最高&大好き&終わらないで! 映画『子供はわかってあげない』原作コミックとの比較 ネタバレあり
子供はわかってあげない(2020年製作の映画)上映日:2021年08月20日製作国:日本上映時間:138分
監督 沖田修一
原作 田島列島
出演者 白石萌歌(adieu) 細田佳央太 千葉雄大 古舘寛治 斉藤由貴 豊川悦司 高橋源一郎 湯川ひな 坂口辰平 兵藤公美
場奈々
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素晴らしい映画体験でした。
ずっとあったかくて面白いのに、同時にずっとハラハラとスリリング。
「娘が彼氏連れてきた時の父親」感を味わって悲しんでいる(且つ楽しんでいる)トヨエツを観て
観客みんなで笑えたのはほんとに素敵な映画体験。
そんな全然セリフないのに。
シーンの積み重ねの俳優の演技でそれが観客に伝わって
観客は笑いとしてそれを還元できた。
幸せな映画体験。
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沖田修一監督作をそんなに観てなかったんですが(どれも長尺なもんで…)、以下の『おらおらでひとりいぐも』と『滝を見にいく』がどちらも素っっっっっっっ晴らしすぎまして。
面白いし、うまいし、しかも全体的になんかふざけてるし、、、好み!大好みの作風でした。
そして今作『子供はわかってあげない』も傑作キター!です。
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もう出だしからしてふざけてる。。
間違えたと思いましたよ。。劇場を。違うアニメ始まったじゃん、と。。
やっべえと思って出て行こうかと思いました。長いんだもんしかも。
ただ沖田修一がこういうふざけ方をする可能性のある人だという一抹の希望というか知識があったので、座って観てました。
実際出て行った人いますからね。。すぐ戻ってきましたけど。多分「間違えた」って出て行ったんじゃないでしょうか。で、スタッフさんに「合ってますよ。そういう方おられます。」的なこと言われて戻ってきたのでしょう。
このふざけシーンのクオリティも高いし、それを受けての俳優さんたちの演技も素晴らしい。
このアニメは原作漫画ではこんなに厚くないですからね。。勝手にこんなに盛ってるだけですから。。ふざけとるわぁ。好き。
ひたすらにずっとあたたかい
サクの家庭や日常が一つも壊れてほしくないほど素敵なものなので、小さな事件が起こるだけでドキドキする!
「この家族が壊れてしまうかも!怖い!」というセリフは漫画にはあるけど、映画にはない。
「この家族が壊れてしまうかも!怖い!」って思ってるのは観客も同じなので、そのセリフがいらない。
よくこんな勇気ありますよね、沖田修一。
「これ壊れちゃうのかな、私が父親探ししたら」ってセリフがあっても不自然じゃないし、入れたくなると思うんですけど、言わないのよサクは。でもわかるっていうか、観客が思ってる「これ壊れちゃうのかな、私が父親探ししたら」って。
割と重めの展開になっていたり、サクが初めて嘘をついたり、嘘を重ねたりすることで、どんどんラストに向かって、崩壊の可能性が高まってきて、これ壊れちゃうの〜〜〜〜とハラハラするんだけど、、、、。
トランスジェンダーの女性役を男性俳優が演じる問題は確かにちょっと引っかかる。
あの役は女性なんだし女性の体になったのだから女優でいいのではと思うし
トランスジェンダーの俳優が演じるという選択肢もあっていいだろうし(その可能性を探っていないのかは知りませんが)。
男性(に見える人)が女性っぽい仕草をしているのを面白おかしく映していたのも引っかかりました。
原作漫画では、むしろ女性っぽさを強調したキャラではなかったしそういう笑わせ方もしていなかった。
映画では、お笑い担当・飛び道具的な使い方になっているような感じもして、ちょっと残念。
映画のラストネタバレは以下に
美波がプールの水で「もじくん」と書くと、屋上に門司くん出現。
一階から屋上まで階段を駆け上がる。
冒頭の階段長回しの時のセリフが逆の順番で再生される。
美波、告白しようとするも笑ってしまってできない。
この下りが割と長い。
門司くん、美波の目を手で塞ぐ。
門司「これで大丈夫でしょ」
美波「私門司くんが好き」
門司「僕も」
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海。浮いてる父。
仁子「おじちゃん、浮いてる!おじちゃん浮いてる!」
海の中で笑顔の父。
エンドール
父の家に張り紙
「お酒は二十歳になってから」
終わり
映画と原作漫画との比較
階段降りの長回しは映画のみ
水泳について「泳いでる時はいつも1人だし」は漫画のみ
映画には千田がまるごといない
