数々の洋服たち③
今日で最後、数々の洋服たち。
まずは傷んでいるものを仕分けることにする。
一枚一枚手に取るたびに、どこで買ったもの、いつ着ていたものと思い出が蘇る。
それぞれに物語がある。
今でもデザインに遜色がないものも多い。試しに着てみると、体型がほぼ変化していないため今でも着られるものもある。
あの頃とは別の意味だが悩みながら一枚ずつ吟味する。
手放すための吟味というのは心に迫るものがある。
そんな時、ムスメがやってきて何してるのと声を掛ける。
これいいじゃん、着てもいい?
天の声が聞こえた。
無理やり押し付けるのではなく、気に入ってもらえたことが嬉しい。
世代を超えて引き継がれる洋服たちは今のところ10着程度。
お母さんは清楚系女子だったんだね、ワンピースとかコートとか今でもイケるじゃん
その服を着ていた時の思い出を伝える。
思い出には興味がないらしい。ふーん、よく覚えてるね、昔のこと。
そうだ、私は忘れられないことが多すぎて、今までも傷が癒えずにいた。そのかわり、よい思い出もたくさんある。何となく微笑み返した。
全然傷んでなくない?キレイじゃん。これ着たいね。
私も歳を重ねても着られそうな、お気に入りだった洋服たちを選んでいく。
ムスメから、全然今着ても大丈夫じゃない?との声を聞き、安心して持ち帰る荷物に入れる。
当時、まさか2.30年後も着られる服を選ぼうとは考えていなかった。
それでも、物語のある数々の洋服たちにまた光を当てることができ、親子で同じ服を着られる喜びを感じている。
あの頃の夢を追う私がまた輝きだした。
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