【本紹介】怒り爆発の悪口芸が光る1冊。『ハイパー・アンガー・マネジメント』
人を怒れないというしりさんが過去「怒りそびれたこと」を掘り返し、悪口を書いて発散していく1冊。
感想を端的に言うなら痛快。
おもしれー。
スカッとして笑える。
本書は第3章から構成される。
金持ちで性根の悪い小学5年生、
大人になってから粘着してくる高校の同級生、
若い女の子にマウントとる46歳おじ。
どの章にも嫌なやつが出てくる。
そいつらに七色のボキャブラリーで反撃。
前半でエピソードをじっくり描いて、後半の怒り発散コーナーにてボロクソ言う構成が素晴らしい。章の中に緊張と緩和(溜めと爆発)があるこのシステム。すごい。発明でしょう。
前半の具体的で繊細な情景描写があるからこそ、読者サイドはモリモリ感情移入できる。
そして怒り発散コーナーでは気付いたら僕はしりひとみ軍の兵士の1人になっていた。
「行け!しり大将。敵の首を取ったれ」的な高ぶりを感じた。
そんでもって期待通りに討ち取ってくれるのでスカッとする。
これ対面でやったら威力あり過ぎるから文章でやるのがちょうどいいのかもしれない。
しかし悪口というのは難しい。一歩間違えるとただ人を傷つけるだけになってしまう。そこで大事なのが『理由』と『ユーモア』だと思う。
なぜ怒ってるのか?
何が嫌だったのか?
何をされたのか?
ここを明確にして、笑えるような遊び心を全体にまぶす。
そうすれば邪悪さが消えて安心して読めるものになる。
技術が必要だけどこの本ではしっかりと体現されてると感じた。
さあ、この本の個人的なサビはここ。
ロックです。もう。
歌にするか本にするかだけの違いだ。
魂からの産地直送が胸に響く。
人の気持ちを考えずに傷つけまくる人たちと
そうじゃない優しい人たちの間に
明確な線を引いてくれたんだと僕は捉えてる。
失礼な人種への嫌悪感を表出させ、優しい人の心を軽くする。
この本を楽しめる人はきっといい人だ。
仲良くできそうな気がする。
本を読むことは仲間を増やすことに繋がる。笑いと優しさでそう思わせてくれたしりさんの筆力に感謝したい。
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