【図解】糖尿病治療薬/分かりやすく解説
📚目次
糖尿病とは
糖尿病治療薬の分類
分類ごとの作用機序
分類ごとの副作用・禁忌・特徴
国家試験問題
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1.糖尿病とは
糖尿病は、血液中の糖(血糖)が正常よりも高くなる病気です。私たちの体は、食事から得た糖をエネルギーとして使用しますが、その過程で重要な役割を果たすのが「インスリン」というホルモンです。糖尿病では、このインスリンの働きが不十分になるか、または十分に分泌されないことにより、血糖値が高くなります。
糖尿病には主に2つのタイプがあります。1型糖尿病は、体がインスリンをほとんどまたは全く作れない状態です。一方、2型糖尿病は、体がインスリンをうまく利用できない、または十分なインスリンを作れない状態です。2型はより一般的で、多くの場合、生活習慣の改善や薬でコントロールできます。
高血糖が長期間続くと、心臓病、腎臓病、目の病気、神経の障害など、さまざまな健康問題を引き起こすリスクが高まります。特に有名なのが糖尿病性腎障害、糖尿病性網膜症、末梢神経障害です。そのため、糖尿病の早期発見と適切な治療・管理が非常に重要です。
2章: 糖尿病治療薬の分類と医薬品
糖尿病治療薬にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる作用機序を持っています。ここでは、主な薬剤の分類を簡単に紹介します。
スルホニル尿素薬(SU薬)
グリクロピラミド
アセトヘキサミド
クロルプロパミド
グリクラジド
グリベンクラミド
グリメピリド速効性インスリン分泌薬
ナテグリニド
ミチグリニド
レパグリニドαグルコシダーゼ阻害薬
ボグリボース
アカルボース
ミグリトールビグアナイド薬
メトホルミン
ブホルミンチアゾリジン誘導体
ピオグリタゾンGLP-1作動薬(グルカゴン様ペプチド-1作動薬)
リラグルチド
エキセナチド
リキシセナチド
デュラグルチド
セマグルチドDPP-4阻害薬(ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害薬)
シタグリプチン
ビルダグリプチン
アログリプチン
リナグリプチン
テネリグリプチン
アナグリプチン
サキサグリプチン
トレラグリプチン
オマリグリプチンSGLT2阻害薬(ナトリウム・グルコース共輸送体2阻害薬)
イプラグリフロジン
ダパグリフロジン
ルセオグリフロジン
トホグリフロジン
カナグリフロジン
エンパグリフロジンミトコンドリア機能改善薬
イメグリミンインスリン製剤
・(超)速効型
インスリンアスパルト
インスリンリスプロ
インスリングルリジン
インスリンヒト
・中間型
ヒトイソフェン インスリン
・長時間型
インスリングラルギン
インスリンデテミル
インスリンデグルデグ
3章: 分類ごとの作用機序
続いて主要な薬剤の分類とそれぞれの作用機序を詳しく説明します。
スルホニル尿素薬(SU薬)
SU薬は、すい臓のβ細胞に作用し、インスリンの分泌を促進します。これにより、体内の利用可能なインスリン量が増え、血糖値が下がります。速効性インスリン分泌薬
非SU薬とも呼ばれますが、SU薬と似たメカニズムでインスリンの分泌を促します。SU薬と比べて作用が速やかで、食後の血糖値の急上昇を抑えるのに特に有効です。αグルコシダーゼ阻害薬
αグルコシダーゼ阻害は小腸での炭水化物の分解(2糖➡単糖への分解)と吸収を遅らせることで作用します。その結果、食後の血糖値の急激な上昇を防ぎます。ビグアナイド薬
ビグアナイド薬は、主に肝臓での糖新生を抑制し、インスリンの感受性を高めることで作用します。これにより、体内の糖の利用が促進され、血糖値が改善されます。チアゾリジン誘導体
このグループの薬剤は、脂肪組織、肝臓、筋肉におけるインスリン感受性を高めることで作用します。結果として、体内の糖の利用が向上し、血糖値が下がります。GLP-1作動薬(グルカゴン様ペプチド-1作動薬)
GLP-1は、食後に分泌されるホルモンで、インスリンの分泌を刺激し、血糖値の上昇を抑えます。GLP-1作動薬はこのGLP-1の作用を模倣し、インスリンの分泌を促進しつつ、血糖値を下げます。DPP-4阻害薬(ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害薬)
作用機序:DPP-4はGLP-1を分解する酵素で、このDPP-4を阻害することでGLP-1の作用が長持ちし、インスリン分泌が促進され、血糖値を下げます。SGLT2阻害薬(ナトリウム・グルコース共輸送体2阻害薬)
腎臓でのグルコースの再吸収を抑制し、尿とともに余分な糖を排出させます。ミトコンドリア機能改善薬
ミトコンドリアの呼吸鎖を調節し、酸素消費とATP生成を最適化することで、細胞のエネルギー代謝を改善します。またβ細胞の機能を保護・改善することにより、インスリン分泌の改善にも寄与します。インスリン製剤
インスリンは血糖値を下げるホルモンで、これを補充することで血糖コントロールを行います。
4章:分類ごとの副作用・禁忌・特徴
当然ですが度の薬剤も低血糖リスクはあります。それを踏まえて他の副作用や禁忌、特徴を記載していきます。
※薬剤の太字は分類の中でも特に汎用・重要だと思ってください。
1スルホニル尿素薬(SU薬)
