組織内会計士ウェブサイト「活躍事例」に掲載されたアンケートです
組織内会計士ウェブサイト「活躍事例」に掲載されたアンケートの文面です。転職直後に書いたものですので文面は当時の情報のままですが、いま見ても熱い思いが伝わってくるような感じがします。
監査法人から事業会社に転職する際の面接や履歴書に書けそうな文章もありますね。
いまはこのアンケートが記載されたウェブサイトは見られなくなっているようなので、自己紹介を兼ねてここで公開します。
会計士目指した経緯をおしえてください
「Men for Others(人のための人であれ)」という中学・高校の教育方針に影響を受け、将来は高いレベルのサービスを提供し、人や社会に貢献できる職業に就きたいと早くから考えていました。そんな折、将来の進路を相談した際に父からプロフェッショナルとなる道を勧められ、プロフェッショナルになればMen for Othersの精神を実現できると確信し、高校卒業前に自分の進路を「公認会計士」に決定していました。
プロフェッショナルと言えばすぐに公認会計士が思いつき、他の選択肢は想定していませんでした。特に根拠もなく、自分にはこれだ!と強く感じたことを覚えています。公認会計士試験二次試験(当時)には合格するまで3年かかってしまいましたが、楽しく勉強できたように思います。
監査法人ではどのような業務に従事されていましたか
監査法人には約9年間在籍しており、主に会計監査に従事していました。パブリックセクターに所属していたため、金商法監査、会社法監査の他に、公益法人監査、国立大学法人監査、独立行政法人監査にも従事していました。それぞれに異なる会計基準があり、同じ監査といってもバラエティーに富んでいたと思います。
インチャージ(現場責任者)として担当したクライアントの規模はスタッフ2名程度の規模から総勢20名近くが関与する規模まで幅広く、規模の異なるチームを管理する経験を積めたことは非常に勉強になりました。監査業務は限られた時間の中で監査手続を完了させなければならないため、この頃に身に付けた優先順位の付け方等の効果的かつ効率的な仕事の進め方は今でも生かされていると思います。
また、監査業務以外ではアドバイザリー業務の提供の準備として海外の事例を調査したり、独立行政法人の財務諸表を英訳するといった英語を使用した業務も担当していました。
監査法人から組織内会計士になった理由をおしえてください
監査法人に入所した時に、漠然と「35歳で転職する」という目標を掲げました。目標を掲げてはいたものの、監査業務は非常に充実しており、転職の目標については意識することなく過ごしていました。毎年のように変わる会計基準・監査ツールのキャッチアップは新しい物が好きな自分にとっては非常に楽しく、また会計監査の現場で普段行けないような場所に行けたり普段見ることのできない物を目にしたりする機会が多いことは仕事の醍醐味でもありました。
転職について意識することなく数年が過ぎたわけですが、監査法人内部で英語の研修を受講した頃から自分の意識が少し変わってきたことを覚えています。その英語の研修は内容のハードさで有名で、通常の監査業務をこなしながら山のような課題に取り組まなければならず、なんとかやり遂げた後には「自分も英語で仕事ができるかも」という少しばかりの期待が生まれました。監査法人内部でも英語で仕事をする機会がもっとあったかもしれませんが、監査にとどまらないサービスを提供し、世界に通じるAccountantになることを目標に、監査法人を飛び出してグローバル企業に転職することを決めました。
縁あって、現在の会社に入社することができました。偶然にも、35歳で転職するという目標が叶ったことになります。
組織内会計士としての略歴をおしえてください
監査法人を退職後、2015年1月に今の会社に入社し、監査役室で内部監査に従事しています(2016年当時)。
現在の仕事内容についておしえてください
内部監査を行っており、監査という意味では監査法人にいた時と進め方は似ています。弊社には内部監査を行うための監査プログラムが整備されており、私達はその監査プログラムに記載されている監査手続に沿って監査を実施します。監査プログラムは例えば購買や在庫管理といったプロセスに沿って用意されています。なお、弊社では監査の組織はグローバルの組織であるため、監査プログラムは全て英語で記載されており、監査調書も英語で作成する必要があります。
監査の流れは以下のとおりです。まず初めに全体的なリスク評価を行い、監査を行うプロセスを決定し、年間の監査計画を立案します。その監査計画に従って、監査を実施していきます。原則として、監査期間は2週間、月に1つのプロセスが対象となります。監査手続としては、関係各所への質問や証憑の閲覧といったものが主であり、会計監査と似ていると思います。2週間の監査期間終了後、監査結果を監査報告書としてまとめ、指摘・改善事項を伝える、という流れです。指摘・改善事項については、改善されているかを確かめるためのフォローアッププロセスが用意されており、結果を必ず確認しなければなりません。月に1回2週間ということでスケジュールには余裕があるかと思いきや、監査報告書についてのグローバルからの質問対応や次の監査のための準備、監査調書の英語での作成、と意外なほど時間が足りないものです。
