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「ことばの起源 猿の毛づくろい、人のゴシップ」 ロビン・ダンバー

松浦俊輔・服部清美 訳  青土社

(進化心理学から。そもそも言語は毛づくろいなどの身体接触的コミュニケーションの代用品であった。接触回数が減ることによって、ゴシップという形でその代用をするようになった。だから言語による概念形成、科学の発達、言語芸術などは副次的な意味しかなかった、という論旨らしい)
(2016 10/30)

毛づくろいの理由


「ことばの起源」も少しだけ。
猿等が毛づくろいするのは衛生面だけでなく、脳内麻薬物質が出て気持ちよくなるからだという。それにしても起きている時間のうち10~20%の時間を毛づくろいに費やすのは長い。これはそれだけ長い時間をかけてその群れにいることを示し、すぐ群れを去るフリーライダーではないことの証明としての意味があるという。人間社会でも動物社会でもある婚資というシステムも同じ効果をもつ。
(2016 11/04)

12、150、そして1000


標題の数は群れの適正数。緊密な友人親類関係12人くらい、仕事などの組織構成員150人、記憶の限界1000人くらいと三段階。
重要なのは真ん中の150で、これは他の動物の群れに相当し、これを越えると直接対人関係を越えたなんらかの官僚組織とルールが必要になる。ただ他の類人猿の群れの構成数で当てはめると、仮に毛づくろいにすると全覚醒時間の40%を毛づくろいに当てる計算になる。それを低減するためにことばが生まれたのだ…という話。ただ、ことばがなんらかの他の要因でできたから、群れの数が多くなったともいえるのでは? 
(2016 11/05)

それから最後にこんな詩。

 思慮深い情熱をかきたてる 黒い強靭な力に救われたいと願う灼熱の花が 裸の意志に立ちはだかる 僕を絶望地帯に追い込む 
(p116)


 RACTERというコンピュータープログラムで作られた詩、だとか…
(2016 11/06)

ことばの起源3種盛り


 「ことばの起源」その説には3つあるという。身振り説、音声(警戒音など)説、歌説。著者がとっているのは音声説。それから中で紹介されていたホメロス時代の著作からその時代の意識生活を探るという本、面白そうなのだが、訳が出ていない… 
(2016 11/10)

方言の変わる速度と人口密度


方言…というか言葉の変化の仕方はよそ者またはフリーライダーを検知できるような具合になっているらしい。よそ者の修得が難しく、しかもある一定の時間で微妙に変化していく。また、その多様性は人口密度が高いほど多くなる。現代に応用するにはマスコミとか教育とか割り引く要因はあるけど。でも、いわゆる業界ことばとか会社や学校でのことばなんてその現れなのかも。
この本、わかりやすいのだけど、話題いろいろ飛ぶんだよなあ(笑)

進化はやりくりの産物


(タイトルは解説からいただいた) というわけで、「ことばの起源」を読み終えた。

 (進化が)一時しのぎのプロセスであり、相容れない目標をいくつも抱えながら最善を尽くそうとした際の一連の妥協なのだ。我々は進化の遺物に途方にくれている不完全な生物であり、一八世紀の進化論者たちが神の創造物である証拠として解釈したような完全な設計からはほど遠い。
 (p269)


もう「進化」という言葉は誤解招くから使わない方がいいような気も。
 第10章後半くらいからは、パーソナルネットワークを利用した研究を交えて展開。
(2016 11/11)

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