天国の民(短編小説)
その国の民は幸せである。
自分達より幸せな国の民を知らないからである。起きて働き働き働き、日々を過ごす。
自分達より沢山食べている国の民を知らないし、自分達より沢山遊んでいる国の民も知らない。
自分達より栄えている国を、知らないし、 自分達より発達した国を、知らない。
その国には王がいて、役人がいて、民がいる。
土地があり、山があり、海がある。
土地は王の物であり、山は王の物であり、海は王の物である。
王の政策で、役人が働き、国民が暮らす。
最高の科学があり、最高の社会があり、最高の王がいる。
その国の民は幸せである。
【自分達より不幸せな民が世界に存在しない】事を知らないからである。