監査の組織がグローバルであるため、他国の監査チームと一緒に監査を行うこともあります。私は2016年の7月にシンガポールに出張し、シンガポールチームと共に内部監査を行いました。他国の監査チームと顔を合わせることができ、日本と異なる仕事の進め方を見る貴重な機会を頂けたことに感謝しています。
また、通常の内部監査の他に、グローバルでの協働作業もあります。最近では、コンプライアンスのマニュアル改訂作業を世界各国のメンバーと行いました。私はUS、メキシコのメンバーと同じチームだったのですが、1カ月の間に電話会議を4~5回行い意見交換をして改訂作業を完了させました。時差が10時間以上あったため、深夜や早朝の電話会議となったことが肉体的に大変でしたが、皆の意見を反映してたたき台をすぐ作ってくる、会議の時間は決して延長しないといった彼らの姿勢を身近で感じられたことが勉強になりました。
組織内会計士として公認会計士であることの強みとは何でしょうか
会計や税務の基本的かつ体系的な知識が身についているということが大きな強みになると思います。例えば売上の実現主義の考え方について知らなかった場合、意図せずして不正な売上計上を行ってしまうこともあり得ます。基本的かつ体系的な知識が身についているため、今までにない新しい種類の取引が発生した場合に応用が利くと思います。
また、多少細かい論点であっても「調べればわかる」状態ということは大きなアドバンテージになるのではないでしょうか。全ての事を記憶していることは難しいですが、何か注意しなければならない点に気付けるかどうかはやはり専門家としての知識が必要不可欠だと感じます。
監査法人経験の強みとは何でしょうか、又は監査法人の経験が今に活かされていると思うことはありますか
監査法人において監査に携わるなかで想像力が磨かれたことが強みになっていると思います。想像力とは、仮説をたて、気付く力とも言えます。つまり、数字という事実を見て、あるいは業務記述書を見て、「この数字になったのはこういう事象があったからだろうか?」「こういう事象が生じた場合には別のプロセスがあるのだろうか?」と、背景を想像して事実を検証していく力です。数字の背後にある事象と数字の動きが整合しないのでさらに追ってみると実は数字が誤っていたり、リスクが内部統制によってコントロールされていないことが明らかになったりと、監査にとって重要な力と言えます。監査法人に在籍していた頃も現在も監査手続書に沿って監査を実施することに変わりはないのですが、リスクが高そうなところ、怪しいところに気付く感覚については監査法人で監査を経験する中で磨かれていったと感じています。
手続書に沿って監査を実施するだけならば誰でもできますが、そこに自分なりの想像力を加え、職業的懐疑心を発揮して監査を実施し、会社に貢献してきた監査人であれば、その監査力は監査法人以外でも生かされるように思います。
将来進みたい方向はありますか。また、それをかなえるための課題はありますか
グローバル企業での、財務・経理の実務を経験してみたいと思います。そのためには、英語でのコミュニケーション能力をもっと向上させなければならないと感じています。
企業内で働く公認会計士にはどのようなものが求められますか(資質やスキルなど)
会計監査に従事しなくなったとしても、最新の情報を常にアップデートしていくような姿勢が必要だと思います。監査法人と違い、アップデート研修があるわけではないので、自分から情報を取りに行く姿勢が求められると思います。
企業内会計士になってみて感じていること、勉強になったことをおしえてください
会社という組織は様々な部門があり多様な考え方を持つ人が所属しているにもかかわらずそれぞれがうまく繋がって機能し全体としてパフォーマンスを発揮しているということに当たり前ですが気付かされ、「会社」という仕組みのすごさを実感しています。会計監査では会社の理解といっても会計に直接関わりの無いプロセスについてはあまり触れることはありませんでしたので、とても浅い理解だったのだと反省しています。
ビジネスマンとして大事にしていることは何ですか
楽観主義でも悲観主義でもなく、現実を常に見つめていること、です。
若手会計士(または受験中の若者)へのメッセージをいただけますか
監査法人にいる時は、監査という仕事が専門的な仕事であるということについてあまり気付かないかもしれません。監査業務で身についた力は他の仕事でもきっと役立ちますので、安心して監査に取り組んでください。
その他に何かあればお願いします
会計監査は人工知能で代替可能な仕事とも言われ、今後の技術の発達によって監査を取り巻く環境が変化していくことは避けられないと思います。もちろん、それは全ての仕事に言えることなので、変化を楽しみ、柔軟に対応していけたらと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?