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西本千尋さん&安達茉莉子さんと滋賀高島の公共政策を3つ考えた2.5時間の記録|たかしまデザイン会議 2024 DAY.3 レポート
「水がきれいってこんなすごいことなんだな、わたしの住んでいるところには、泡立ってて、もうつらいくらいの水が流れているというのに」
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そう話すのは、たかしまデザイン会議DAY.3のゲストである西本 千尋さん。この日は、10年来の盟友である作家の|安達 茉莉子《あだち まりこ》さんが聞き手として駆けつけてくれました。
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琵琶湖の湖岸を訪れたときのこと。水際までどんどんと進んでいく西本さんを見守るように安達さんがこう言った。
「わたしが2011年に仕事を辞めて、丹波篠山で半年間暮らしていたときに出会ったんだよね。にしもとちひろは最高にやばくて、ほんとうにすてきな友人。ずっと“行政の内”じゃなく、“市民の内”からまちづくりを変えてきた人」
西本さんが変えたことの一つが、駅前や公園といった公共空間の使われかた。大学を卒業した年に株式会社ジャパンエリアマネジメントを起業。全国25都市の駅前や商店街、公園などの使われ方を調査して、内閣府へ提言した。この活動が呼び水となって、今では日本各地の公共空間の利活用がすすみ、オープンカフェやマルシェなどが日常的に行われている。
それから20年近くが経つ今日も西本さんはいう。
「まちづくりはつづく。ずっと考えて、ずっとアップデートしつづけていくんだ」
TAKASHIMA BASEへ到着した二人を出迎えたのは、高島市朽木の猟師シェフ、丹保(たんぽ)さんによる鹿料理の振る舞いでした。あっという間に時計は19時を迎え、たかしまデザイン会議DAY.3がはじまります。
ダイアログ 公共政策とまちづくり
問い 公共政策ってなんだろう?
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はじめに、西本さんが会場に問いを投げます。
「今日のテーマにある“公共政策”ってどんなイメージですか?」
高島の高校に通う才人さんは「うーん、ちょっとイメージないです」と答える。
また、草津市から参加した西田さん。
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「ぼくの住むまちではさいきん、駅前で音楽ライブができるようになる動きがあって。公共政策には、固くなったものがゆるくなるイメージがあります」
西本さんは一枚のスライドを示します。
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「うーん、固いよね。公共政策は、わたしたちが関わるとよくできる。わたしたちが関わらないと悪くもなる。身近にあるものなんです」
問い TAKASHIMA BASEは公共政策と関係ある?
「じゃあ、TAKASHIMA BASEは公共政策と関係あると思いますか?」
この問いに、柿農家の山口さんが答える。
「関係ないと思う。だってここに、むちゃくちゃ公共的なお金が使われている印象はないから」
どうですか?西本さん。
「関係あるんだな。都市計画を見てみましょう。ここは、高島市によって、工業地域の用途地域に指定されています。、この理由は、おそらく高島ちぢみの工場のクラスターで、さらにそれを促進させようとしたからかな。公共政策をひも解いていくと、ここにあった暮らしが見えてくるんです」
問い 市役所って何しに行くところ?
