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今さら聞けない「リハビリテーション」とは?定義の変遷3つのステージ【PTOTST必読】

リハビリテーションを学んだり、仕事として関わるものにとって、その「定義」を理解しておくことは重要です。

リハビリテーションにどんな意義や価値があるのか。
誰のために、何を行うのか。

定義をちゃんとおさえておくことで、自分が学び、働くうえでの正しい道を示してくれます。またやりがい、働きがいにも得られ、自分自身の充実感や達成感にもつながるでしょう。

社会情勢や医学・医療の発展、機器の進化にともなって、リハビリテーション医学・医療の対象となる疾病・障害は多様化。当然、当時の状況にふさわしいリハビリテーションの実施のため、その定義も移り変わってきています。

リハビリテーションの定義はこれまで大きく3つのステージに分けて理解できます。

「医学モデル」中心の時代(1900〜1960年代)

リハビリテーション 可動域 セラピスト

リハビリテーションが医学・医療的な意味をもってきたのは二度の世界大戦がきっかけ。傷痍軍人や負傷した人たちの身体的・精神的な機能回復と生活自立、社会復帰が課題とされました。

「障害者を納税者に(tax userからtax payerへ) 」というスローガンもそれを物語っています。

リハビリテーションとは、障害者を、彼のなしうる最大の身体的・精神的・社会的・職業的・経済的な能力を有するまでに回復させることである
(1942年、全米リハビリテーション評議会)

といわれるように、医療や社会福祉の専門家による措置によって障害者の能力を高めようとする「医学モデル」が主流でした。

自分の生き方は自分で決める−「QOL」を高める−(1980年代〜)

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1980年代になると高齢化の問題が社会的にも広く注目されるようになりました。医学・医療の進歩によって、これまで失われていた命が救われることが増えました。その一方で、重い障害の残存や慢性疾患の問題が注目。

リハビリテーションのあり方もこれまでの「医学モデル」から、障害者の主体性を尊重した「生活モデル」へ移行していきました

リハビリテーションとは、能力障害あるいは社会的不利を起こす諸条件の悪影響を軽減させ、障害者の社会統合を実現することを目指すあらゆる措置を含むものである。
リハビリテーションは、障害者を訓練してその環境に適応させるだけでなく、障害者の直接的環境および社会全体を介して、彼らの社会統合を容易にすることを目的とする。
障害者自身、その家族、そして彼らの住む地域社会は、リハビリテーションに関係する諸種のサービスの計画と実施に関与しなければならない。
(1981年、世界保健機関;WHO)

そこで単に機能回復や社会復帰を目指すだけでなく、その人らしく幸せな人生を歩める「生活の質(quality of life;QOL)」の向上が重視されるようになっていきました

誰もが自分らしい「活動を育む」、すべてのプロセス(現代)

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現在、広く認識されているリハビリテーションの定義は以下のとおり。

リハビリテーションは、個人の生理的、解剖的あるいは生理的な機能障害、環境の制約、個人の希望および寿命と一致した身体的・心理的・社会的・職業的・余暇的および教育的可能性が最大に達するまで個人を手助けする過程である。
患者と家族、関与するリハビリテーション・チームは、たとえ機能障害をもたらした病理学的過程が不可逆であっても、現実的な目標を設定して、残存障害(機能的制限)があっても最適な生活機能を獲得するための計画を、成し遂げるように協力する(Haas 1993)

この定義みるとリハビリテーションとは、必ずしも障害者のみを対象としていません。誰しもが自分らしく誇りをもって生きているようなすべての過程をさしています。

自分らしく生きることを実現させる手段として、「リハビリテーション・チーム」として包括的に関わることも明記されているのが特徴です。

まとめ

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以上、リハビリテーションの定義の変遷を3つのステップでまとめました。

いまやリハビリテーションは単に運動障害の回復や機能訓練、それによる日常生活の自立だけをさすものではありません。

加齢や障害をもっても、またその有無にかかわらず、自分らしく誇りをもって生きる。

そして自分の生き方はあくまで自分で決める主体性。そして自分らしい「活動」を回復させるための包括的な(身体的・精神的・社会的・職業的を問わない)プロセスです。

セラピストは現代のリハビリテーションの意味するところを理解したうえで、対象者とかかわることが肝心でしょう。

いま一度、自分は誰のために、どんな価値を提供できるのか?見直してみてはいかがでしょうか。

参考書籍



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