデトロイトとトリノを取り上げ、その比較…というこの本の内容。その違いは自治体政府が都市政策に積極的か否かによる。
デトロイト
エッジシティは、デトロイトの例で、都市域郊外に富裕層や工場・オフィスが立地し、母都市の高い税金を避けて新たな地方公共団体を成立させる。だから産業(ここでは自動車産業)自体が蘇っても、地方自治体の経営はよくならない…という。でも最近は初期のエッジシティに(ここでは)黒人が流れ込んできた、ともいう。
(2019 11/06)
デトロイトでは、一つ一つの地点や通りでは民間による立地が見られるが、都市圏全体を調整する主体がいない。同じくアメリカ東北部の「赤錆都市」クリーブランドとも比べても、その調整の仕組みが小さい。
トリノ
トリノでは南部からの労働者が流入。フィアットとの密着関係「フィアットによいことはトリノによい」。
今読んでいるところは凋落のところで、このあと都市内部再編成の話が出てくる。
(2019 11/11)
トリノのところは、イベント都市、現代美術都市(美術館6つくらい)、映画都市、大学都市とポストフォーディズム都市を目指す。イタリアはローマは地中海性かつファシズム性、ミラノはローカル至上主義(地元思考)、トリノは旧サヴォワ家と国境近いこともあってグローバル思考…なのだという。あとは、トリノはニーチェお気に入りの都市で、倒れそうな馬に鞭をくれる場面に遭遇して発狂してしまった広場があるという。
日本の事例、そして競争から連携へ
福知山始めとする京都府北部地方と富山市と射水市の事例。大型店では仕入れ先から金融、運送まで地域外部資本で賄うことが多いので、中心市街地の小規模店舗の客を奪う以外にも地域経済に影響を与える。また、都市内部地域は減少しつつあるが人口はまだ多いため、食糧スーパーなどの隠れた需要が見込まれるという話。
とにかく、この本の一番の主張は、都市間が競争するのではなく、連携と機能分担が必要ということ。
(2019 11/16)