私のして欲しい事をあなたにしてあげる(短編小説)
私の両親はとても厳しく、小さな頃から躾はとてもうるさかった。
言葉使い、食事の作法、そして何より【人に優しく】が、もっとも口煩く注意をうけた。
『あなたもそんな事をされたら嫌でしょ?』
『あなたもそんな事を言われたら気分が悪いでしょ?』
《私は嫌じゃない、、私は気分悪くない、、》
『簡単な事、、あなたのして欲しい事を他人にすれば良いのよ!』
《何故だろう、、私がして欲しい事を人にしているだけなのに、、全部注意をうけてしまう、、》
いつもいつも、、怒られながらも、、
私もいつのまにか大人になり、父も母も鬼籍の人となってしまった。
でも私には彼氏がいる、、彼には【私のして欲しい事をしてあげる】のだ。
『あなたの部屋を片付けておいたわ!』
『あなたのガラクタ捨てておいたわ!』
『あなたの友達にお金を早く返す様に伝えておいたわ!』
『あなたの同僚に文句を言っておいたわ!』
『あなたのライバルを襲ってもらったわ!』
『あなたにクレームつけた客をホームに突き落としておいたわ!』
『あなたを評価しない上司に身体をあずけたから、もう大丈夫!』
そしてあなたは去っていった。
私から去っていった。
あんなにあんなに【私のして欲しい事をあなたにしてあげたのに、、】
だから私も(私の良心)に『サヨナラ』をしたのだった。