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「一歩」があるからひらかれるもの|横田亜弥佳|2023-24 essay 11【田中ゼミ・フィールドワーク】
所属や分野・領域の垣根を超えて多様な人たちが集まり、対話し、実践的に学び合う「ふくしデザインゼミ」。2度目となる今年は、28名の学生と若手社会人が、東京八王子、伊豆大島、滋賀高島、長崎諫早の4地域をフィールドに「福祉をひらくアイディア」を考えてきました。
正解のない世界を漂流する2ヶ月のプロセスのなかで、若者たちは何を感じ、何を思うのか。このエッセイでは、ゼミ生一人ひとりの視点から、ふくしデザインゼミを記録します。
ふくしをひらくレシピ集
田中ゼミは「福祉拠点をまちにひらく」というテーマから始まりました。滋賀県・湖西地域の福祉の一端を担う社会福祉法人ゆたか会さんと一緒にゼミの活動を行っています。
オンラインでのゼミ生や職員さんどうしの交流が渦を巻き、活動が盛んになってきた田中ゼミ。フィールドワークに向けた準備として、「ふくしをひらくレシピ集」の作成を行いました。
(オンラインでの活動の様子は、こちら!)
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これは、フィールドワーク前の「ふくしをひらくレシピ集」。場をひらく方法や暮らしのなかで人との交流を生み出す具体的なアイデアを、出してはまとめ、ゼミ生と職員さんあわせて90個がゾロリ!
施設の中にある生活に漂う
いよいよフィールドワーク当日。1日目はまず、ゆたか会さんの3つの施設をめぐりました。
高齢の方が暮らす「清風荘」では、このまちで年を重ねた利用者さんから、高島はどんなまちか、どんな仕事をしていたのか、お話しを聞いたり、自分たちのことを話したりしながら時間をともにしました。
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障害のある方が暮らす「清湖園」では、「それぞれの生活がここで流れているんだなあ」ということを肌で実感。部屋まで案内して塗り絵の作品を見せてくださった方、タイピングの代わりにセンサーで文字を入力してゲーム実況の動画を楽しんでいる方、広間に出てみんなでテレビをみている方々。
ここがみなさんの家であり、生活の場であることは、空間のデザインにもあらわれています。清湖園はフロアをひとつのまちとして捉え、部屋を住所で示しているのです。
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職員さんは、部屋に入る前にノックを欠かしません。ここは一人ひとりの家であることをわきまえ、配慮や敬意を払いながら働かれていることが伝わってきました。デザインのハード面とソフト面のつながりを実感できました。
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わーくる夢では、就労支援B型/就労移行支援として通われている方々とお会いし、目の前の作業を黙々とこなす人たちの姿を目にしました。
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普段何気なく見かけるお菓子や電化製品も、その背景を辿るとこうやって作業する人の姿があるんだと学びになります…!
まちあるきの新しい発見
ゆたか会の施設の見学を経て、午後からは高島のまちを散策しに出ます。
「施設をもっと地域住民にひらかれた場にしたい」という職員さん。住民の方にとっては、どんな場が必要とされているのか、ヒントを探ります。
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新しい発見があったのは、初めて高島を歩く私たちだけではありません。まちなみを見慣れているはずのゆたか会の職員の方でさえも、いろんな発見があったのです!
例えば下の写真にあるベンチ。高校生に聞いてみれば、通学路にあるこのベンチは彼らの憩いの場になっているといいます。
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慣れ親しんでいる場所でさえ、一つ視点を変えると新しい気づきがあり、ものの捉え方や考え方すらも変わってゆきます。その過程は楽しいし、他の人の気づきを聞くのもとっても楽しい!
その後、私はインタビューの難しさにぶつかります。初対面の人に、どこかかしこまってしまう。知りたいことを直接聞く質問しかできなくて、得られる情報の幅が狭まってしまったり、質問の意図を伝えすぎて、想定を超えるような答えを引き出せなかったり。
そうモヤモヤしてた時、駅に向かったほかのメンバーから送られてきた動画に、ハッとさせられるのです。
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なんとなんと!ストリートピアノの周りを小学生たちが囲って楽しそうに歌っているではありませんか?!
出会ったばかりの小学生たちが、なんとゼミ生の誕生日を祝ってくれているようです。
すごい!
私は自分のなかにあった霧が一気に晴れた気がしました。
かしこまって話しかけることよりも、ユーモアや面白そうって気持ちで気楽に相手に開いていくことが大事なのかも!どんな関わりがどうひらくのか、やってみないとわからないんだな!
