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なんで殺しちゃいけないの?【#マンガ感想文】

答えづらいヘヴィな質問をされた時、
なんて答えればいいんだろう。

人が抱える悩みの大半は、人間関係によるものだ。

と言っても過言ではないと思う。

例えば、
・ヨメが不機嫌なの、なんで?
とか
・女が男社会で働く意味って何?
とか
・毎日コツコツ働くって、人に馬鹿にされることなの?
など。
その悩みは千差万別だ。

田村由美・著『ミステリという勿れ』

を読んで、そんなことを考えた。

この漫画の主人公は、久能 整(くのう ととのう)
ちょっとばかり性格に(見た目も?)、クセのある大学生だ。
そんな彼が、殺人事件の犯人にされそうになったり、バスジャックに遭遇したりと、次から次に事件に巻き込まれていく。

「僕は常々考えるんですけど…」

ではじまる、彼の語って語って語りまくる蘊蓄が、
事件を解く鍵になり、周囲の人々の救いになっていく。


通常、答えにくい質問については、返答を躊躇ったり、答えを濁したりするものだ。

ところが彼は、「君、いったいいくつよ?」と言いたくなるような豊富な知識で真っ向から回答していく。
言葉通り、考えて考えた上で己の中の蓄積になっているのだろう。

子ども相手には屈んで目線を合わせる主人公。
常に弱き者や少数派の味方だ。
人々の悩みを、ポッと心に火を灯すようなあたたかさですくいあげて、ラクにしてくれる。

私はこの漫画を読んでいく内に、登場人物のひとりが繰り出す、

「なんで人を殺しちゃいけないと思うのか?」

という質問が、一番考えさせられた。

この質問を他者から思いがけなく放たれた日には、
返答に窮してしまうだろう。
だが、もしも尋ねられたとしたら、こう答えるかなー?って、なんとなく考えていることはある。

この漫画でも主人公なりの答えが語られている。それが日頃、私がぼんやりと考えていることと一致して、漫画の中でキッパリと言ってもらえて、かなりスッキリした。


私たちは生きづらい世の中で、常に人の顔色を窺い、空気を読み、言いたいことを飲み込みながら生活している。
自分が飲み込んだ言葉を、この物語では主人公が「めんどくさい」と言われながらも代弁してくれる。


『真実は人の数だけあるんですよ』


そう語る主人公と、周りで右往左往する登場人物たちを、まるで舞台劇のように見守っている内に、事件は解決している。

きっと刺さる部分は、人それぞれだろう。

読みごたえのある謎解きが味わえる、ミステリー漫画である。

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