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文庫本だけどハードカバー

図書館に勤めていても「やっぱり文庫本ていいよね」と思うことが多いです。
利用者さんからの問い合わせ対応でも、お探しのタイトルがハードカバーの全集しか所蔵がなかったりすると「うーん…文庫版はないですか?」と言われることがあります。利用者アンケートで「もっと文庫を増やしてほしい」というのもありました。

なにしろ軽くて持ち運びに便利です。ポケットに入れられ、ページ数によってはスマホより軽いですし、ちょっと厚めなら大長編小説や辞書レベルの内容を収録したものもあります。電池も要らず、インターネット環境も無しでここまでの携帯性と情報量を搭載しているという意味では文庫本が最強と言えます。

ただ、欠点もあります。
耐久性です。

図書館で何人もが借りる状況だと、すぐに傷んできます。文庫本は紙も薄くて劣化が早いものが多く、変色したり、角が擦り切れたり、破れたりしがちです。乱暴にカバンに入れたりすると表紙ごと折れてしまうこともあります。糸で綴じていないため、古くなって接着剤が劣化するとページがポロポロとれてきて、スタッフが修理に追われます。

そんな時「文庫サイズでハードカバーだったら、携帯性と耐久性が両立できるのに」と思います。

実際に存在する文庫版ハードカバー


見出し画像はグラフィック社から出ている『ちいさな手のひら事典』の一冊で、文庫サイズでハードカバー仕立てになっています(比較用に、隣は普通の講談社学術文庫です)。

このシリーズは装幀も可愛らしく、小口金でおしゃれなのでプレゼントにもいいですね。

ほかには、『ちくま日本文学全集』(全60巻)とか。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A1%E3%81%8F%E3%81%BE%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%96%87%E5%AD%A6%E5%85%A8%E9%9B%86


ブックジャケットをはずしたところ。スピンもついています

厳密に言うとハードカバーではなく薄ボール紙でくるんだ丸背フランス装風?のようです。
私はこのシリーズが大好きで、なんならちくま文庫ぜんぶこれにしてほしいと思ったくらいですが、さすがにコストがかかり過ぎるのか、その後出た全40巻の新装版では普通の文庫本に戻ってしまいました。

まとめ

文芸書などは、まずハードカバーである程度利益を上げ、一定期間が経ってから文庫化、というパターンが多いようです。

ただベストセラーだとそのハードカバーが名ばかりで、造本が粗悪なためにすぐ背がつぶれてしまったりするので「そこまで製本にコストがかけられないなら、最初から文庫で出してくれたらいいのに」と思うこともあります。

とは言え出版社としては最初から安い文庫で出したのでは利益が出ないのかもしれません。

そこであいだを取って「文庫だけどハードカバー」というのはどうでしょう。
読者としてもただ安さだけで文庫を求めるわけでもなく、持ち運びやすさも無視できませんから「値段はちょっと高いけど造本の上質なハードカバーの文庫」という選択肢ができればうれしいです。



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