安達さん
「公共政策によって決められた用途区域を変えることはできないの?」
西本さん
「大変だけど、絶対に変えられないということはない。たとえばTAKASHIMA BASEを、現在の都市計画の工業利用とは必ずしも調和しないとされる商業のような使い方をしたい。たとえば、いろいろな人が利用する市場や宿をはじめようとする。その場合は、商業利用に向けた用途区域変更を提言することもできるかもしれない。『わたしたちは、これこれこういう目的のために、こういう新しい使い方をしたいです』って。」
安達さん
「どこに提言するの?」
西本さん
「市役所に。」
安達さん
「市役所って、住民票を取りに行くためのところだと思ってた。」
西本さん
「住民票だけだともったいない。わたし、今日の午前中に新旭駅周辺を歩いてたら雨が降ってきたから、市役所で雨宿りしたんだよ。」
安達さん
「市役所で雨宿り。」
西本さん
「そうしたらラックに広報誌とかたくさん並んでたから、移住政策や子育て政策、文化財政策のことを担当課に聞きに行った。ノーアポだったけど。」
安達さん
「ノーアポでね。」
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西本さん
「窓口の方へいくつか質問したら、後ろから上司の方がきてくださって、さらに詳しく教えてくれました。『5分後に会議はじまるんですけど』と言いながらも、見ず知らずの人間に、我がまちの公共政策を教えてくれました。いい役所です、高島市役所。みんなもぜひ市役所に雨宿りに行ってくださいね。」
安達さん
「市役所でどんなことがわかったの?」
西本さん
「川端(かばた)のある針江・霜降の水辺景観は、重要文化的景観の施策を活用してまちづくりをしています。それから10月号の広報たかしまに載っていた〈市民共同のまちづくり共同提案事業〉。この制度は次年度、リニューアルするみたいでした。せっかくこういう政策があっても、なかなか市民の手が上がらないまちもあるからどんどん使っていけると良いなと思ったよ。」
山口さん
「ぼく、それしています。」
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西本さん
「お!こういう制度は、かかわりのいい入り口になるんだよ。」
安達さん
「入り口。」
西本さん
「市役所という組織の内には、当然、そのまちをよくしたいとまちづくりを志して勤めた人もいます。そういう人がそのためのオリジナルな補助制度を担当したり、つくっていたりする。補助制度が応募者多数の人気企画になれば、担当者だってすごく張り合いが出るよね。
市役所の人を〈ビジョンとビジョンを重ねて、同じ目標を一緒に達成するまちの仲間〉として、とらえるといいんじゃないかな。」
ざわけん
「公共政策って、ぼくらの自由を制限するものという印象がありました。」
西本さん
「役所を訪ねて行くと〈できない理由〉をきちんと教えてくれます。だからわたしたちは〈できる方法〉を考えていけます。」
安達さん
「市民と行政を対立で見ないということ?」
西本さん
「そうそう。行政は敵ではないのだ。わたしが外から関わるときに気をつけていたのは、トップダウンで進めようとしないこと。首長や議員に言ってもらうとかね。自治体には、そこで日々働いている職員の人がいるんだから。軽んじてはいけない。ボトムアップで、一緒に苦労していくんだよ。」
安達さん
「どんな方法があるの?」
西本さん
「たとえば、具体的な事例を出してやりとりを重ねていく。市民が集まるワークショップの場に、まずはオブザーバーとして参加してもらう。」
ざわけん
「公共政策は、ぼくらの力では変えられないものだと思っていました。」
西本さん
「それは事実だけれど、変えることができるのもまた事実なんです。」
CASE
現行の建築基準法に合わない古民家。「建築基準法」改正の運動を行う上で、西本さんは35の自治体にかけあい、国家戦略特区へ提言。結果、歴史的建築物活用ネットワーク(HARNET)というネットワークが立ち上がり、各地で歴史的建築物保存活用条例をつくっていくことに。なお、先行事例として、京都市がモデルとしてあった。京都市では、京町家を守るためのルールとして、「建築基準法」を適用除外し、「京都市歴史的建築物の保存及び活用に関する条例」(平成24年)という自主条例を策定することで、文化的・景観的に特に重要なものとして位置づけられた京町家を、安全性を担保しながら合法的に継ぐ回路をひらいていた。
ここで、会場から質問が。
坪倉さん
「だけど、公共政策ってなかなかすぐには変わらないもの。現実を前に、折れそうになることってありませんか?」
西本さん
「なります。だからネットワークをつくるんです。燃え尽きないために。自分のまちが変わらないときに『うちの地域ではこういう条例ができたよ』と教えてくれる仲間がいる。あるいは専門家が応援に駆けつけてくれる。みんなのエネルギーが切れない仕掛けをつくるんです。」
安達さん
「すごく消耗することはあるよね。そういうときに孤立するんじゃなくて、周りの人が風を吹かせてくれたら。」
ざわけん
「市役所の人とも協働していきながら、自分たちで公共を更新していけるかもしれない。」
西本さん
「まちづくりは終わらないよ。ずっと考えて、まちをアップデートしつづけていくんだ。」
STUDY
国や地方自治体主導で進んできた公共政策。ステークホルダーへの「経済的利益」を追求する民間企業では担えない「社会的利益」を追求する存在として誕生したのがNPO。その動きが活発化したのは、1998年のNPO法(特定非営利活動促進法)成立以降。きっかけは、1995年の阪神・淡路大震災。復興に駆けつけたボランティアは延べ100万人以上。これに伴い、ボランティアをコーディネートする市民団体が次々と誕生した。世界中から集まった義援金が活動資金となるよう、法人格のない市民団体からNPO法人が立ち上がっていった。
問い まちづくりに関わるきっかけは?
