【旅の匂い】
書くンジャーズ日曜日担当のふむふむです。
6/30締め切りの仕事に追われ、期限を守れませんでした。
今週(先週?)のテーマは【旅の匂い】
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雨に濡れた緑の匂い
日本で嗅いだ少しほこり臭い雨特有のにおいと違って、包み込まれるような青々とした空気が心地よい。
フィトンチッドなんて言葉を知らなくても、清々しい香りが胸まで届いた。
大学2年の夏、私は一人カナダを旅していた。
明け方のまだ薄暗い街にグレイハウンドが到着すると、中央分離帯のような場所に何か大きな丸いものが見える。
しばらくして、もぞもぞと立ち上がったのはヘラジカだった。
平然と道路を歩く、その後ろで車はじっと停車する。
誰一人として気にする様子もない、当たり前の光景。自然と共存するってこういうことなのかもしれない。ゆったりと構えて、ヘラジカの移動を見送った。
今から山に戻るのかしら?それとも街なかを散歩?
私はこっそりとカメラを向ける。日本では見られない光景を焼き付けるために。
街はまだ寝静まっている。バスディーポで時間をつぶし、明るくなってから移動する。
***
まずは朝ごはんを食べないと。カナダといえばやっぱりパンケーキ。
せっかくカナダにいるのだから黄金に輝くメイプルシロップをひたひたになるくらいたっぷりとかけて。
そんなことを考えながら、目抜き通りへ向かう。
スーツケースを転がし、大きなショルダーバッグを斜めに下げて歩き出した。
こんな時間に歩いている人はほとんどいない。たまにすれ違うのはスポーツバイクに乗った人位。
スポーツは苦手だけれど、歩くのは好き。
高校時代は「えんぴつ」とあだ名をつけられるくらい、メリハリなく、ただ上にまっすぐと伸びた私だが、当時は案外力持ちで、大きなスーツケースを持ち、階段も難なく移動できた。
文字通りてくてくと歩き、お店を目指す。
決めていたお店に入ると、カナディアンの気さくな笑顔で席に案内された。
メニューを見るまでもなく、もちろんパンケーキをオーダーするつもり。かといって枚数が多すぎるのは怖いから、値段と枚数を確認。
甘い匂いとお肉の匂いが入り混じった店内を見渡して、どんな感じかとお客さんの食べている様子を見つめる。みんなそれぞれに手を動かしながら、大きな口を開けて頬張っている。
ちょっぴり不格好な形でもそこはご愛敬。そのままだと口の水分を持って行かれそうなパンケーキが、しっとりとメイプルシロップを含んで口の中を潤しながら吸い込まれていく。
お皿から手に、手から口に、もぐもぐと。
人が食べるのを見ていると、お腹いっぱいになりそうで、今度は有名なホテルのドアマンを眺めながらパンケーキの到着を待つ。
はちみつのもったりとした甘さとは違う、メイプルシロップの鼻をくすぐる感じ。
ここで当然のようにパンケーキだけでなくベーコンにもシロップをかける。なぜならそれがカナダの流儀だから。
初めて食べた時には少々違和感を覚えたものの、ベーコンの香ばしく焼けたカリカリ具合と塩加減、そしてメープルシロップの甘味のハーモニー。
ふわりとしっとりの間。
そうそう、これだった
カナダならではの味を楽しみながらパンケーキを食べる。
カナダの伝統食はなに?と聞いた私に帰ってきた答え
「チーズマカロニとパンケーキね」
今となってはパンケーキはオシャレな食べ物の代名詞だけど、カナディアンにとっては定番の朝ごはん。郷土料理とでも言うのか。
山梨でいうところのほうとうみたいなもの?
私の中でもパンケーキといえばカナダにリンクする。
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日本にいる時には考えられないほど食べられるのは、やっぱりひとり旅、自分の健康は自分で守らないととどこかで思っているからかもしれない。
朝からボリュームのあるパンケーキを平らげ、挨拶をして店を後にする。
さて、今日は何をする?
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朝の場面だけでもこれだけの旅の匂いを思い出した。それだけ印象深かったひとり旅。
あの頃書くという選択肢を持っていたら、一体どんな言葉で旅の匂いを表現していたのだろう。
カナダでの日々を思い出しながら、そんなことを考えたのだった。
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