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「お茶と言えばアフタヌーンティー」 ヒエラルキーの象徴に使われた紅茶のシーンに隠された反発心
印象的なシーンに紅茶が使われている映画というと、思い出すものの中にこの1本があります。
原作は山内マリコさん
収入、容姿、生まれ育ちで住み分けされ、階級の違う人たちとは決して出会い、交わることのない街、東京。
瀟洒な高級住宅地 渋谷区松濤に代々暮らす主人公 榛原華子
名家の箱入り娘で良家のご子息と結婚し、順風満帆に見えるものの、実は違和感を抱きながら日々を過ごしています。
地方都市の庶民の家に生まれた、時岡美紀。
猛勉強の末に受験を勝ち抜き、名門の有名私大に合格。入学はしたものの学費の支払いに苦労し、夜の世界で働くもあえなく中退。現在は夜の時代の縁故を利用し都内で働く女性です。
アフタヌーンティーが映し出すもの
二人のアフタヌーンティーでの振る舞いは、彼女たちの対比の色を濃くするシーンでもありました。
内部生にお茶に行こうと誘われ、ついた先はホテルのラウンジ。4,200円のアフタヌーンティーを前に、「あのこたちは貴族だから」とつぶやく美紀と同郷の友人、里英。
里英も富山では社長令嬢なのであるが、内部生の前では桁が違い過ぎておくびにも出せない。
内部生たちは、あちこちのアフタヌーンティーを堪能している様子が会話から伝わり、テーブル席の間には見えない高い壁が立ちはだかっている様子。
ついバイトの時給で1回のアフタヌーンティー代を労働時間に換算してしまう、地方出身者の悲しい性が痛いほど伝わってきます。
同じ場所で学びながらヒエラルキーと格差を痛いほどに感じさせる大学へ進学した二人の中には、多少なりとも慶応義塾大学卒と名乗れる憧れの世界があったはずなのに。
一方、年末年始を親族と共に都内の有名ホテルで過ごし、箱入り娘でおっとりとした印象の華子。友人とのアフタヌーンティーの席では、周りのうわさ話や会話に耳を傾けながら、客観的に彼女たちを分析するヴァイオリニストの相楽逸子の自由さに憧れを抱く。さらに階級が上の彼と婚約、結婚に至るも、古いしきたりや相手方に家柄を下に見られる違和感を抱く。
違う世界に生き、出会うはずのない美紀と華子が顔を合わせる場に選ばれたのが、やはりホテルのアフタヌーンティーでした。
あいさつのために立ち上がった美紀がカトラリーを落とした時、慌てたそぶりを見せる美紀に対し、スッと片手をあげてスタッフに対しスマートに合図をする華子。
しぐさの端々に育ちの良さから生まれる余裕が滲み出ていました。
アールグレイはストレート、ダージリンにはミルク?
ただ不思議だったのは、最初に映し出されるアフタヌーンティーの場で華子がオーダーしたのは「アールグレイ」
2度目のアフタヌーンティーでは「ダージリンのミルクティー」
アールグレイにはミルクをつけず、あえてダージリンをミルクティーでいただく。
恐らく、マナーに厳しい育ちの良い方であれば、ダージリンの繊細な香りと味、水色に対して、いきなりミルクを入れることはないはず。
この時のオーダーは、華子が上流階級の暮らしに感じている窮屈さ、心の奥に潜む反発心を表現しているものだったとしたら。
紅茶のたしなみ方一つが大きなキーポイントになっていると感じました。
前向きに生きる清々しいラストも印象的でしたが、映画の小道具としての紅茶にも、このような考え方があるとしたら興味深いですよね。
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