グリクロピラミド
アセトヘキサミド
クロルプロパミド
グリクラジド:1日最大160㎎
血小板粘着・凝集能改善・抗酸化作用→糖尿病の血管病変へ効果が期待される
グリベンクラミド:1日最大10㎎
グリメピリド:1日最大6㎎速効性インスリン分泌薬:食直前内服
空腹時血糖にあまり影響しない➡食後血糖改善
ナテグリニド
ミチグリニド
レパグリニドαグルコシダーゼ阻害薬:副作用として腹部膨満感
食直前内服
ボグリボース
アカルボース
ミグリトールビグアナイド薬
禁忌・副作用:乳酸アシドーシス、腎機能障害
メトホルミン ※メトホルミン®は最大2250㎎、グリコラン®は最大750㎎
ブホルミンチアゾリジン誘導体
ピオグリタゾン 禁忌:心不全、副作用:浮腫、体重増加GLP-1作動薬(グルカゴン様ペプチド-1作動薬):セマグルチド以外皮下注射製剤
リラグルチド 1日1回
エキセナチド 1日2回
リキシセナチド 1日1回
デュラグルチド 週1回
セマグルチド 皮下注射製剤は週1回。唯一の内服薬あり、1日1回空腹時DPP-4阻害薬(ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害薬)
シタグリプチン 腎機能で投与量調節
ビルダグリプチン 腎機能で投与量調節
アログリプチン 腎機能で投与量調節
リナグリプチン 胆汁排泄型
テネリグリプチン
アナグリプチン LDLコレステロール低下作用あり 腎機能で投与量調節
サキサグリプチン 腎機能で投与量調節
トレラグリプチン 週1回 腎機能で投与量調節
オマリグリプチン 週1回 腎機能で投与量調節SGLT2阻害薬(ナトリウム・グルコース共輸送体2阻害薬)
※近年肥満症治療薬として話題
イプラグリフロジン
ダパグリフロジン 慢性心不全に適応あり
ルセオグリフロジン
トホグリフロジン
カナグリフロジン
エンパグリフロジン 慢性心不全に適応ありミトコンドリア機能改善薬
イメグリミン 禁忌:1型糖尿病インスリン製剤
・(超)速効型
インスリンアスパルト
インスリンリスプロ
インスリングルリジン
インスリンヒト
・中間型
ヒトイソフェン インスリン
・長時間型
インスリングラルギン
インスリンデテミル
インスリンデグルデグ
5章:国家試験問題一例
第100回薬剤師国家試験 必須問題【薬理】
問 36 グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体を刺激する糖尿病治療薬はどれか。1つ選べ。
1 アカルボース
2 グリベンクラミド
3 ピオグリタゾン
4 メトホルミン
5 リラグルチド
答え.5
第99回薬剤師国家試験 必須問題【病態】
問59 心不全の患者に使用が禁忌である薬物はどれか。1つ選べ。
1 ボグリボース
2 グリベンクラミド
3 ナテグリニド
4 ピオグリタゾン塩酸塩
5 グリメピリド
答え.4
第103回薬剤師国家試験 実践問題【生物】
問 216
45 歳女性。 4年前、 2型糖尿病と診断され、グリメピリド錠とボグリボース錠による薬物治療を開始した。最近の検査の結果より、主治医は以下の薬剤を追加した。患者はその処方箋を薬局に持参した。
(処方)
イプラグリフロジン L-プロリン錠 50 mg 1 回1 錠(1日1錠)1日1回 朝食後 14 日分
問 216(物理・化学・生物)
追加されたイプラグリフロジンは、Na+/グルコース共輸送体(SGLT)のうち、SGLT2 の選択的阻害薬である。SGLT 及びグルコース輸送体(GLUT)によるグルコース輸送に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 SGLT2 は、主に消化管におけるグルコースの吸収に関与する。
2 細胞膜にある GLUT によるグルコースの輸送は、グルコースの濃度勾配に従う。
3 SGLT2 は、Na+ の濃度勾配を利用してグルコースを輸送する。
4 GLUT は、グルコースと同様にマルトースを輸送する。
5 血液中のグルコースは、尿細管において SGLT2 によって原尿中に分泌される。
答え.2.3
第108回薬剤師国家試験 理論問題【薬理】
問164 糖尿病治療薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.ピオグリタゾンは、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を直接活性化することで、肝臓における糖新生を抑制する。
2.デュラグルチドは、膵臓β細胞のグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体を刺激することで、グルコースによるインスリン分泌を促進する。
3.ボグリボースは、ジペプチジルペプチダーゼ(DPP-4)を阻害することで、ソルビトールの細胞内への蓄積を抑制する。
4.トレラグリプチンは、尿細管のNa+-グルコース共輸送体2(SGLT2)を阻害することで、尿中のグルコースの再吸収を抑制する。
5.グリメピリドは、スルホニル尿素(SU)受容体に結合して、ATP感受性K+チャネルを遮断することで、インスリン分泌を促進する。
答え.2.5
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