ユーザージェネレイテッドな文化はどう醸成されていくのか?─『不合理だからうまくいく』
「超高額ボーナスは社員のやる気に逆効果?」
「水を加えるだけのケーキミックスが売れないのはなぜ?」
「子供に野菜を食べさせる秘訣は?」
「お金をかけるなら『家具』と『旅行』のどっち?」――
行動経済学ブームに火をつけたアリエリーの第二弾は、より具体的に職場や家庭で役立てられるようにパワーアップ。
人間が不合理な決断を下してしまう理由を楽しく解き明かす!
『不合理だからすべてがうまくいく』改題文庫化。
ダン・アリエリーの『不合理だからうまくいく』読了。前作『予想どおりに不合理』に続いて興味深い本であった。
本書の中で一番印象に残ったのは第3章の「イケア効果」である。
労力をかけて何をこしらえると、その作品に愛着を感じ、過大評価するようになる(イケア効果)。
最近、noteの「デザイン記事まとめ」を見ていて、なぜデザイン系の記事はこんなにもアップされて、建築系の記事はあまり増えないのだろうか?と考えている。
デザイン系記事ではオススメ本やデザインの学び方などありとあらゆる種類の記事が続々とアップされてきている。
書き手自身も記事を書くことにより自身の考えをまとめることができたり、その記事によって学習が進む人たちも大勢出てくるだろう。
なにより、「高め合っている」ということがオープンにされていることは業界自体の印象向上にも繋がるのではないかと思わされる(実際、このようにオープンな場で知見を共有し合う姿勢に憧れている)。
TakramによるTakramcastは組織自体のブランディングにも寄与しているし、おそらくTakram自体の学ぶ場としても成立しているのだろう。一度で二度美味しいじゃないか。
「Rebuild」なんかもざっくばらんに語っていて、楽しい。
このようにデザイン系、テクノロジー系は発信することに積極的だ。イベントもいっぱいやってる。そして、そのイベントレポートがガンガン上がってくる。
粗雑濫造と思う人もいるかもしれないが、情報がそれだけ多いということは判断材料がそれだけ多くなることで、むしろ本当に良いものを見極める力に繋がるかもしれない。そして、ものつくりはこれが正解だ!という真の道はおそらくないと思われるので、多様な感想や意見が出るのは基本的に良いことだと思う。
こう考えてみると、建築系ではユーザージェネレイテッドな記事をあまり見かけることが少ない。しかし、書かれていないわけではない。
ここnoteでも書かれている。
イベントも全然行われていないわけではない。むしろ結構行われていると思う。しかし、見えてこない。
それはなぜだろうか?(Facebookでは結構見かけるが 笑)。
ここで「イケア効果」のことを考える。
カスタマイゼーションの手間と、お手軽さとのバランスをうまく図れば、顧客が大きな価値を感じるような製品をつくれるだろう。
イケアの製品は成形された材を組み立てるものだ。つまり「フレーム」がある。そう考えると建築系は捉えるべき「フレーム」が見えにくくなってしまっているのではないか。その「フレーム」を用意することでユーザージェネレイテッドな文化が生まれてくる(見えてくる)かもしれない。
「フレーム」ができることにより「フレーム外」ができジャンルが広がる(「建築情報学会」はその意味で可能性に満ちている)。先日行われた「BIM千本ノック」は良い「フレーム」だったと思う。
使い古された言葉や概念かもしれないが、今「フレーム」が求められている気がする。「フレーム」の中でユーザージェネレイテッドな文化を育てていくことで次の言葉や表現が見つかるかもしれない。みんなが知見やレポートを上げてくれるようになるかもしれない。知見を共有する文化になるかもしれない。
たとえば、「これはすごい!」とか「これはやばい!」ということを発信するだけでも重要なことだ。そうすれば文化自体に愛着が出てくるかもしれない。
かつての建築家たちは実作がつくれなかったからこそ、盛んにテキストを書いて発信した。そして、発信するための媒体があった。しかし、その媒体のほとんどがなくなってしまったのが現状だ。だが、媒体がなくなったからといって伝えたいことがなくなるわけではない。ならば目の前にあるツールをどう有効活用するかを考えたい。
というわけで試しにつくってみた。
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