「ジュスタ」 パウル・ゴマ
住谷春也 訳 東欧の想像力 松籟社
ついに出た? ベッサラビア(モルドバ)出身の作家。
移住してルーマニアの作家となる。東欧革命時にはパリにいたらしい。体制や対外勢力に妥協しながら生きてきたルーマニア人の中で「屈しない男」として知られている。第二次世界大戦時、ユダヤ人が残虐行為をしていたと書いて物議を醸す。反ユダヤ主義ではなく、妻はユダヤ人なのだそう。
(2021 04/18)
冒頭、パリの橋から
冒頭近く、こんな感じ。最初の段落の交差点付近に、この小説の重要な場所の一つ、文学学校がある。
(2021 04/25)
暴露集会の応酬
ゴマの自伝的要素もあるこの作品。この言葉は文学部と文学学校との「ダブル」合格の時に、(自身もシベリア送りにされた経験を持つ)父親が言った言葉。体制側の意図に反して行動することはできる…というメッセージ。果たしてどうか。それはこれから…
次は文学学校で延々と繰り返される暴露劇集会の一つ、グレゴリアンの告発のところ。飛び飛びで引用。
2、3番目の「そうして特に」は、太字になっている。最後の「そうして特に」は何の関連もない…わけではあるまい。
今はちょうどp100、第5章まで。青春群像劇とも言えなくもない、泥沼の密告合戦中のちょっとしたロマンス場面まで…
ハンガリー動乱とルーマニア
1956年10月、ハンガリー動乱。隣国ルーマニアでも動き出すかに思えたが…というのが背景。
p104から108にかけてのところ、(ルーマニアの)ハンガリー人のところに一緒に抵抗運動をしようと持ちかけたルーマニア人が逆に侮辱され、それをルーマニアのセクリターテ(国家警察?)が利用する、という話が出てくる。
小説冒頭、ジュスタことトリアが語り手ゴマ(この作品に関しては大まかにイコールでもいいだろう)にどうすべきか聞くのが11月始め。その月の自作朗読で語り手は逮捕され、続いてトリアも拷問を受ける。その拷問の要素を元恋人(トリアも含めて3人いたらしい)ディアナから聞くのが小説後半。そのディアナの言葉。聞き手は語り手。
ミッテラン大統領は、フランスに亡命した二人の作家、ミラン・クンデラとパウル・ゴマにフランス国籍を与えようとした。クンデラは受理し、ゴマは拒否した。クンデラはフランス語で作品を書き、ゴマはルーマニア語で書き続けた。この二人、お互いをどう思っていたのか少し気になる。
(2021 04/29)
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