教えてくれたのは、ゼミの仲間でした。
ふくしをひらく実践
2日間のフィールドワークの中で、ストリートピアノ以外の場面でも、田中ゼミは関わり一つひとつから小さく福祉をひらく実践を積み重ねてきました。
そのなかでも一番の目玉は……、これ!
出会った人にチョコレートを。
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ちょうどフィールドワークが2月14日バレンタインだったことから、「みんなにチョコ渡そうよ!」というちょっとしたアイデアからはじまった。チョコを貼り付けているカードはグラフィックデザイナーのゼミ生が手がけたもの。そして裏には、、
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手書きのメッセージを添えて!
このチョコレートがあったおかげで、初対面の人に緊張しすぎず、これをきっかけにしたコミュニケーションを生み出すことができた気がします。
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他にも…
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「モヤモヤ」と「やってみる!」の狭間で
2日目の午前中はいろいろな福祉施設で働く職員の方々を交えての話し合い。高島にどんな人とのつながりを作りたいかについて話あったときに、
✔「軽い」つながりがいいのでは
✔ 地域にいるちょっとしたおせっかいさんの存在がカギなのかも
みたいな話も出たことが、印象的でした。
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職員さんからは「自分から一歩踏み出してひらいてゆくことの重要性に気づいた」という声もあって、この場にいた人、各々が刺激を受けたんじゃないかな!と思います。
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午後は、これまでのフィールドワークなどを踏まえて、ゆたか会の職員さんを含めたみんなで話し合います。
2日間、高島でいろんな方と出会って話したり、まちを見て気づいたり感じたり考えたりしたことがたくさんありました。それを踏まえて、「どういうことをやったら、本当にひらけるか?」アイデアを考えます。
みんなから出てきたアイデアをふりかえってみると、フィールドワーク前に私たちが考えた「ふくしをひらくレシピ」のリストにあるものより、住民のニーズから導かれた案が多く並んだように思います。
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どんどん進んでいく田中ゼミ。でも私たちが進めば進むほど、「なにか大事なものがこぼれおちてしまってないか」というモヤモヤの煙が立ち込めてゆきます。今まで置き去りにしていた「なぜ、ふくしをひらくレシピがいいのか?」という問いが再燃したり、「レシピを読む人にどんなことを伝えたいのか」という目的をあらためて探しはじめたり…。
進むべき方向をもう一度見つめ直すために、1か月前のキックオフのときに投げかけられたテーマ「福祉拠点をまちにひらく」にみんなで立ち戻ります。
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キックオフの時と同じように、テーマの言葉をそれぞれ解釈し直してみると、そこには、以前とは違う言葉たちが連なっていました。
結局、話し合っても、「なぜレシピがいいのか」はあんまりわからないままだった。けれど、このレシピのおかげで、田中ゼミのみんなや、ゆたか会の職員の方々が、ふくしをひらく実践を小さく積み重ねてこれたのは、たしかなのです。
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サプライズ登場した小松理虔さんからも意見をいただいて、私は、「モヤモヤしていることは考えが煮詰まってきているいいサインなのかも、いったん作り進めて、その過程で上からモヤモヤを眺めてみたら、その意味がわかる時が来るかもしれない!」と思えるようになりました。
私は、「やってみよう!」の明るい発信と「それいいね!」っていう受信が行き交う、職員さんたちを含めたこの田中ゼミの雰囲気が好きです。みんなの案が実現したらそれもそれでいいと思いますが、結果的にその案が直接実現しなくても、させようとしなくてもいいんだと思えるようになりました。
なぜなら、大きな流れとして捉えられる出来事の背景には、それぞれが準備したり考えたりしてきた小さな川の流れがある。各々が、よりよくしたいという目標に向かってやりたい方向に一回流れ出してみる。その小さな流れが合流したり分かれたりして、その結果、ゼミ全体として一つの大きな水の流れがあるのだと思うからです。
隣を見れば、見えないところで流れる個々の取り組みを想像する重要性に気づけるし、そこにはコミュニケーションを取り合うメンバーがいます。
そんなみんなと一緒に進めるレシピは、これからどんな風に仕上がってゆくのだろう!これを読んでいる外の方にもどうやったら伝えられるものになるだろう!
|このエッセイを書いたのは|
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慶應義塾大学 看護医療学部 3年
お知らせ ~公開プレゼンを開催します!~
3月3日(日)には、正解のない世界を漂流した2ヶ月のプロセス、そしてアウトプットを共有し、みなさんとともに思考と対話を深める、公開プレゼンテーション〈「ふくしをひらく」をひらく〉を開催します!
エッセイを綴るゼミ生たちがみなさんをお待ちしています。ぜひご参加ください!