己の許容度の高さ

「中身がない」と言われたとき、私には思い当たる節があった。それは「ミーハー」であったことだ。いや、正確に言うとミーハーではない。流行の最先端を押さえておきたかったわけではなく、知り合いと話を合わせるための手段としてミーハーのふりをしていたのである。
小学生の頃、一番の仲良しだったしほちゃんが嵐にハマり、私にも勧めてきた。当時私はテレビを見ない子供だったため、嵐を知らなかった。とりあえずしほちゃんからジャニーズという事務所に所属するアイドルグループであることと「ラブソースウィート」という曲がいいことを聞き、下校した。家に帰ってパソコンで「ラブソースウィート」と調べると、違法にアップロードされた数々のラブソースウィートがヒットした。適当に一番上に出てきたサイトをクリックし、再生する。正直これといったときめきはなかったが、仲良しのしほちゃんが聞いていることと歌っている男性がみんな整った容姿をしていたのでハマってみることにした。人気は抑えつつも着眼点は鋭くありたかったため、あえて周囲の友達からは人気がなかった相葉くんを自分の推しメンとした。そしてTSUTAYAで嵐のアルバムを全てレンタルしパソコンに取り込み、両親にそれっぽい熱意を伝えファンクラブに加入した。推すに相応しい肩書を入手した私は、翌日からしほちゃん以上の嵐ファンを名乗り始めることとなる。

一方で私は同時進行で運命的な出会いも果たしていた。しかしそれに気づくのは10年も後の事である。きっかけは父親がくれたおさがりのウォークマンだった。当然中の曲は父親が過去に取り込んだ曲であるため徳永英明やサザンオールスターズなど当時の自分が興味のない内容だった。しかし、一応貰った身としてランダムで全て再生することにした。適当に聞き流しながら別の作業も並行していたため、ほとんどの曲は右から左へ流れていく。そこで私はやけに耳に残る曲に出会う。スピッツの「夢じゃない」だった。何の音楽知識もない私だったがAメロを聴いたときに胸が騒ぎ、昂るのを感じた。そこからAメロだけをひたすらリピートする日が幾日も続いた。ただ、どうやら本来の私はオタク気質ではなかったようで、そこからスピッツを深堀することもなくウォークマンに既に取り込まれているスピッツの曲だけを何度も何度も聴いていたのだった。

もしもこのタイミングでスピッツの存在に着目し向き合っていたとしたら、私は「たまねぎ」と呼ばれるような人間には育っていなかったのかもしれない。


世間体を気にするごく普通の女の子である私は、スピッツを聴く時間を確保しつつも嵐の全曲を暗唱するために多くの時間を費やしたのだった。

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