アルザス地方料理 その2
シュークルートの作り方
私は勿論、私の弟や店の連中も大変お世話になったアルザスのシェフがいます。コルマール近くのボーレンベルグというオーベルジュのガブリエル・メイヤーシェフ。残念ながらもう亡くなってしまいましたが、本当に心の温かいシェフでした。葬儀には弟しか参加できず、後にお墓参りした時は号泣してしまいました。ガビーさん(ガブリエルの愛称)は今も心の中にいます!!
このボーレンブルグはコルマール近くにあり、車でブドウ畑の中を延々と走っていくと忽然と現れます。アルザスの地方料理レストランを営業しながら、オーベルジュとして宿泊施設もあり、広大なブドウ畑でワイナリーも併設、蒸留所ではアルザスお得意の透明なオードヴィ(アルザスではシュナップスともいう)も多種作っています。単にレストラン・オーベルジュ・ワイナリーというより、このボーレンベルグが店名なのか、この村の地名なのかよくわからない・・・。ドイツから休日を楽しみに来るお客様が多く、このレストランの売りは何といってもシュークルートやベッコフなどのアルザス地方料理です。
このガビーシェフのシュークルートの作り方を伝授します。まず、グレスドワ(ガチョウの油)を温めそこにロリエ(月桂樹)、ジュニエーブル(杜松の実)、コリアンダーで香りを出し、オニオンのスライスを入れます。少し炒めたら、ビールとリースリングを入れ少し煮詰め、水で洗ってざるにあげたシュークルートをどっさり入れます。蓋をして40~50分、弱火で煮ます。これでシュークルートの準備はオーケー。ここに別鍋で豚肉のブイヨンの中で温めた様々なシャルキュトリーとポテトを加えたら出来上がり。マスタードを添えて熱々をどうぞ!!
Baekenofe ベッコフ
もう一つアルザスの素晴らしい地方料理をご紹介します。Baeckaoffaとも綴り、他の料理書を見るとまた違う綴りが出てきたりして迷います。アルザス語(ドイツ語に近い)なのでこれでベッコフと読むのが良くわかりませんが、、この料理名が意味するのは ‟ベック・オフ”=‟パンの竈(かまど)” 昔々、、、薪(まき)のパン焼き窯が村に一つしかなかった頃、農民たちはみんなで薪を拾ってきて共同でパンを焼く。するとパンを焼いた後の残り火がもったいないので、この熱を使って野良仕事の間に出来上がる料理を編み出す。こんな料理がフランス各地にあります。ブフブルギニオンやカスレ―も同様でパン屋さんの残り火で作ったとか。同じ方法で作っているのに、これらの料理はそれぞれ気候・風土の違う地方の産物を使っているので、それぞれ全然違う料理になっています。そして何より、素直に美味しい!素朴というだけでない奥深さがあり、本当によくできた料理だと思います。
このベッコフの定義の一つに、アルザス北部の村、スフレンハイムで焼かれたテリーヌオーバル(楕円形の器)で焼かなければならない、というのがあります。このスフレンハイムは写真のようなとてもかわいい器を作っている陶器の小さな村です。窯元が軒を連ね、素焼きで手作り。それぞれの店によって絵柄や色などが微妙に違い、お気に入りの店を探すと本当に楽しいです。
私は20年ほど前に、この村の焼き物を輸入して売っていたことがあるので、実はまぁまぁ詳しいです。当時パティスリーとフラワーショップを複合させた店をオープンした時、どうしてもスフレンハイムのかわいい器を売りたくって買い付けに行ったので。。。なのでこのベッコフという料理にも、人一倍思い入れが強いです。次回はこのベッコフの作り方を、毎日何台も何台も焼き続けていたガビーシェフのレシピでご紹介します。