ネタバレ/50年後のボクたちは(2016年製作の映画) Tschick
若き名匠ファティ・アキン監督の中では、ライトな青春映画かと。
ま、主人公たちは14歳で車を何題か盗んで酒とタバコやるわけですから、なかなかの犯罪犯してるわけですが。。
スクールカーストの底辺にいる主人公マイクは、クラスの中ではほとんど「無」の状態。
そんなにいじめられてる感じはないけど、とにかく「無」。
「サイコ」って言われたりもするけど。
マイクは頭の中で
美女と出会ったり、嫌な奴を射殺したりとかなり過激な妄想を映像化しますが
これも全然真っ当な14歳。
僕も今だにイヤな奴は脳内で惨殺しています。
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マイクの殻を破って外に連れ出してくれるのが、不思議転校生チック。
相当な家庭の事情もありそうだし、どんな生き方をして来たのか聞くのが怖いレベルだけど、マイクのことを気に入って、盗んだ車でルーマニアへ走り出します。
ドイツから陸路でルーマニアに行くと、オーストリアとかハンガリーを通過しなきゃいけないという結構過酷な車移動になります。
彼らは一応目的地をルーマニアに設定してるけど、本当はどこでもいい。
ここじゃないところへ行けるならどこでも。
友達と2人だったらなおさら何処へだっていい。
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同監督の『そして、私たちは愛に帰る』でもそうだったのですが、
表面上でわかりやすく怒っているアクションよりも
背後で静かに続いていることや、
一回しか語られ中事実、
一瞬しか起きなかった行動などに、この映画の本質があります。
単なる青春映画ではなく、
あらゆる社会問題の最終的な犠牲となる子供、若者たちの静かな戦いを描いていますね。
ノリとしてライトですが
かなりアウトローです。
こんなアウトローな雰囲気なのに
なんどもかかるBGMが『渚のアデリーヌ』https://www.youtube.com/watch?v=-CFKB8sYTIM ってのがウケる。。
絶対にわざと笑かしにかかって来ている選曲です。
しかも、このほんわかとした幸せに満ちた曲がヒットした1970年代のドイツは
東西ドイツの関係も正常化して、ドイツ再統一への希望を持った時代だったようです。
そんな希望に溢れた時代を生きて来た大人たちによって
苦しめられている若者たち、という対比のための選曲かもしれません。
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ネタバレは以下
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チックはゲイでしたね。
本当にマイクのことが好きだったかどうかはわかりません。
「好きだ」と言える相手が欲しかったのかも。
マイクなら自分のセクシャリティを拒絶しないだろうと思っただけのようにも見えます。
終盤、車の事故によって2人の夏休みは終了。
チックはマイクを置いて逃走。
マイクもチックを引き止めません。
それ以降、チックの生死すらマイクにはわからない。
マイクは裁判に出廷します。車盗んだり色々犯罪やってるんで。
「主犯格はチックであってマイクは責任を負わない」とマイクの父と弁護士は主張しますが、
それに対して
「計画は2人で考えた」とマイクは語ります。
ウソをついてチックとの絆を傷つけたくなかった。
腹を立てた父はマイクに飛び蹴りをします。
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夏休みが明けて、学校が始まると何やら雰囲気が変わったマイクにクラスメイトが注目します。
クラスでいちばんの美女タチアナも急に態度を変えてマイクに接近しますが
当初タチアナに憧れていたマイクは興味がなくなっていて
タチアナにそっけない態度をとります。
「それよりチックに会いたい」
マイクは日中刑罰の奉仕活動。
夜は母と過ごします。
(母のアル中は改善方向へ向かってるっぽい)
マイクがチックと一緒に乗った車「ラーダ」が
再び盗まれたと警察から連絡があります。
きっとチックからのメッセージだとマイクは考えます。
「チックは彼らしくどこかで生きている」
50年後、あの岩で会えますように。