安達さん
「にしもとちひろは、どうしてまちづくりに関わるようになったの?」
西本さん
「わたしが生まれた埼玉県川越市は、蔵造りの街並みがつづく観光のさかんなまち。大学1年生のときに『どうして観光がはじまったんだろう?』と調べてみたんだ。そうしたら資料の1行目に、マンションの名前が書かれていた。そこで、わたしの育ったマンションが、反対運動のすえに建てられていたことを知った。
それまでわたしはマンションから見おろす街並みが美しくて、好きだった。だけど〈見おろす〉から〈見上げる〉へ視座がうつったとき、まちというのは、ほんとうはさまざまな人たちの闘いの場なんだ、と思った。それがわたしのはじまり。」
安達さん
「反対運動も起きながら、マンションが建った。そのあとで、どうして蔵造りの街がはじまったの?」
西本さん
「最初に反対運動が起きたのは1978年頃だと思う。すでに川越市の旧市街は商店街やコミュニティ衰退という課題が起きはじめていた。反対運動が起きながらも、実際、マンションが建つと子どもも増えた。
マンションは建ったが『この先をどうしよう』と話しあうなかで目を向けたのが、蔵造りの建物だった。こんなに貴重な建物がまだたくさん残っていると。でも、わたしが生まれたころの蔵は、テントに覆われてたんだ。近代化の流れで、新築の建物に変わっていくなか、蔵を「古くて恥ずかしい負の遺産」と見なす人も少なくなかったと聞いたよ。
その後は保存活動が進んでいき、〈町づくり規範〉というルールもできて、それにのっとって、町並みが守られている。外観を合わせた新築の蔵造りも建てられるようになった。景観形成が起きたんだ。」
問い わたしたちが高島を変えたかったら?
西本さん
「わたしの話はこれくらいにして。あのね、高島に来ておどろいたのは〈水〉とのかかわり、水との近さ。山林の手入れから水路の管理、琵琶湖へ届くまで、水のシステムを支える講の仕組みが生きてきたこと。コモンズがしっかりしてるんだ。
ちなみに、コモンズを支える地域コミュニティって、本来は閉鎖的なものです。一定のルールをまもりあって、ある種、閉じることで、今日まで水資源と暮らしを持続的に守ってこられたんだよね。だけど、TAKASHIMA BASEは半分閉じて半分開こうとしてる。『高島が持続可能なまちとなるにはどうしたらいいだろう?』って考えるつなぎ手が集まる場所じゃない?
