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「日本再興戦略」を読んで 2 欧米というユートピア

日本の再興戦略を考える時によくある誤りは、明治時代や昭和初期のことを思い出してしまうことです。
そもそも「欧米」というものは存在しません。欧米と米国はまったくの別物です。「欧米」とはユートピア(どこにもない場所)であり、日本人の心の中にしかないものです。

まずは「欧米」ではなく、米国、英国、ドイツ、フランスというふうに国の単位で語るべきです。また、いつの時代のどの国か、というのも重要です。そうするだけで議論がとてもしやすくなります。

今の日本のシステムはイギリス式、アメリカ式、フランス式、ドイツ式が交ざってできています。

大学を例に挙げると、日本の大学のもともとの基盤は欧州式(国家の影響がとても強い)ですが、戦後そこにアメリカ式を組み合わせる形になっています。
今の日本の大学の問題は、設置理念は欧州式なのに、資金運用などの面だけアメリカ式を取り入れていることです。そのひずみが、大学における非正規雇用(ポスドクは不安定な身分に置かれ、社会保険も十分に整備されていないなど待遇もよくない)の急増につながっています。

法律にも似たような問題があります。
日本の刑法(明治時代からドイツの影響を受けて今日に及んでいます)はドイツ式を主に参考にしてつくられていますが、民法(現行民法のたたきとなったのが1890年に交付された旧民法)はフランス民法が基盤になっています。そして憲法については、大日本帝国憲法はドイツ憲法を土台に、日本国憲法はアメリカ式のものになっています。
つまりドイツ、フランス、アメリカという全く違う国の法律を模範にしているのです。


結局日本人は、外来的にやってきたものをすべて「欧米」と呼んでいろんな分野で各国の方式を組み合わせてきました。そしていいとこ取りをしたつもりが、時代の変化によって悪いとこ取りになっているケースが目立ってきています。仕方がないのです。

時代が変わったのだから、いいとこ取りの旧い最適化モデルを変化させないといけない。
だからこそ、まずは日本が近代化以前に得たもの、近代化以降に得たもの、そして我々が今適用しないといけないものをしっかり整理することが重要なのです。

そして「欧州のどこをまねするか」ではなく、「日本には何が向いていたのか」「これから何が向いているのか」を歴史を振り返りながら考えていかないといけないのです。

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