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図書館リサイクル本の転売について
私の勤めている図書館では、定期的に除籍本を利用者に無料配布しています。
対象となるのは置き場のなくなった複本や、古くなって資料価値がなくなったもの(ソフトウェアのマニュアル本とか)です。
ただこの無料配布本、「もしかして転売されているのでは…?」という疑惑を感じることがあります。
とくに事前予告したわけでもないのに初日からごっそりほぼ全部なくなっていたり、上下巻の下巻だけとか、スーツケースでないと持って帰れないような大型本で「どうせ誰ももらわないだろうけど一応置いておこう」というものまですぐになくなっていたときです。
「お一人様〇冊まで」「転売しないでください」などと掲示はしてありますが、べつに見張っているわけではないですし、たまたま同時にたくさんの人がどっと来て数冊ずつ持っていったかもしれないので何とも言えないのですが。
転売を禁止しているのには理由があります。
①盗難を疑われる
たしかに除籍印は押してありますがそんなものは偽造できますし、実際に図書館から盗まれた本が売られるケースもあるので、真面目な購入者から「おたくの図書館の蔵書印がある本が売られていたが大丈夫か」と問い合わせが来てしまうことがあります。
そうなると帳簿を調べて本当に除籍されているかチェックしなければなりませんし、そんなことが多数あったら業務に支障が出ます。
図書館によっては除籍本を正規のルートで売却しているところもあるので、それと混同されるのも困ります。
(また転売ではないですが、もらうだけもらってそのへんに放置する人もいて、これも問い合わせが来てしまうので、責任を持ってご自分で処分していただきたいです…)
②他の利用者への不公平
転売目的で大量に持っていかれると、本当に必要な人に行きわたらなくなります。
生活が苦しくて本を買う余裕もなく、図書館の無料配布を楽しみにしている人だっていますよね。
あまり転売が横行すると「どうせ転売屋を呼ぶだけだから無料配布じたいやめたらどうか」という意見が出てくることがありえます。
私はその意見には反対です。
「ずるいやつに得をさせるくらいなら、みんなが損したほうがまし」という発想は誰も幸せにしないと思うからです。
たとえば生活保護だって不正受給をする人はいるでしょうが、だからと言って「不正受給を絶対に許すな!取り締まりをもっと強化しろ!」という声に応えて対策を徹底させたら、たぶんそのために増員した公務員の人件費のほうが不正受給の被害額を上回ってしまうのではないでしょうか。
それ以上に本当に受給資格のある人が追い返されて死んでしまうほうが心配です。
転売も絶対に許さないとしたら、フリマサイトに出品される本を片っ端からチェックして、出品者を追及し…となるわけで、どう考えても現実的ではありません。
無料配布せずに図書館でまとめて処分するとなると産業廃棄物の扱いになってコストもかかりますし、個人的には利用されない複本が保存書庫で埃をかぶっているくらいなら、転売されて必要とする人の手に渡り、売った人の生活費の足しになるならそのほうがマシなのでは、とも思います。
一方で転売がモラルに反する行為であるのも確かです。
利用者を信じて無料配布を続け、とくに取り締まりはせず、ただ辛抱強く「転売はしないでください」と呼びかけ続けるしかないようです。