だから今日はここで〈公共政策を考えるワーク〉をしてみよう。」
ワーク 高島の公共政策を考えてみよう
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山口さん
「公共政策を考えるって、うーん、公共事業を考えるということ?」
西本さん
「それもできるし、『自分たちが民でこういうことがやりたいから、こういう補助金や制度をつくってほしい』という提言もできる。財源が必要なら、市独自で課税自主権の活用も をもつこともできる。」
会場
「じゃあ移住政策をこうしてほしいとか?」
西本さん
「それもできるかもね!」
安達さん
「いきなり考えるのはむずかしいかもしれないから、いくつか事例を出してみましょう。
全国にはおもしろい公共政策があって。たとえば神奈川県鎌倉市は、コンポストの購入補助金が3万円出る制度があります。神奈川県真鶴町には〈美の基準〉というまちづくり条例があります。
それからアーツ前橋21世紀美術館のある群馬県では〈群馬パーセントフォーアート〉という制度が行われています。この財源の活用もあり、群馬県はアーティストが集うエリアになりつつある。
まずは〈わたし〉から公共制度考えてみましょう。『わたしの身の回りがこうなったらいいな』が起点です。」
西本さん
「今ある公共政策が絶対的に感じられるかもしれない。だけどそれは、ほんの数十年前に誰かがつくった立法。遠い目で見て『あー』とあきらめるんじゃなく、更新することはできるんだよ。むずかしいけど、変えることはできるんだよ。」
提言1 「高島らしい就活」という公共政策
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丹保さん
「25歳です。高島市朽木で、いろいろな仕事をしています。ぼくは〈正規雇用を前提としない就活〉を高島市の公共政策として提言します。たとえば週2日は市役所で働いて、週2日は余っている畑を耕して、週1は福祉の仕事をする。そういう新しい就活を提案したいんです。
高島には、京都や大阪とは違うゆたかさがあります。そこで、京都のゆたかさを真似するんじゃなくて、高島のゆたかさをいかす働き方をする。学生時代に、リクルートスーツを着て企業を訪ねるだけが就活じゃないと思ったんです。まずは、高島での地域インターンからはじめてもいい。」
西本さん
「就業支援だけでもない、生活支援だけでもない。一つのライフスタイルをつくるおもしろい公共政策だと思いました。何課に提言に行く?」
丹保さん
「市民協働課ですかね?移住にもつながりますし。」
安達さん
「人口減少、林業の担い手不足という文脈でもつながりそう。」
西田さん
「京都の京丹後市で、週3日だけ市役所で働く〈フリーランス行政マン〉という制度をやっていたよ。
安達さん
「おお、高島でも何かやれそう!」
CASE
鳥取県智頭町では、智頭町複業協同組合を立ち上げ。観光、飲食、林業など、複数の仕事を組み合わせた働き方を提案している。
詳しくは「ひとつの地域で マルチに働くじっくり育てるわたしの芽 - 日本仕事百貨」
提言2 「やまあいのりあいタクシー」という公共政策
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水艸さん
「高島で福祉の仕事をしています。運転免許を返納している高齢者もいますが、公共のバスは一日数便しかありません。そこで〈やまあいのりあいタクシー〉を高島市の公共政策として提言します。
『わたしはAコープ』『わたしはウェルシア』というふうに、一人ひとりが行きたい場所へ送り届けてくれる公共交通手段です。独居の人の孤立もふせげるんじゃないかな?」
西本さん
「介護保険法を活用できるサービスはあるかもしれません。だけど、制度のはざまに落ちている人もいるんですよね。」
水艸さん
「介護保険法では、点数によって時間の枠が決められています。枠を超えた人が、お金を払うことでいつでも利用できるサービスもあるといいんじゃないかな。この地域でずっと元気に過ごせるための制度提案です。」
西本さん
「既存の制度では埋めにくいところを、どう埋めていくのか。市役所の人とも話していきたいですね。」
会場
「竜王町には300円で利用できる〈チョイソコりゅうおう〉という乗合ワゴンがあります。事前予約が必要だったり、なかなか会員が増えないという課題もあったりしますが。」
安達さん
「へえ!こうして人が集まって話すと『あるんだ!』が生まれるね。わたしもすごく勉強になっています。」
CASE
行政が公共交通機関を運用しづらいとき、NPOを立ち上げて補助金を活用するケースもある。人口が1000人たらずの奈良県下北山村では、NPOが有償輸送を行っている。くわしくは「奈良県下北山村の地域福祉さがし」
提言3 「ちょこっと働く、ちょこっと休む」という公共政策
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ひかりさん
