発信者情報開示請求。仮処分決定されると違法認定されるってホントなの?
立花党首、ちょっと気になる発言されてますね。考察していきたいと思います。
発信者情報開示請求のStep1は、twitter社に投稿者のログ(IPアドレス)を開示してもらうことから始まります。本来は通常の裁判で争うべきなのですがtwitter社のログの保存期間が短い(3か月程度)ため、民事保全手続きでログの開示請求をするのです。民事保全手続は本案訴訟が終わるまで待っていては、権利実現が困難になると判断された場合に利用される手続きです。
民事保全手続きに求められるもの
1.暫定性(仮定性)
2.随伴性
3.迅速性(緊急性)
4.密行性
情報開示請求に当てはまるのは、上記1,2,3,ですね。ログが消えてしまうので緊急を要し、暫定的に開示決定してもらうために利用するということです。
開示請求の時に利用される手続き方法が「民事保全手続き 仮処分申立」です。(Step1)
「開示請求が通った」といった表現の場合、Step1の仮処分決定で開示される「ログ」のことなのか、Step2,3で開示される「投稿者の個人情報」なのか見極める必要があります。
民事保全手続きでは申請者を「債権者」、申立てられた人を「債務者」と呼びます
民亊保全手続きの審理について
仮処分の決定がでるには、債務者と債権者の立ち合いが必要と定められています。債務者の言い分も聞く必要があるとされているからです。(民保23条4項本文、双方審尋)
ただ、発信者開示請求に関してはそもそも投稿者は匿名で、その投稿者の個人情報を開示せよとプロバイダに請求するためのものなので、本来の当事者である投稿者がでてくるわけがありません。
実際には投稿者の言い分は届かない状態で開示の決定が下されているのです。twitter社が投稿者の言い分を主張するとすれば、現状のように何でもかんでも開示が通ってしまう状態とはまた違った結果になると思います。
申立ては疎明とされている
(申立て及び疎明)
第十三条 保全命令の申立ては、その趣旨並びに保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を明らかにして、これをしなければならない。
2 保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性は、疎明しなければならない。
証明:ある事実の存在について、裁判官に確信を抱かせること
確信とは経験則に照らして、通常人が合理的な疑いを容れない程度の心証とされる(最判昭50,10,24)
疎明:ある事実の存在について、裁判官に一応確からしいとの認識を持たせること。確信より低い心証で足りる。
※民事裁判では原則証明で進められます。
迅速性が求められますし、通常の裁判より債権者の訴えが通る可能性は高くなるということです。仮の地位を定めておくので、本裁判でちゃんと争ってくださいねということです。(付随性)
立花党首やインフルエンサーはあちゅうさん等の代理人を務める福永克也弁護士は仮処分開示決定がでたツイートは、その後の裁判で違法認定されると殊更にアピールしているようですが、そんなことはありません。仮に開示請求が認められたとしても違法とされるかどうかは、裁判が終わるまでわかりません。
特に、福永弁護士が仮処分で開示決定を受けたとされる500件ほどのツイート(インベーダーゲーム感覚で仮処分を申立たらしい)が本案訴訟で違法認定されるという福永弁護士の見識に筆者としては疑問しかありません。
Step3のプロバイダとの裁判に勝訴したというならまだしも、Step1のtwitter社を相手とした仮処分で開示決定がでたから、名誉毀損裁判でほぼ違法と認定されるとか、「何いってんのこの人達?」って感じです。
前提が狂えば、結果も狂う。仮処分で開示決定がでたところで、投稿者が本気で争う姿勢を見せたら、そう簡単に勝てるとは思えません。
本来、仮処分で出た決定と本裁判の判決は同じであるべきです。決定がでて保全執行がされてしまった場合、その内容に不備があると執行を受けてしまった人に取り返しのつかない損害を与えてしまう場合もあるからです。
補足:現状、債務者の権利が保障されているとは思えない。
仮処分の決定がでた場合に、債務者は不服申し立てができます。変更、取り消しを求めて裁判所に保全異議を申し立てることができます。ただし、申し立てができるのは「債務者」とされています。開示請求の債務者はtwitter社なんですよね。twitter社は現状そこまで頑張ってはくれません。
本案の訴えの不提起による保全取消
保全命令を使ってきたにも関わらず、その後の訴えを起こさない不届きな輩もいます。保全命令を単なる嫌がらせに使う人間は昔からいたんですね。
債務者の地位を不安定なままにしておくのはよくありませんし、保全命令はあくまで本案に付随していなければなりません。
仮処分決定とっておいて本案訴訟をしないというのはダメですよということです。そのための制度があります。
(本案の訴えの不提起等による保全取消し)
第三十七条 保全命令を発した裁判所は、債務者の申立てにより、債権者に対し、相当と認める一定の期間内に、本案の訴えを提起するとともにその提起を証する書面を提出し、既に本案の訴えを提起しているときはその係属を証する書面を提出すべきことを命じなければならない。
2 前項の期間は、二週間以上でなければならない。
3 債権者が第一項の規定により定められた期間内に同項の書面を提出しなかったときは、裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消さなければならない。
4 第一項の書面が提出された後に、同項の本案の訴えが取り下げられ、又は却下された場合には、その書面を提出しなかったものとみなす。
仮処分でIPアドレスの開示決定がされたのに本裁判を起こさず、開示決定者にプレッシャーをかけ開示決定者が示談を申し出るのを待っている。ってまさにですよね(笑)
ただし、これも債務者の申し立てによりとなっているのです。開示請求の場合本来の当事者は投稿者ですが、形式的にはTwitter社が債務者となります。保全命令が発令中であれば保全取消の訴えは可能ですので、twitter社に「起訴命令、保全取消を申立ててよ!」と頼んでみるのも手かもしれません。
なお、筆者は謂れのない誹謗中傷に悩まれている方は、裁判で解消されるならやったらいいと思ってます。嫌がらせのようなやり方をやってる人達はよくないなとは思っています。
では、また~~(@^^)/~~~