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#信州見聞録 イトーヨーカドー長野店 最終日

2020年6月7日(日)。
長野市権堂の地で愛されてきたイトーヨーカドー長野店が42年の営業に幕を下ろした。これは、その最終日を忘れないための地域記録である。

午前11:00。この歴史的な日に立ち会わなければという思いと、閉店セールにあやかりたいという思いとを携えて、八十二銀行から諭吉を引っ張り出し権堂商店街へと向かった。

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そこには昨日と変わらないイトーヨーカドー長野店の姿と、別れを惜しむ多くの市民の姿があった。コロナ禍で全くと言っていいほど人通りが無かった先月からしてみると見違えた光景だ。

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(2020年5月17日㈰ 18:59撮影)

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(6月7日㈰ 14:58撮影)

密にならないように歩く人達の姿。人通りは以前より少ないけれど、少しずつ以前の姿に戻ってきている。少なくとも、そうしようと動いている気配を感じる。

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私も密を避けながら、最終日のイトーヨーカドー長野店を散策・観察してみることにした。ここからは個人的な行動記録を軸に、見聞録を残してきたい。

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店内に入ろうとして、まず目に入ったのは「42年間のご愛顧ありがとうございました」の張り紙だった。混じり気のないストレートな書体と文言。嘘じゃなく本当に終わってしまうんだな…という事実が、否が応でも迫ってくる。そんな入口だった。

1F - 婦人とファッションのフロア

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一階から所狭しと「最終日」の文字が並ぶ。やはり「最終」という文字列には購買意欲を掻き立てる効果があると思う。これまでの感謝の気持ちはもちろん、在庫を余らせても勿体ないよねという気持ち、そしてディスカウント(重要)の存在などなど、やはり「最終日」の持つ引力は大きい。

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購買意欲が高まる一方で、ふつふつと寂しさが込み上げてくる。「皆様とお会いできるのは本日最終日」、寂しさを助長する効果としてここまで覿面な文字列はないと思う。そして、お客様からの声。この老若男女問わないコールアンドレスポンスが一階の中心で常に広がっており、イトーヨーカドー長野店と地域の繋がりが確かに可視化されていた。全てのメッセージが尊い。 

BF - 食品のフロア

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食品売り場と共に鎮座する長野市民の憩いスポットがここだ。ラーメンからタピオカドリンクまで、長野市民のちょっとした小腹満たしを担ってきた「ポッポ」。値段もお手ごろで、学生の頃よく使っていたという人は多いはず。

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注文と同時に引換券を貰い、できあがったら番号がアナウンスされる古き良きシステム。自分の番号が呼ばれるまでのワクワク感、そして呼ばれた時の胸の高鳴り、あれはいつになってもよいものだ。

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ちなみに私が頼んだメニューは期間限定の「五目冷やし中華」。具沢山で麺大盛りが分かりにくいけれど、これで640円。この味も、もうここでは食べられない。「冷やし中華、はじめました」の文字列こそよく見るけれど、終わってしまう冷やし中華の味を啜るという経験は人生初だった。エモーショナル。

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食べ終わった後のトレイを片付ける時、思わず「美味しかったです。ごちそうさまでした」と口走っていた自分がいた。最終日だけあって忙しそうにしていた店員さんが、こちらを見て「ありがとうございました」と爽やかに微笑んで下さったのが印象的だった。マスク越しでも、何かはきっと伝わったはずだ。

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同じく地下一階の「こすげ亭」も行列だった。奥のフードコートで、ここの名物「特盛富士山ざる」を感慨深そうに頬張る人達を見ていると、それぞれがそれぞれ大切な「最終日」を味わっているんだなと感じざるを得ない。

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ちなみに私が行った時、食券売場はこんな感じだった。ほとんどのメニューが売り切れている。最終日なので、売り切れたら即終了。もうチャンスはない。まだ食べようと思えば食べられたけれど、残り少ない食券は私以外の誰かに渡すことにして、地下一階を後にした。

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