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倍速視聴派におすすめの読書法

最近は映画などの映像を早送り再生で観る人がいるというので、すこし前によく話題になっていました。

個人的には、もともと動画が苦手で子どものころからテレビより本、映画やドラマより漫画派で、映像表現にそれほど思い入れがないこともあり、倍速視聴がとくに「けしからん」とか「作品への冒涜だ」とは思いません。ご本人が観やすいように観ればよいと思います。

ただ効率という観点で言うと、倍速視聴が得策なのかは疑問です。2時間の映画を2倍速で観ても1時間かかるわけで、「どういうものなのか知りたい」というだけのことですごく好きでもないものに1時間もかけるのはかえって時間がもったいない気もします。

一方で私たちの時間には限りがあり、すべてのものに全編つきあっているわけにはいかないのも事実です。読書の場合でも「本編全部読むわけにはいかないがどういうものなのかざっと知りたい」ということは私にもよくあるので、気持ちはわかります。

そんなときにおすすめの読書法です。

読書法活用例

たとえば、ヘーゲル著『精神現象学』という本に興味を持ったとします。

これは西洋近代哲学の世界で重要な位置を占める名著とされているようですが、なにしろ文庫版で上下巻合わせて1200ページ以上にもなるので、なかなかハードルは高いです。もちろんこれを熟読するのが理想でしょうが、そこまでの時間も根性もなく、必要に迫られているわけでもない、予備知識もなく、どういうものなのか見当もつかない、というのはよくあることです。

解説書や入門書などもあるのですが、それすら無理、としましょう。

そこで有効なのが「辞書・事典類をその1項目だけ読む」という方法です。

図書館で参考図書コーナーへ行き、まず全30巻くらいあるような大型の百科事典で「ヘーゲル」の項目を読みます。また広辞苑などの大型国語辞典で「現象学」という項目を引いてもよいです(辞書は言葉の意味を調べるものというイメージですが、大型の辞書は事項を調べるにも役立ちます)。
より詳しい情報を求めるなら「西洋哲学事典」やさらに「ヘーゲル事典」というのもあります。こちらには『精神現象学』自体についても項目が立てられています。興味・関心の度合いや時間的余裕に合わせて一般的な百科事典から専門事典に進んでいけばよいです。それで物足りなければ、入門書や解説書に進みます。どこでやめてもいいです。

辞書や事典類はどこの図書館でも貸出禁止になっていると思いますが、1項目を読むだけなら5分や10分で済むので、わざわざこんな重い物を持ち帰らなくても、ほかの本を借りるついでに閲覧席でさっと読めます。「図書館に来るたび事典を1項目読む」というのを習慣化してもいいですね。

要約のチカラ

時間がないからといって『精神現象学』のページを速くめくって「倍速読書」したところで何もわかりません。
その点、事典の項目はわかっている人がわかりやすくまとめてくれたものなので、読むだけの価値があります。
もちろん執筆者の力量によりますが、逆に言えばすぐれた執筆者の手になるものは、単なる要約であっても読みごたえのあるものです。

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