共創プロジェクト『不協和音』

エンジニアとライターの2人が多様な創作活動を実施中。 エッセイ/対談/小説

共創プロジェクト『不協和音』

エンジニアとライターの2人が多様な創作活動を実施中。 エッセイ/対談/小説

マガジン

  • 不協和音

    • 222本

    エンジニアとライターが始めた共同執筆プロジェクトです。エッセイを軸に、自分の感じたこと、考えたことを発信したり、同じテーマで互いに呼応したりする作品を作っています。

  • 短編集

    「もし、こんな世界があったら」という反実仮想を、ショートな小説にしたためています。

  • 3年後に読みたくなるメディア『対岸』

    「違いって、おもしろい」をコンセプトに、多彩なゲストを迎えて対談を公開中。 誰かと自分、あるいは自分自身の中にもあるたくさんの「違い」に気づき、見つめ、理解し、受け入れ、一歩進むためのヒントを届ける。 今も、3年後にも、読むたびに多様な発見があるメディアを目指します。

最近の記事

変な昼飯

昨夜はローソンで夕食を買ったので、今日の昼はセブンイレブンにした。国道沿いには、コンビニやファストフードの路面店がたくさんある。三谷は、温めたメンチカツ弁当とウーロン茶、缶コーヒーを持って、自分のトラックに戻ってきた。 「…がお届けするグッドスマイルレディオ、本日のテーマは『くせになる味』。リスナーの皆さんからのメールお待ちしてます」  12月になったのに、あたたかい日だ。火曜日の午後1時半過ぎ、駐車場には自分と同じような長距離トラックが何台も停まっている。食事はもちろん

    • 願い事の精度

      ポテトチップは少し湿気ていたが、冷めてしまったコーヒーにはちょうどよかった。噛むと、ぱす、という頼りない音がする。 「まぁ、よくある話ですよ、それは。話というか…案というかお願いというか」 ですよねー、と言って、未希は抱えていたクッションに顔をうずめた。魔法使いはもう一枚ポテトチップを食べて、マグカップからコーヒーを啜った。 「願いを叶える系の定番ですよね。好きな人の好きな人を知りたい、とか、彼氏のスマホのパスコード知りたい、とか。未希さんくらいの年齢の女性からのご依頼では

      • アイスコーヒー

         幸福なんだと思う。初恋が実って結婚に至り、毎日楽しく暮らしているんだから。僕は妻を愛しているし、愛されている実感もある。満たされている。  でもそれが何を意味するかって言うと、厳密に言うと僕は、片想いも失恋も経験したことがない、ということ。想いが届かない苦しさも、好きな人が去っていく喪失感も、僕の人生にはなかった(後者は、寿命との兼ね合いからもうしばらくしたら経験するかもしれないけど)。だから、僕の幸福には比較がなくて、絶対的なひとつとして僕の中に在る。  風の向きが変わ

        • 思考の途中

          下り坂の終点は見えない。この坂を、自転車に乗って一気に駆け降りる時はいつも怖い。スリルを楽しんでいるかといえば、そんなことはなく、ただ一息に駆け下りた方が早いからそうしているだけだ。 —- 全長2km ほどのこの坂を私は毎日、自転車で登り降りしている。学校が山の上にあるから仕方ないと思いつつも、正直いうとあんまり好きではない。直線の坂ではなく、先の見えない曲がりくねったこの坂を、一番最初に登った時は果てしなく続く辛さに心が折れそうになってしまった。夏の日は、汗びっしょりに

        マガジン

        • 不協和音
          222本
        • 短編集
          6本
        • 3年後に読みたくなるメディア『対岸』
          16本

