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ラ メゾン ドゥ グラシアニ 神戸北野/土肥さん(フランス料理)

飲食業界のトップランナーにインタビューする「つなぐ人」。福井県での開業準備で心がけることや土地ならではの魅力について、飲食に関わる様々な分野の方に教わります。
今回ご紹介する土肥さんは、フランス料理人。高校卒業後県外に出て、フランスを始め、京阪神を中心に様々なレストランで経験を積まれた方です。「おいしい料理は美しい」をフィロソフィーに掲げ、現店では2018年からシェフを務め、兵庫県食材をふんだんに使ったテロワールを感じるコースが人気を集めています。

フランス料理人/la Maison de GRACIANI KOBE KITANO/土肥秀幸(福井県福井市出身)
辻調理師専門学校から辻󠄀調グループ・フランス校に。スタジエールでは「ポール・ボキューズ」で経験を積む。帰国後「ベルクール」などを経てメゾンドグラシアニへ。ソムリエの資格を持つなど多彩で、コンペディション「RED U-35」ではBRONZE EGGを受賞する実力者。http://www.graciani-kobe.jp/

プロフィール
土肥さんがシェフとして勤める「ラ メゾン ドゥ グラシアニ 神戸北野

1.顔上げて仕事をする大切さ

高校まで福井市で家族とともに暮らしていました。そのとき北陸新幹線の延伸をうたう大きな看板が自宅近くにあり遠い未来だと思っていたのですが、いよいよ実現するんですね。ちょっと感慨深いです。飲食店を目指すきっかけはフランスに行きたかったこと。両親に相談すると「行ってこい!」と後押しされ、辻調理師専門学校からフランス校に行かせていただきました。

思い返すと厳しい経験でした。世界の憧れ「ポール・ボキューズ」での仕事は、連日連夜満席が続く超人気店。仕事の量が半端ない上に、仕事に対する心のスタンスがフランス人と違って悩みました。もともと性格が生真面目と言うこともあったのでしょうか(笑)開店間際まで賄いを食べているなどオンオフの切り替えのギャップについていけていませんでした。でも半年もすると言葉が分かるようになり、そこで出会った日本人ハーフのスタッフに「顔上げて笑顔で仕事しよう」と言われて開眼。昼夜問わずスタッフ一緒に過ごし、仕事も遊びも共に経験を共有する大切さを学んでから、料理人としての心構えと、料理をすることへの情熱が深まったと思います。

2.テロワールからSDGsの考え方まで

日本に帰国後、色々なレストランで修業をさせていただきました。中でもフランス人シェフのステファン・パンテル氏と仕事を共にした時のこと。「生まれ故郷の食材、面白いもの無い?」と聞かれ、県産の豆や野菜などと共に発酵食品のへしこを紹介したところ、彼はへしこが持つ香りや塩味を活かしソースに仕立てました。今から考えると熟成された生ハムと同じニュアンスで食材を捉えたのかもしれませんが、当時は衝撃的でしたね。クラシカルなフランス料理を学んで、古風な考え方をもっていた自分ですが、身近な食材に目を向けていかす、テロワールの捉え方が変わった瞬間でもありました。

また2016年頃からは地場産の食材を使うだけでなく、食材廃棄について考えるようになりました。そのきっかけが落花生の生産者とのやり取り。中身が少なく、殻ばかりでもったいない精神がふつふつと。せっかくだから殻をローストし粉末にしてみたら、落花生らしい香りが豆よりも粉末の方が格段に強い。それ以降も野菜の切れ端を出汁に使うことや、野菜の色素を活かして着色するなど、色々チャレンジしています。今でこそフードマイレージや、SDGsの取組みが注目されますが、けっこう前から取組んでいるのでこの分野では先駆けだと思っています(笑)

鳩のロースト。落花生の殻をローストにしフードロスに取組んだ一皿

3.福井県で飲食店をやるならば

僕にとって福井での外食体験で欠かせないのが母との食事でした。今は移転しましたが、福井駅前にあったスパゲティ・ピラフ専門店「イタリア」には良く連れっていってもらいました。またその息子さんも「ル・ディアマンローズ」を営んでいますが、彼は調理専門学校の先輩でもあります。どちらの店もきちんと調理され、想いのある(表現)工夫された料理が共通点ですが、そんな料理を食べさせてもらったからこそ今の自分があると感じます。

幼少期から母の手伝いで台所に立っていたという土肥シェフ

僕は地元の新鮮な食材をそのまま扱うのでは無く、良い食材だからこそ切る/煮る/焼く/炒めるなど、きちんと操作された調理をし、料理としての表現に創意工夫をもって提供することが大切だと思っています。なぜならば、まだまだ福井県は外食頻度が少なく、外食文化に対して意識が低いと感じるからです。だからこそ僕が福井県でお店をやるならばビストロをやってみたい。片意地張らず、気軽な空気感で、きちんとした技術が施された料理を提供する。もっと本格的な料理を身近にしたいですね。

海にも山にも美味しい食材が揃う福井県ですし、漆器や庖丁などの刃物類、和紙についても素晴らしい工芸品があります。西洋料理では、ナイフを使う際お皿を傷つけないように磁器を使ったりしますが、漆器でも気にせず使える器が生まれると料理人としてはとても嬉しい。工芸の職人さんとコミュニケーションができる環境が近くにあるのはとてもメリットだと感じます。

時代の変化と共に僕も結婚し、子供も生まれ、家族の形や生き方が変化してきました。福井県にUターンもありかと(笑)。ともあれ変化を恐れず、料理人としての楽しく顔を上げて未来をつくって行きたいと感じます。(取材日:2022年5月/岡部藤祐)

つなぐ人ーアーカイブ
株式会社やまよ/廣瀬義徳さん(漆器屋)
ラ メゾン ドゥ グラシアニ 神戸北野/土肥秀幸さん(フランス料理)
御料理 一燈/倉橋紀宏さん(日本料理)
Restaurant cadre/濱屋拓巳さん(フランス料理)
むつのはな/五十嵐美雪さん(日本料理)
福井県交流文化部定住交流課/三津谷勇気さん
杉原商店/杉原吉直さん(越前和紙の問屋)

福井県での飲食店開業を応援!招福プロジェクトとは

https://note.com/fukuikensyoufuku/n/nadbfc8e662d2
 
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