「福祉の仕事をしています。すごく好きな仕事ではあるけれど、まとまった休みをとりづらいんです。こんなことも公共政策になる?」
安達さん
「福祉の仕事をする人自身が満たされていないと、極端な話ですがゆくゆくは利用者さんへの虐待につながることも考えられると思いました。」
西本さん
「支援者の支援が必要ですね。」
安達さん
「でもこれって、介護保険法を見直すとか…国会議員にならないと変えられないこと?」
田村さん
「あのー、ちょっといいですか。ぼくは設計の仕事をしてきました。20代のころは月150時間残業みたいな働き方をしていたんです。だけど60歳間近になった今、いろいろな仕事をして人生を楽しみたい。高島で暮らしながら人の役に立って生きていくことに幸福を感じています。『ちょこっと働く』というのもありますよね。たとえば福祉や農業の分野で、ひかりさんのような人が『ちょこっと休みたいです』と手を挙げる。すると『わたし行けます』って誰かが反応する。そういう制度をぼくは切に求めています。
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ひかりさん
「わたしもすごくほしい。」
ざわけん
「世代を超えて共感できるんだなあ。『言っても仕方ないよな』と自分のなかに留めている思いを言葉にすることが、公共政策につながるかもしれません。
高島では湖西線が止まると、みんな車での通勤と学生送迎に切り替えて渋滞が発生する。『一人ひとりが自家用車に乗るんじゃなくて、バスでまとめて送迎できたらいいのに』と話す人がいました。公共政策として、行政のみなさんとできることは、まだまだたくさんあるんだろうな。」
能 まちづくりは聞こえる?
19時にトークがはじまったときは、月ほど遠くに霞んで見えた公共政策。その手ざわりが、だんだんと自分の手のなかに感じられつつある21時。
この日の会場には、まだまだたくさんの「問い」が浮かんでいました。ここから質疑応答がはじまろうとするそのとき。西本さんが「高島」と題された紙を会場に配りはじめます。
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そして、安達さんがこうつづけます。
「これは、まちづくりをテーマにした“能”です。彼女は起業したのち、京都で3年間、能の世界に弟子入りしていたんです。
ここまでは、にしもとちひろの“表面”でした。ここからは月の裏側、未知の暗闇へ行きます。最近のわたしの楽しみは、暗闇をこわがらないこと。ご一緒ください。」
ここからは、西本、安達、ざわけんの3人による「まちづくり能」がはじまります。
会場がふたたび明るくなっても、言葉を失っている会場。いつもはみんなでふりかえりを行って閉幕するところですが、この日はなんともいえない感じを、ほったらかしてみる。一言では表しきれない時間を、そのまま味わいます。
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〈公共政策〉がテーマのたかしまデザイン会議で、どうして能をはじめたのか?その理由は、西本さん自身でさえも言葉にしきれていなかったように思います。問いを答えでかえすのが質疑応答だとしたら。〈まちづくり能〉は、問いを問いでかえすものだったかもしれません。その一語一句が、誠実さと切実さに満ちた返答であったように思います。
むすびに、西本さんは〈まちづくり能〉で触れた石川県令和6年能登半島地震について話しました。
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西本さん
「輪島市の白米千枚田が壊れた。地域の人たちはゆっくりゆっくり自分たちの手で水路を作り直したり、田んぼを1枚ずつ直していくことをやっていこうとしたのだけれど、復興のシンボルをつくりたいという別の思惑もあって、ものすごい補助金が降りたんだ。地域の人たちは『補助金が降りてよかった』より『自分たちの復興ができなかった』という。
公共政策は権力だし、みんなの、だし。大きな予算が降りることで『ほんとうはやりたくなかったけれどやってしまった』ということがあると思う。自分たちの公共政策は、わたしたちのまちづくりに合っている?
時間もちゃんと自分たちの時間で復興していい。高島は高島の時間、わたしたちの時間でまちをつくっていっていい。自分たちの時間とやりたいことに沿うように公共政策をつくっていく。公共政策を自分たちのものに、というのは、ほんとうに大事なことだと思います。」
(編集・撮影:toi編集舎 大越はじめ)
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たかしまデザイン会議はまだまだ続きます。
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