        記事

          流星群

           もし、ときめきに色やかたちがあるとしたら、それはきっと流星群みたいに違いない。制御できない高鳴りに心臓が震えてしまったら、もう遅い。ときめきに囚われたまま生きていくことになる。 ―――――  パジャマの上にコートを着て、マフラーも巻いて、靴下も履いた。そっと玄関を開けて家を出ると、すべらないようにできるだけ新雪の上を歩く。走りたい気持ちを抑えて慎重に歩こうとしても、無意識のうちに早足になってすぐ転びそうになった。いつも学校の行き帰りで通る道が、全然ちがって見えた。心臓が

          A glass of water

           おなかを下にして、足を丸めてじっとしていると、あたたかい。12月の昼間のほかほかしたひざしが窓から射しこんで、背中もあたかかった。  タワーの一番高いところに避難したのは、部屋の空気がぴりっとしてきたからだ。一瞬、飼い主の足にすり寄ってごろごろしようかと思ったけど、やめといてよかった。怒ってコップを倒しでもしたら、水をひっかぶって、毛のふわふわが台無しになる。 「いや、HSPがとかそういう問題じゃないから」  いらだった口調でつぶやいた飼い主は、さっきからテーブルの上のグ

          #8 データサイエンティスト

          キーワード:「違いって、おもしろい」 今回は、データサイエンティストの小林 大志さんです。 ===== ビートマニア、野球、データサイエンス、人類学。 並べただけではどこにも共通項が見えてこない異分野のものだ。 これらをつなぐのは「小林 大志」という共通項である。 「僕の興味があるもの、というだけですけどね(笑)でも、全然関係なさそうだと思っていたものが、何かしらの共通項で結びつくのっておもしろくないですか? 特に、それぞれの物事に存在する本質を転用して、新しい価値を生み出

          #8 データサイエンティスト

          #8 ただ一点、常に本質を見据える。核心にある革新を求めて

          ===== 攻撃的なのに論理的。 熱っぽいけど、突き放す冷たさもある。 意見の発信はさながら散弾銃だ。 どれもが無関係なように見えて、意外とそうでもない。 ——そんな、難易度の高い対談だった。 でも、彼の軸は一貫している。 本質は何か。そのエッセンスが示すものとは? 重ね合わせ、結びつけた「違い」が描き出すものを、求め続けている。 ===== 自己紹介:yamamoto hayata 山本 隼汰 共創サークル『不協和音』と、このメディア『対岸』のオーナー。 自己紹介:

          #8 ただ一点、常に本質を見据える。核心にある革新を求めて

          #7 シラット日本代表選手

          キーワード:「違いって、おもしろい」 今回は、インドネシアの伝統武術・プンチャック・シラットの日本代表選手、麻生 大輔さんです。 ===== 日本ではマイナースポーツ、本場・インドネシアではマイノリティの外国人選手。 プンチャック・シラットの日本代表選手である彼は、そうした状況下でも屈することなく、自らの鍛錬と競技の普及に励んでいる。 「気軽に始めたシラットでしたが、国際大会への出場やインドネシアでの武者修行を経験し、極めようと決意して日々がんばっています。シラットはインドネ

          #7 シラット日本代表選手

          #7 好きな気持ちに嘘をつかず、覚悟を決めて行くべき道を進む

          ===== 好きなことを「好きだ」と、胸を張って言う。 とてもシンプルな宣言だ。 それがメジャーなものであろうとなかろうと、関係ない。 今回は「プンチャック・シラット」というインドネシアの伝統武術・日本代表選手との対談。 シラットについて理解している日本人は多くない。 それでも、新たな道を拓く挑戦をあきらめない。 好きな想いに覚悟を持って向き合うことの意味を、考えてみる。 ===== 自己紹介:yamamoto hayata 山本 隼汰 共創サークル『不協和音』と、この

          #7 好きな気持ちに嘘をつかず、覚悟を決めて行くべき道を進む

          #6 コーチ

          キーワード:「違いって、おもしろい」 今回は、コーチの尾森 明実さんです。 ===== 尾森 明実さんはコーチとして、ビジネスパーソン向けにコーチングを行っている。もともと英語に興味が深く、通訳や英会話学習トレーナーの経験もある。 でも、今、彼女の関心は「学ぶ姿勢」に向いているのだと言う。 「同じレベルの人が同じ学習をしても、『学ぶ姿勢』の差によって、学習成果は変化するんです。最も大きな影響を及ぼすのは、現実と理想のギャップ、すなわち『違い』を正面から受け入れられるかど

          #6 ありのままに見る、受け入れる。そこには何があるだろう?