緊張すると爆笑しちゃうキャラは千田
朔田がたるんどる(タルンドル朔田)のは漫画だと冒頭から
「これ壊れちゃうのかな、私が父親探ししたら」というセリフは映画にはない
というか観客自身が〝この素敵な家族壊れちゃうの?〟と思っているのでセリフなくて成立しちゃう
映画でトヨエツも左利きで字書いてた。
なぜと思ってたけど漫画では左利き設定なわけね。
光海先生(トヨエツ)を探す光の匣の千本木もサエグサも映画にはいない。
サクは映画では背泳ぎ、漫画はクロール。
笑ってるのが映像だと背泳ぎの方が見えやすいからか。
映画では古本屋の店長は光の筐のルポを書いていない。
映画には書道部村松がいない。
BL好きの書道部女子もいない。
漫画では夏の間門司が書道教室やるのはじいちゃんが夏バテしたから。
映画では毎年夏休みには理由なくやってる感じ。
漫画では部長は合宿に行くと嘘をついてサクが内緒で父親に会いに行くことを事前に聞かされていた。
映画には藁谷(トヨエツ)が教団の金を持ち逃げした疑惑はない。
漫画には仁子=チンコネタはない。
父との初対面と父の金の持ち逃げ疑惑の解明の二つの重責を女子高生の娘ひとりに託すのは厳しい。
漫画ではあり得ても映画では厳しい。
映画にはない。
漫画では、相手の気持ちを読むのは自分の意識をパラパラ漫画みたいにして、と言ってるけど
映画では、ミルフィーユ。
漫画では、藁谷(トヨエツ)を「気持ち悪い」と最初に言ったのは母。
藁谷自身も娘(サク)に「僕のこと気持ち悪くないか?」と聞く。
映画では、藁谷のことをサクが「気持ち悪くて興味が止まらない」と門司に電話で伝えている。
漫画では、藁谷の家に何泊かすることは最初からなんとなく予定されている。
映画では、毎日その都度藁谷がテレビ買ったり明日の予定を聞かれたりすることで延泊されていく。
漫画では、藁谷「僕の読まないで人と接するのよくわからなくなってて」と言うセリフがある。
映画にはない。
漫画では、教団の金を持ち逃げしたい子(サエグサ)がいてその計画が藁谷には見えていてその子が金を隠したと同時に教団を出て自分が疑われるようにした。
映画では、金の持ち逃げ自体ナシ。
漫画では、合宿と嘘をつくことと延泊すると母に嘘をつくシーンがちょっと軽いな。
映画では、もっと母に嘘つくのはもっと重い。
漫画では、藁谷はテレビを買ってない。
映画では、藁谷は2日目にテレビ買ってる。
でもサクは見たいものは見れないとテレビは見なかった。
漫画では、門司の兄(探偵)は見た目は完全に女性。
映画では、男性俳優が演じていた。
漫画では、門司がサクを探し始める時に劇伴はない(当たり前)。
映画では、門司がサクを探し始めるときに小田和正っぽいトゥクトゥーン♪(ラブストーリーは突然に)っぽい曲が流れる。
漫画では、サクが門司に「私がまだお父さんて呼べてないのにお父さんて言うな」と言うが
映画では、藁谷が門司に「まだ美波にお父さんて呼ばれてないのに君が言うな」と言う。
漫画では、藁谷が自分の意思で(上記の理由。とまぁ他にも何か理由はあったのでしょう)教団を退団。
映画では、藁谷は教祖をクビになっていた。
漫画では、藁谷は門司の心をたまに読む。
映画では、藁谷が門司の心を読むシーンはなかったかと。
その能力が弱まっていたかと。
漫画では、仁子が描いた絵には仁子とサクと藁谷の3人が描かれていた。
映画では、仁子とサクだけ。
映画では藁谷はサクに泳ぎを教わっていない。
漫画では、門司明大と祖父の和解がチラッと描かれていた。
映画には、なかった。
漫画では、教団が潰れて門司家は大口の取引先をなくしたことになったが、映画では、教団については描かれていない。
漫画には、「フロンティアで見たものを言い伝えや文献にすることだけだ」というセリフがある。
映画には、ない。
家に帰ってきた美波に対して母が言うセリフはほとんど漫画と映画同じ。
年取ったわね、私もか。
なんで謝るの。楽しかったから?嘘ついたから?
美波なりに家族を守ろ思ったからじゃないの?
でも次は嘘つかないで行ってね。
漫画では、門司からの「兄から領収書を預かってる」というメールで門司とサクは屋上で会う。
映画では、サクがプールサイドに水とブラシで「もじくん」と書くと屋上に門司が現れてサクが屋上に行く。
告白の流れは同じ。
映画では千田が存在しないが。
漫画では、ラストのエピソードで門司明大「美波ちゃんが大人になった時私と同じように自分やより若い人にそのお金の分何かしてあげて。そう言う仮の返し方もあるの」
と屋上のカギをサクに渡す。
「在校生が持ってた方が面白いから」映画では、上記のことが領収書に書かれていた。
カギは門司が持ったままだと思う。
漫画では、本屋の店長(善さん)「俺らは子供を残せるわけじゃないから
明ちゃんとの繋がりが世界のどっかと繋がっていたいんだ」
映画では、善さんのエピソードは薄い。