外来リハビリの役割
日本における心臓リハビリテーションの普及実態に関する研究(2010年~2017年)によると、
『入院での心臓リハビリテーションへの参加率は 18.3%(2010)から 39.0%(2017)に増加したが、外来心臓リハビリテーションへの参加率は 1.4%(2010)から 2.5%(2017)と低水準にとどまっ ている。さらに入院心臓リハビリテーション参加者の約 95%が退院後の外来心臓リハビリテーションの継続をしていなかった』という報告があります。
心疾患においては、入院中の心臓リハビリテーションは認知度も上がり、実施できる施設も多くなってきていますが、外来心臓リハビリテーションは実施できる施設も、継続する方も少ないのが現状です。
心臓リハビリテーションの適応疾患は、慢性心不全、狭心症、心筋梗塞、末梢動脈疾患、心臓疾患の開心術後などです。
いずれの疾患も、心臓リハビリテーションを実施することで、生活の質や体力の向上、健康状態を改善できる可能性があります。
医療技術の進歩により、狭心症や心筋梗塞などで病院に受診した場合、カテーテル治療などにより、後遺症が少ない状態で退院できる方が増え、運動の重要度が伝わらないまま退院してしまうケースが多くなっています。
狭心症や心筋梗塞の治療が終了しても、再発の予防は必要です。
その再発予防の観点では、心臓リハビリテーションは大きな役割を担っています。
狭心症や心筋梗塞などでは、その背景に生活習慣病が潜んでいることがあります。
糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満などを放置したままにしていると、狭心症や心筋梗塞の危険性が高まります。
一度発症してした場合、そのままの生活を続けていると、再発する可能性がさらに高まります。
心臓リハビリテーションは単に運動をするだけではなく、食生活や活動量などの生活習慣全体を対象に治療や取り組みをサポートします。
日々の血圧管理や食事管理などは最も重要です。
管理の方法や生活の見直し、正しい知識の獲得を促すために、心臓リハビリテーションは必要です。
さらに心臓リハビリテーションの役割として、精神的なサポートがあります。
この精神的なサポートはカウンセリングのようなかしこまったものではなく、ちょっとした不安や疑問を小さいうちに解決していくことです。
心臓病になると、不安になりますし、生活習慣の改善をしたくても何から始めたらいいのかわからないといった声が多く聞かれます。
そのような場合、例えば週に1回でも通院することで、看護師や理学療法士、健康運動指導士が、話を聞き、適切な方法や工夫、対処法などを提案することができます。
また慢性心不全の方の場合、心不全状態が悪化している兆候に早めに気づくこともできます。心不全の兆候を早くとらえることで、更なる症状の悪化や入院を防ぐことができます。
自己管理ができるように指導も行いますが、自己管理のみではカバーしきれない部分を外来心臓リハビリテーションで補っていきます。
このように外来心臓リハビリテーションには、運動以外にも重要な要素がたくさんあります。たくさんあるにも関わらず、まだまだ一般的になっている訳ではないのが現状です。
当院は、心臓リハビリテーションや腎臓リハビリテーション、メディカルフィットネスなど心臓病だけではなく、腎臓病や生活習慣病の方にも運動療法を受けていただける環境を整えています。
また心臓リハビリテーション指導士の資格を持った、理学療法士と健康運動指導士が在籍しております。適切な運動負荷や整形外科的な症状や痛みなどに対しても適切なアドバイスができます。
運動、栄養など、生活を整えることで病気になる可能性を下げ、健康長寿を目指していきましょう。