読書めも『正義を振りかざす「極端な人」の正体』 山口 真一 (著)
※私の読書メモをまとめてみました。実際に書かれている内容とは異なる、勝手に追加した内容も含まれています。本に何が書かれているかを知るためには、やっぱり、自分でちゃんと読むことをお勧めします。
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山口真一さんは、日本の経済学者で、専門は計量経済学です。池田清彦さんの『共感バカ』と続けて読むと、こちらはデータの扱いがスマートだと感じます。
不謹慎狩り:著名人がネット上で発信するコメントや画像をことごとく批判・誹謗中傷することを指す。
ネット右翼:ネット右翼とは、インターネットと右翼をかけ合わせた言葉で、ネット上の掲示板やブログ、SNSなどで保守的・国粋主義的な意見を発信する人のことを指す。
サイバーカスケード:同じ思考や主義を持つ者同士を繋げやすいというインターネットの特徴から、極端な意見になりやすくなること
エコーチェンバー:閉じたコミュニティの中で同意見ばかり飛び交う環境に身を置くと、意見が過激化・固定化されること
フィルターバブル:過去の投稿や閲覧の履歴を分析し、アルゴリズムによってその人の嗜好に合わせコンテンツが優先的に表示されるため、偏った情報ばかりにアクセスするようになること。
フレーミング (flaming):非対面コミュニケーション(CMC)では、対面コミュニケーションよりも攻撃的な行為が起きやすいこと。いわゆる「ネット炎上」
正義中毒:人間は正義感をもって他人に制裁を科すことで悦びを抱き、快楽物質「ドーパミン」が分泌される。この快楽を得るために制裁行為を続けると極端に不寛容になってしまう。
クリーンハンズの原則:「交通秩序に従って行動する運転者だけが、法律の保護を求めることができる」という原則で、「権利を主張する者は、過去に後ろめたいことがあってはならない」ということ。
スリッパー・スロープ(滑り落ちる坂):類似した行為が連鎖的に行われ、だんだんと道徳的に許容できない行為がなされる現象のこと
オーバーブロッキングの問題:多額の罰金リスクを抱えるサービス事業者はリスクを出来るだけ回避するために、違法性のないものまで過剰に削除してしまう問題。その反対は「アンダーブロッキング」
意図せぬ公人化問題
SNSでは、たとえ非公開の限られたメンバー間の発言であっても、興味深い内容であればあるほど、想定以上の拡散が行われ、「極端な人」の目に留まりやすくなります。その結果、発信した情報が瞬く間に拡散し、炎上してしまいます。
その結果は、学校を退学になるケースが多く、更にデジタルタトゥーとして残ってしまうために進学や就職、結婚が取り消されたといった事例や、店舗閉店や倒産に追い込まれることもあります。
一度炎上してしまうと止めることはできず、たとえ人違いで攻撃され、その事実が判明した後であっても「火のないところに煙は立たない」などと言われ、攻撃が続いた例もあります。
ネット上では自分の名前がどこかに残り、好ましい内容より好ましくない内容の方が多く、また長く検索され続けます。このリスクを低くする最も効果的な方法は、「本名をありふれた名前にする」ことです。どこで本名がさらされるか分かりません。検索結果の中で他の人と混同され、個人情報の特定を難しくすることができます。あるいは有名人と同じ名前にするのもいい選択です。キラキラネームのような唯一無二の名前をつけてしまうと、検索一発でトップに表示され、個人情報を特定されてしまいます。マイナンバー流出なんて比べ物にならないほどの危険性があります。
セキュリティ意識の高い親を目指すのであれば、結婚時の名字選択では全国名字ランキングの高いほうを選択し、子供の名前も全国で1000人くらい居そうな名前にすべきです。
クレーマーの属性
新しいメディアの問題点を論ずるときの定型句として「最近の若い者」とつけてしまいがちです。しかし、ネットでのクレーマーの属性を調べてみると、意外なことが分かってきました。
著者と慶應義塾大学の田中辰雄教授が行った調査によると、「極端な人」の属性は「男性」「年収が高い」「主任・係長クラス以上」という結果が出ました。
年収については、調査したサンプルの世帯平均年収は590万円で、そのうち炎上に参加した人の世帯年収の平均は670万円となり、80万円高いという数値がでています。
また、別の調査では、ネット炎上1件あたりに参加している人はネットユーザーの0.0015%、約1000人程度にすぎないという結果が出ています。その中でも1~3回の投稿をしたという人が多いのに対し、ごく一部の人は50回以上投稿していました。
社会に対しての知識と問題意識を持ち、信念をもって生きてきた50歳以上の男性が、自分と異なる考えや意見に対して徹底的に攻撃を加えてしまうという現象が起きています。
社会階層が高い男性は自尊心が高く、完全主義的な傾向が見られます。そして、自分の不満を相手に対して上からモノをいう習慣がついているのです。
加えて、年齢が高いことで共感しやすくなっています。出来事の一方に安直に共感してしまい、客観的に見ることができなくなってしまいます。池田清彦さんの言う「共感バカ」になっていることを自覚しなければなりません。
「極端な人」にならないために
情報の偏りを知る
情報とは、誰かが取材し作成されたテキストのことです。どれだけ能力があってもすべてを知ることはできないし、誤りが入り込むこともあります。取得した知識をテキスト化する作業で情報は取捨選択され変異しています。それはどのような媒体であっても同様です。自分の「正義感」に敏感になる
受け取る側にも問題があります。何かに共感を感じたとき、自分の中に一方を助け他方を挫く「正義感」が生まれます。しかし、周囲に流れてくる情報は、何かしら「共感」を誘うための罠が仕掛けられていることを忘れてはいけません。情報を作成するにはコストが必要ですし、「共感」はそのコストを回収し、利益を得るための手段です。「正義感」が強いと思っている人は、単に、速攻で罠に引っかかる人です。自分を客観的に見る
誰の意見にも、何かしら「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)」が入っています。自分を客観的に分析し、情報を正しく理解しているのか考え、自分の行動が他人にどのような影響を与えるのか考えることが大切です。情報から一度距離をとってみる
毎日大量の情報に接することができ、世の中の動きを簡単に知ることができるようになりました。しかし、現在のロシアの状況を見てください。ロシアの国民の多くは、正しい情報を手に入れていると思っているのですが、実際は国家による情報統制が行われています。罠だらけの世界で、直情的に行動するのは死亡フラグの元です。他者を尊重する
正しい議論を行う習慣を身に着ける必要があります。「自分」と「相手」を同等に見て、公平な立場で自由に意見を交換することができるようにしなければなりません。不適切な罵り方をしたり、人格を否定したりせず、受け手も自分への攻撃と混同して不機嫌になったり萎縮したりしない議論の場を作らなければなりません。