          ===== テーブルに、カップがひとつ置かれている。 あなたはそのカップを「白くて小さい」と思った。 でも、向かい側の人は「黒くて大きい」と言った。 それは「違い」であって「間違い」じゃない。 反対側の色はわからないし、大きさの感じ方も人それぞれだから。 物の見方も考え方も、人の数だけ多様にある。 同じテーブルに並べてみれば、世界は途端にクリアになる。 ===== 自己紹介:yamamoto hayata 山本 隼汰 共創サークル『不協和音』と、このメディア『対岸』のオ

          #6 ありのままに見る、受け入れる。そこには何があるだろう?

          #5 動機と表現、そのはじまりは自分を見つめて自覚すること

          ===== 迷いは、視界をくもらせる。 自分が何を見ていたのか、どんな風に見ていたのかがわからなくなる。 途方もない、心もとない気持ちにとらわれるかもしれない。 それでも、目をそらしてはいけないものがある。 ありたい姿ややりたいことは、今ではない未来のなかに描き出される。 さながら、少し離れた対岸を見つめるように。 そこへ行きたいと願うのが動機、向かうための行動が表現。 親しくも真逆のプロセスを持つふたりの対談に、動機と表現を結びつけるヒントを探る。 ===== 自己紹介

          #5 動機と表現、そのはじまりは自分を見つめて自覚すること

          #5 経営者

          キーワード:「違いって、おもしろい」 今回は、メンバーズデータアドベンチャーカンパニー社長・白井 恵里さんです。 ===== 東京大学を卒業後、新卒入社3年目にして社長公募制度により子会社を立ち上げ、代表取締役社長に就任。 経歴や肩書は彼女の社会的な姿を示しているが、実は、いわゆる優等生ではなかったらしい。 「昔から『協調性がない』『社会に出てやっていけない』と言われていて。実際に周囲とうまくやっている実感もなくて、いつも『なぜ、受け入れられないんだろう?』と考え続けている子

          #4 Portrait:ミュージシャン/Webデザイナー

          キーワード:「違いって、おもしろい」 今回は、ミュージシャンでWebデザイナーのMonamiさんです。 ===== 都会の夜を甘く彩るアーティスト。 それが、Monamiさんのコンセプトだ。音楽で、そしてデザインを通して、スタイリッシュでメロウな雰囲気を表現したいと考えている。 もともと、Monamiさんは大学卒業後、ビジネスパーソンとしてのキャリアを築いてきた。音楽は趣味として楽しむものと思っていた日々のなかで、次第にある違和感を覚えるようになっていく。 「音楽をちゃん

          #4 Portrait:ミュージシャン/Webデザイナー

          #4 心と真摯に向き合えたら、未知の対岸に渡るのも怖くない

          ===== 最初は、かすかな波立ちだった。 些末な違和感。誰の日常にもあるようなもの。 だけど、満たされない。想いと現実のバランスが取れない。 いつしか違和感は荒波のうねりとなって、今にも足元をすくわれそうだった。 だから、彼女は渡ることにした。 音楽とデザイン、希求する表現を求めて向こう岸へ。 ===== 自己紹介:yamamoto hayata 山本 隼汰 共創サークル『不協和音』と、このメディア『対岸』のオーナー。 自己紹介: Monami ミュージシャン/We

          #4 心と真摯に向き合えたら、未知の対岸に渡るのも怖くない