エッセンシャルワーカーの所得税をマイナスにする、という提案
医療従事者や介護士、保育士といった人々への賃上げがいくら叫ばれても、なかなか進みません。
だったら賃上げではなく、所得税をマイナスにしよう、という提案です。
どのような制度か
いわゆるエッセンシャルワーカーに該当する職業の人々に「賃金の安さに対して所得税をマイナスにする」という制度を適用します。
想定される職業としては医療従事者のほか、介護士、保育士、教師、トラックドライバーや公共交通機関の運転手などの輸送関係、電気・ガス・水道といったインフラ関係、保健所の職員など行政サービスの提供者、食料や衛生用品など生活必需品の生産と販売、警察官や消防士といった保安関係でしょうか。
(ほぼコロナ禍で出勤を求められた人々と言ってよいかと思います)
普通は所得の高さに対して所得税がプラスされますが、この制度ではエッセンシャルワーカーとして働けば働くほど、それに対して所得が低ければ低いほど、所得税がどんどんマイナスされます。逆累進課税です。所得税がゼロを下回れば税金を取られる代わりに還付金が支払われるわけです。
最低賃金でフルタイム働いているような場合には、税金の還付だけで年間百万円くらいになるかもしれません。
考え方としては、エッセンシャルワーカーはすでに多大な「労働による納税」をしており、払い過ぎた税金が還付される、という発想です。
賃上げだと給料が少々増えたところでそのぶん税金や社会保険料が上がってしまうので、結局手取り額は大差なかったりしますが、還付された税金に税金がかかることはないので、このほうが効果的に手取りを増やすことができます。
消費税だって食料品とそれ以外で税率が違うので、所得税も「生活必需職」とそれ以外で制度を変えてもおかしくはありません。
この制度のメリット
第一にワーキングプア対策です。
まず、社会に不可欠な仕事で重労働ほど賃金が安いという現状があります。
さらに、生活保護や住民税非課税世帯への給付や失業給付ではフルに働いているのに生活が苦しい人たちが救済されません。
むしろわずかな収入から容赦なく税金や社会保険料を取られ、これならむしろ働かないほうがマシという罰ゲームのような状態をつくりだしています。
こういった理不尽な状況を是正する効果があります。
もうひとつは人手不足解消です。
「やりがいはあるけど賃金が安すぎて生活できず、泣く泣く離職」といった悲劇を防げますし、今まで扶養内に収めるために短時間勤務だった人も働けば働くだけ還付金が増えるので勤務時間を増やせます。
エッセンシャルワーカーだけどもともと高収入、という人には逆累進課税なのでワーキングプアほどの恩恵はないでしょうが、それでも他の職業よりは得なので、志望者が増える効果も見込めます。
サービスが向上して雇用主や消費者にもメリットがあるのです。
財源をどうするか
例によって財源の問題ですが、これは非エッセンシャルワーカーで高収入な人からきっちり税金を取るしかありません。
ひとつの提案として「非エッセンシャルワーカーの配偶者控除廃止」はどうでしょうか。
たとえば看護師の配偶者が仕事を辞めれば配偶者控除が適用されますが、オフィスワーク会社員の配偶者には適用されません。エッセンシャルワーカーに仕事を続けてもらうために家事育児を担うことはそれ自体納税とみなせるためです。
カップルのどちらが仕事を辞めるか、という選択を迫られたときにエッセンシャルワーカーが仕事を続ける決断をしやすくなりますし、結婚相手としてエッセンシャルワーカーが人気になるかもしれません。
まとめ
コロナ禍では「医療従事者に感謝の気持ちを伝えよう」というキャンペーンがよく行われていましたが、その後の経緯を見ると「気持ちを社会制度で表現しよう」ということにはならなかったようです。
本当に感謝の気持ちがあるなら、税制改革くらいしてもいいのではないでしょうか。