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鳥籠の中の鳥

こんにちは、福岡正一です。


もう20年経ちますね。2002年と2003年のシーズンオフ。

僕はアメリカMLBアメリカンリーグのジム・エバンス審判学校の「Dessert Classic」というショートトレーニングに参加しました。2002年はアリゾナ州フェニックスにあるシアトルマリナーズのキャンプ地。2003年は同じくアリゾナ州のサプライズにあるテキサスレンジャースのキャンプ地で行われました。

アメリカによくある「INN」をドミトリーにして、全米や国外からきた70名を超える審判仲間と1週間、午前中はクラスルームでルールを学び、その後はファストフードでお昼を満たしながら車を持っている地元の仲間にピックアップしてもらいグラウンドに移動しサンセットまで午前中に学んだ内容を実践するトレーニングが行われます。15歳から72歳までみんな同じ内容でハードなトレーニングが行われます。

トレーニング中、校長のジム・エバンスがいろんな言葉をかけてくれます。

その中で印象に残っていることの一つに、「審判は〝鳥籠の中の鳥〟なんだよ。」という言葉があります。


要は常に360度、いろんな角度から見られているということです。

その数年前に、僕は四国の先輩が派遣審判で参加した都市対抗野球大会に陣中見舞いで東京ドームの審判室を訪れています。

そこでたまたま居られた東京六大学や甲子園で知る人ぞ知る早稲田大学名誉教授の西大立目永先生が「福岡くんじゃないか!時間はあるのかい?ここで一緒に野球を見よう!」ということで審判控室に案内していただきご一緒に1試合見学するという贅沢な時間を過ごしました。

そこで印象に残っているのは、

「福岡くん、120km以上でホームプレートを通過する投球は何秒で通過すると思う?」

「え?あ?うっ?…」

「1/1000秒だよ!じゃあ、人間の目で正確に見える速さは?」

「…。」

「1/500秒なんだよ。」

「え?」

「そう、審判が立ってる位置から、コースによっては正確に見ることはできないんだ。」


その後にジム・エバンス氏と出会うわけですが、

ジムはこうも言います。

「誰が一番正確に判定できると思う?スタンドでビール飲みながら寝そべって野球観てるやつらさ。」


西先生からお聞きした「正確に見れない。」とジムが言った「鳥籠の中の鳥」という言葉がアリゾナで着想したんですね。

「正確にできないことを360度の角度から沢山の人に観られている。」

僕はこのことに気がついてから、野球というスポーツが持つ競技性と娯楽性、社会通念そして真剣勝負というすべての面を考えながらグラウンドに立つようになり、深みが増し始めたような気がしています。


「勝負運」「イニシアティブ」「優位感」、また甲子園には「魔物」と呼ばれる言葉もあります。そして、ゲームの流れが変わるときには何が起こっているでしょうか?

ゲーム中には自分でコントロールできることとできないことがあります。

プレイヤーであるあなたは、いい流れを呼び込みいい結果を出すためにどんな準備をしてどんな振る舞いで本番を迎えますか?

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